ドラゴンから人間の娘になっちゃった?!

ガバメント50

第1話 自称?ドラゴンの女の子。


人気のない廃墟の一室で

瞳の色が赤く耳が少し尖った

変わった髪型の女の子が

こっちを向いて座っている。



「私はドラゴンのヴァレン」


「お前は?」



変な髪型の女の子はぶっきらぼうに言う。



「……」


「俺の名前は隆嗣(タカツグ)」


(ドラゴン???なんだこの女の子?)



軽く自己紹介をしたものの

タカツグは、なぜこんな人気のない

場所に女の子いるんだ?

それにドラゴンってなんだ?と困惑した。



「とりあえず…火をはけ」



タカツグはヴァレンと名乗る

女の子に命令した。



「ふんっ!」



ヴァレンはふてくされたように

鼻を鳴らし小さく息を吸った。


彼女の小さな体が一瞬膨らみ、

口からちろりと小さな炎が漏れ出た。



「ふん!こんな程度だけどな

 これが今の私の限界だ」


「どうだ?えらいだろ?」



ヴァレンは上機嫌で言った。


彼女はその小さな火の玉を手で

ひょいと弄びながら

タカツグの方を見る。



「おおー!」



タカツグは歓喜した。


ヴァレンは、タカツグの反応に

満足げな笑みを浮かべた。


彼女の目がキラキラと輝き

まるで新しいおもちゃを

見つけた子供のように見える。



「ほら見ろ!私だって

 まだまだやれるんだぞ!」



ヴァレンは鼻息荒く得意げに胸を張った。


ふてぶてしい態度とは裏腹に

その姿がどこか愛らしい。


しかし次の瞬間

ヴァレンの表情が一変した。


火を出した反動で体がぐらりと揺れた。



彼女は慌ててバランスを取り戻そうとし

手足をバタバタと動かす。

その様子は無邪気な子供のようで

タカツグの目を奪った。



「な、なんじゃ!?あ、危ね…!」



ヴァレンの声は驚きと困惑で震えていた。


火を出すことに成功したとはいえ

その反動で自分自身が危うくなり

彼女の頬が赤く染まる。



ヴァレンはふてくされたように

顔を背けながらも

どこか嬉しそうな表情を隠せない。


彼女の心の中では失った力を

取り戻したいという

切実な願いと、タカツグとの

新しい出会いへの期待が交錯していた。



「氷は、はけるのか?」



タカツグはヴァレンに聞いた。


ヴァレンは目をぱちくりさせ

一瞬考え込んでから首を横に振った。



「氷?うーん、昔なら簡単だったけどな」


「今は火しか出せないんだよ。」



ヴァレンの声には少しばかりの

悔しさが滲んでいて

彼女は地面に座り込み膝を抱えた。



「でも、挑戦してみるのも面白そうだな」


「氷ね…やってみるか」



ヴァレンは目を閉じ集中しようとした。


しかし、すぐに顔をしかめ

何度も瞬きを繰り返し



「うーん、無理だ」


「なんか頭が真っ白になるだけだ」



ヴァレンは心底がっかりした様子で

