第59話  6年ぶりに銀の森へ

これで、風と火と大地の上位、高位の精霊の契約を得たマークウェルは、一度、銀の森に帰って、光の神殿へ顔を出す様に言われた。

 

断わったら、アドリアンが直接マークウェルの定宿まで訪ねて来たのだ。


「今更、君が銀の森を逃げ出したことを誰も咎めないよ。ただね、君はそのままじゃ、はぐれ魔法使いだ。せめて、神殿公認の精霊使いの認可でも取っておいた方が、ギルドでの単価も上がるよ」


 マークウェルは、五年前に散々お金をピンハネされたアドリアンの言葉は、信用出来なかった。が、ギルドでの地位がまた上がる。既にSSSランクだが、単価が上がると聞いて意思はグラついた。

(神殿公認の許可だけもらって、トンズラしよう)マークウェルは思った。



 ♦



 約6年ぶりに銀の森に足を踏み入れた。カーティスが出迎えてくれた。少し離れて、リエンファまでいっしょにいた。


「久しぶりですね、マークウェル。活躍は、ここまで聞こえて来ますよ。

 君らしくて、ユニークな活躍ですね」


「どんな風に聞こえてるんだか! あれだろ? 風の精霊が話してるっていう噂だろ」


 マークウェルは、ムクレテ見せる。


「あら、精霊は嘘が付けないのよ。これほど正確な情報はないわ」


 リエンファだった。23歳になっていた。女の盛りだ。


「お前こそ、どうしてここにいるんだ!?」


「カインに会いたいからに決まってるでしょ? オアシスの女のところには良く行くくせに、私のところへはたまにしか来ないんですもの!!」


「だから、いっしょに暮らそうって言ってるだろう? お前を食わせるくらい稼ぎはあるぜ」


「それで? その間私は、一人でカインの帰りを待ってるだけ?」


「いや、それは……」


「それに、カイン! 女好気じゃない!! 娼館にも良く行ってるみたいだし?」


「う……」


 リエンファに強い口調で言われて、マークウェルは何も言えなくなってしまった。


「ヴァーレンのあそこは、意外と安全なのよ。治安が悪いのも逆に良いわ」


「そうか、でもいつか屋敷を買ったら迎えに行く。その時は来るんだぞ」


「うん」


 リエンファは、嬉しそうに頷いた。嬉しそうに話す二人の世界に若きエル・ロイル家の当主、カーティスは入れなかった。

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