第6章 魔族

第48話  詩夏(シーシ)との再会

{{詩夏シーシ!! オレだ!! ジェルンだ!! 詩夏シーシ!!}}


 最後に詩夏シーシと別れた所に来て、ジェロンは叫んだ。

 しばらく後、大きな岩の陰から、詩夏シーシは現れた。


{私は、ここよ。ジェルン、大きな声を出さないで。あなた、つけられてる}


{何?}


 ジェルンは、詩夏シーシの所に行った。

 詩夏シーシは、ジェロンの服に付いていた銀色の細い糸状物をプツンと切った。


{これ}


 そして、詩夏シーシは、その糸状の物をジェルンに見せた。

 ジェルンは怒り心頭である。


{あいつら!}


{これは、風を紡いだ高等な魔法よ。誰か知らない?}


{あの金髪野郎か!! 風の魔法使いだとか威張ってたな!! 早くオレをアグネクトの所へ連れて行け!詩夏シーシ!}


『おや、美少女の魔族と駆け落ちだったのか? でも、いけないなぁ。人間は、本来魔族とは関わってはいけないんだよ』


『うるせぇ!! オレは詩夏シーシがいなければ死んでたんだ!! カインはどうした? 来てないのか!』


 急にあられたアドリアンにジェルンは興奮した。


『君と因縁があるようだから、食事に一服盛ったんだよ。今の彼では、憎しみを抱いてる君の気持が分からずに、殺される可能性があるからな』


 アドリアンは、一人で納得してウンウンと頷いていた。


『君を人間の世界に帰すのが僕の使命だ。さぁ、僕と行こう』


 アドリアンがジェロンに向けて手を差し出したが、ジェルンは、それを拒否した。


{良いのね!?ジェルン。後悔しないね?}


 再度、詩夏シーシがジェルンに問いかけて、彼は頷いた。


『アグネクト様!! 詩夏シーシが新たなる人間を連れ帰ります。門をお開き下さい』


 すると、地面に魔法陣の様な幾何学模様が現れた。


 ジェルンと詩夏シーシは、魔法陣の中央に歩いて行った。

 アドリアンも後を追おうとしたが、契約精霊の風の奥方に止められた。


<相手は、上級の魔族の巣ですわ。いくらわたくしでも、何の手立ても無く行ける場所ではありません。あなた様も命を大切にしてくださいませ>


 奥方にそう言われて、アドリアンはマークウェルを置いて来たことを心底ホッとしていた。

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