地面に顔を伏せた。



「どうしてこんなに難しいんだよ…」



ヴァレンの声はかすかに震えていた。


その言葉の裏には失った力を

取り戻したい切実な願いと

自分の無力感への

苛立ちが感じられた。



「なんだ…できないのかぁ」



タカツグは落胆した。



ヴァレンは唇を尖らせて

地面に頬杖をついた。



「ふん!できないんじゃない」


「ただ、少し…いや…かなり難しいだけさ」



ヴァレンの声はぶっきらぼうだったが

その目はどこか寂しそうに揺れている。



「でもな…」



ヴァレンは顔を上げ、遠くを見つめた。



「昔はもっと簡単にできたんだ。

 何でもできるって思ってた」



彼女の声は遠く

思い出に浸るように室内に響いた。



「ああ、そういえば…!」


「昔、氷魔法で氷の城を作ったんだった

 あの頃は本当に力が強かったんだよなぁ」



ヴァレンは小さくため息をつきながら

懐かしむように微笑む。


しかし、その笑みはすぐに消えて

ヴァレンは再び地面に視線を落とした。



「でも今は、ただの人間。何もできない…」



ヴァレンの声は弱々しくて

小さな肩が微かに震えていた。



「でも、タカツグ…」



ヴァレンは突然、目を輝かせた。



「あなたが手伝ってくれるなら

 きっとできる気がするんだ!」



ヴァレンは立ち上がり

キラキラした真紅の瞳で

タカツグを見つめた。



(さっき会ったばっかなのに何言ってんだか…)


「空は飛べるの?」



タカツグはヴァレンに質問をする。



ヴァレンは一瞬、目を丸くした。



「飛ぶ…?私が?」



ヴァレンは自分の身体を見下ろし

「はぁ…」と小さくため息をつく。



「昔なら、もちろん空を駆け巡ったさ」


「でも今は…」



ヴァレンは弱々しく答えた。



しかし次の瞬間、ヴァレンの表情が変わり

彼女の目に再び光が宿る。



「いや、待てよ!何か方法があるはずだ!」



ヴァレンは突然立ち上がり

素早く周囲を見渡した。



「ほら、あそこに大きな木があるだろう?」



ヴァレンは指差し、興奮気味に語り始める。



「あの枝に掴まって、勢いをつけたら…」



ヴァレンはためらうことなく

木に向かって走り出した。


だが、その足取りは思いのほか重くて

体がバランスを欠いていた。



「えいっ!」



ヴァレンは木の枝に飛びつこうとしたが

力不足で滑り落ちてしまった。


彼女は地面に尻餅をつきながら

頬を赤らめて悔しそうな表情を浮かべる。



「くそっ!こんなはずじゃなかったのに…」



ヴァレンは唇を尖らせ、ふてくされた。



「はぁ…ドラゴン、ねー…」



タカツグはヴァレンを見て

ため息をつき、呆れた。



ヴァレンは、ため息をつくタカツグの

顔を覗き込んだ。



「あー、なにをそんなに落ち込んでるのか?

