第52話  贄の儀式

 驚いたのは、14歳のテレジアが男の身体を既に知っているという事実だった。

 何の躊躇いも無く、キムに尽くし、されるがままになっていた。


キムは、詩夏シーシの血を飲んでから、身体の倦怠感が抜けず、食欲も無くなってきた。ただ月に一度、無性にテレジアの身体を無性に求めてしまうことだった。

 多少の後ろめたさはあったが、ここではそれが当たり前のようにされていた。

 中には、何人かの女を1人で侍らせるような輩もいたが、そういう奴は、精力が絶倫で、女一人では満足できぬという理由からだという。

 村長に許可を取って、他の女に手を出さぬという条件下のもとで、複数人の妻を娶っているのだという。


 裏で、村長と魔族が手を結んでいるのではないかと、キムは考えた。

 だが、表向きは静かで平和な村だった。


 ある新月の日に、12歳未満の子供が10人ほど集められて、村長や村人の前で、踊りを踊らされていた。

 独特の節回しのある曲を村長が歌い、伴奏は簡易な笛と太鼓だ。

 

『アグネクト様のもとに行く子を決めていたのよ』


『魔王のもとへか?』


 何の祭か知りたくて、テレジアに聞いてみた結果だ。


『何をそんなに驚いているの? アグネクト様は私達に幸せをもたらせてくれるお方なのに?』


『牧場って、そう言う意味か』


 キムは、詩夏シーシの言っていたことを思い出していた。

 人間は、魔族にとって家畜でしかないと……

(オレは、どうしたのだ? 何故、子供が出来ないんだ? 14歳のはずのテレジアが今じゃ女の盛りだ……)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る