第53話  キムの要求

 新月の祭りの後、子供が3人消えていた。

 しかし、村人の様子に変わったところはない。

 何時ものように、農作業に精を出して働いている。

 キムは、やはり村長が怪しいとにらんでいた。

 村長が、魔族と関わりがあって何かしら取引でもしているのかもしれないと思っていた。

 そして、新月の祭りの後から、自分に与えられた作業を終えると、出来るだけ、村長を見張ることにした。


 その結果、ある時村長が魔族らしい男と話している場面を目撃した。

 キムは、村長を脅して再び魔王と話がしたいと言った。


 村長は、意外にもすんなりと魔王への謁見を許してくれた。

 その代わり、今後、テレジアに近付くことを止められてしまった。


『何故だ!!? あの女はオレの女だぞ』


 キムは、勝ち誇ったように村長に言った。だが、村長はキムを哀れむように、


『テレジアの様子と、お前さんの様子を見て言っておる。詩夏シーシの血はお前さんに合っていたようだ。お前はもう、立派な魔族だよ』


『オレが魔族だと? 笑わせるな!』


 キムは、大声で怒鳴った。

 村長は、この男がこの村のシステムを理解して、テレジアと子作りに励んでいる者だと思っていたが、だんだんと老いていくテレジア。

それに比べて、一段と精悍になっていくこの男は、間違えなく人間とは違ったものになってしまったと感じた。

本人の自覚が無いのが困ったことである。

 それならばと、この村を管理している魔族のマリントという男に会わせる約束を取り付けた。


 



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