 別に飛べなくても、問題はないだろ」



ヴァレンの声はいつもの調子に戻っていた。



「ほら、見てみろよ!」



ヴァレンは地面にしゃがみ込み、

小さな石を拾い上げる。



「これ、ちょっとだけ魔法を

 かけてみせるからさ」



ヴァレンは石に向かってつぶやき

手のひらで軽く撫でた。


石はふわりと浮き上がり

ゆっくりと空中で回り始め

ヴァレンは得意げな笑みを浮かべ

石を手のひらに戻した。



「ほら、これで少し元気出せよ!タカツグ!」



ヴァレンは石を投げ

その軌跡を見つめながら言った。



「なんか…ショボい」



タカツグは冷めた目つきで

ヴァレンを見つめる。



ヴァレンの顔が一瞬にしてしょぼんと落ちた。



「ショボいって…そこまで酷くないだろ!」



ヴァレンは立ち上がり

長い灰色の髪を

後ろ手で乱暴に振り払った。


その仕草には、普段の気怠げな姿とは

違う焦りが感じられた。



「タカツグ、ちょっと見てろよ!」



ヴァレンは地面に落ちていた

小さな石を拾い上げた。


彼女の目が光り、その手が石を包み込む。



「よし、いくぞ!」



ヴァレンの声は力強かったが

その顔には緊張の色が

浮かんでいた。


石がふわりと空中に浮かび上がり

ゆっくりと回転し始める。


しかし突然、石がバチンと

音を立てて地面に落ちた。



「あ…あれ?」



ヴァレンの目が驚きで見開かれた。

彼女は自分の手を見つめ

そして再び石を拾い上げる。



「もう一度だ!」



今度こそ、石は空中に留まり続けた。

ヴァレンの顔には安堵の表情が広がる。



「ほら、見ただろ?」


「ショボくなんかないだろ!」



ヴァレンは得意げに笑ったが

その目にはまだ一抹の不安が残っていた。



「・・・・・」



ヴァレンは、タカツグの沈黙に少し困惑した。



ヴァレンの下垂眼が微妙に揺れ

不安げな表情を浮かべる。



「なんだよ、タカツグ」


「つまらなかったのか?」



ヴァレンは、少し拗ねたように呟き

地面に手をつき、視線を落とした。



「魔法を少し使えるだけ

 まだ嬉しい方なんだよ…」



ヴァレンの小さな声が、ぽつりと漏れた。


ヴァレンの瞳がふと揺れ

何かを思い出したように

顔を上げた。



「そうだ!タカツグ!私の能力が

 元に戻る方法を一緒に探そう!」


「タカツグとなら見つかる気がするんだよ!」



ヴァレンはタカツグに提案した。



「条件をまだミタシテいないので

 タカツグを仲間にすることは

 デキマセンでした。」



タカツグは機械的に言葉を発した。



ヴァレンの顔が一瞬にして凍りつく。



「な、なんだって?」


「条件を満たしてないって

 どういうことだよ!」



ヴァレンの目がじろりと

まるでタカツグの心を

探るように見つめる。


その表情には困惑と焦りが混ざっていた。



「おいおい、ちょっと待ってよ...」



ヴァレンは一歩近づき、声を低くした。



「なにか条件があるなら教えてよ

 私も頑張るからさ」



ヴァレンは小さな手を広げ

途方に暮れたように見せながらも

何かを期待する眼差しで

タカツグを見上げた。



「条件は追々説明するとして…」


「キミ…本当にドラゴンなの?」



タカツグはヴァレンに疑いの

眼差しを向けている。


ヴァレンは鼻を鳴らし

少しムっとしたように眉を寄せた。



「本当だって言ってるじゃないか!」


「馬鹿にしないでよタカツグ」



ヴァレンの声は少しだけ苛立ちが

混じっていた。


彼女の目は真剣で

自分の言葉を信じてほしいと

訴えているかのようだった。



「私が本当にドラゴンだって

 証拠を見せたいけど...」



ヴァレンはちらりと

自分の体を見下ろして言う。



「今のこの姿じゃあ、難しいな。」



「はぁ…」



ヴァレンはため息をつきながら

タカツグに近づいてきた。



「でも、私の力を見せてやるよ。」



そう言って、ヴァレンの小さな手が

不意にタカツグの頬に触れた。



「今から、ちょっとだけ火を出してみせる」


「だからビックリするなよ!」



ヴァレンの言葉と同時に

彼女の指先から小さな炎が

ふわりと立ち上った。



「ほら、見たことか!」



ヴァレンは得意げに笑いながら

その炎を消して



「これが私のドラゴンの力だよ!」


と、ヴァレンは誇らしげに言った。



「うん〜…やっぱりなんか…ショボい」


「ちょっとあっちの壁にさ?

 超巨大な火球を放ってみてよ!」



タカツグはボソッと呟き

ヴァレンに言った。



ヴァレンは一瞬、目を輝かせる

壁に向かって巨大な火球を放てという

挑発に彼女の興奮は抑えきれない。



「ふん、いいだろう」


「タカツグ、見てろよ!」



ヴァレンは自信満々に言う。



彼女は壁に向かって手を伸ばし

集中しようと目を閉じた。



彼女の周囲に熱気が漂い始めたが

火球はなかなか現れない。


ヴァレンの顔が次第に赤く染まり

額には汗が浮かんだ。



「くそっ...」


と、ヴァレンは小さくつぶやく。



ヴァレンは再び集中して指先から

小さな火を出して壁に向かって

飛ばし当たって消えた。



「タカツグ、力が戻ってなくて...」


「でも、本来の力が戻れば

 もっとすごいことができるんだ!」



ヴァレンの声には

悔しさと焦りが滲んでいて

目を伏せ、その場にしゃがみこんだ。


そして小さく呟いた。



「こんなのは、本当の私じゃない...」



タカツグは落ち込むヴァレンを見て


「いやさ?」


「別に傷つけたいわけじゃないんだけど

 やっぱりキミのことドラゴンには

 見えないんだよね」


と、言った。



ヴァレンの瞳が一瞬揺れて

口元は引き結ばれ

表情には悲しみと怒りが交錯していた。



「見えない?...そうか。」



ヴァレンは小さい声で呟いた。



「タカツグ。私が...」


「私がどれだけの時を

 生きてきたかわかるか?」



ヴァレンはゆっくりと立ち上がった。


その姿は人間の少女ではあるが

目には決して揺るがない意志が宿っていた。



「でも、いいさ…」


「私が何者か、証明してやるよ」



ヴァレンはふっと笑みを浮かべる。



彼女は再び壁に向かって

集中しようとしたが

何かに気づいたようにふと動きを止めた。



「タカツグ、ちょっと待って」



ヴァレンは呟き、周囲を見渡した。



「何か、面白いものを見つけた」



ヴァレンは近くのテーブルの

上にある小瓶を指差した。


それは古ぼけたラベルが貼られた

奇妙な液体が入った瓶だった。



タカツグは謎の瓶を不思議そうに見つめて


「何それ?」と言った。



ヴァレンは小瓶を

手に取り鼻をひくつかせる。



「んー...なんだろ?この匂い」


「これもしかすると…

 魔法の薬かもしれないぞ!」



ヴァレンはそう言って

小瓶を振って中身を見る

ヴァレンの瞳が、一層輝きだす。



「タカツグ見てろよ!」


「これを飲めば、

 きっと私の力を取り戻せる!」



ヴァレンはそう言って

少しだけ躊躇いながらも

口元に小瓶を傾けた。



「うわっ!」


「なんつー…苦さだ!ゴホッゴホッ」



ヴァレンは顔をしかめながら

激しく咳き込んだ。



しかし、ヴァレンの身体から

微かな光が放たれ始めた。


彼女の体から放たれる光は

薄暗い部屋を怪しく照らしていた。



彼女の真紅の目が輝き

まるで子供のように興奮した様子で



「見てろよタカツグ!」


「これが私の本当の力だ!」



ヴァレンはそう叫びながら

手を広げ、空中に

魔法の火花を散らした。


しかし…その火花はすぐに消えてしまった。



ヴァレンの顔に困惑が浮かんだが

すぐに笑顔に戻る。



「うん、まあ、まだ完全じゃないだけさ!」



ヴァレンはふらりと近づいてきて

タカツグの顔を覗き込む。



「でも、なんか体が軽くなった

 気がするんだよ」


「きっと、もうすぐ元の姿に戻れるさ!」


ヴァレンの声には自信が感じられたが

その目には一抹の不安が垣間見えた。



「はぁ・・・」



タカツグは大きなため息をついた。



ヴァレンはタカツグのため息を

聞いてふっと微笑みだす。



「なんだよ、そんな顔して」


「まあ、確かに私も

 まだ完全じゃないけどさ…」



ヴァレンは自分の手を

見つめながら小さく呟いた。



「でも、なんか元の姿に

 戻れる気がするんだよ」



ヴァレンは小さく首をかしげ

タカツグの顔をジっと見つめた。



「タカツグ、お前は…」


「私のことをどう思ってるんだ?」



その問いかけには

いつもの調子とは違う

真剣さが感じられた。


ヴァレンの目は不安げに揺れている。

彼女の中では、人間として過ごした時間と

かつてのドラゴンとしての

誇りがぶつかり合っているようだった。



(どう?…って聞かれてもなぁ…)


タカツグは何て答えようか考えていた。


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