第46話  聖女、リエンファ?

 扉を開けると部屋の中は、真っ暗だった。


「アドリアンだけど、ご機嫌はどうだい? 少しは落ち着いたかい」


「ええ」


「それは良かった。聖女の位を持つ君が、銀の森を抜け出したいと言った時には驚いたよ」


 マークウェルは頭が「?」になった。

目の前には少しだけ、大人になったリエンファがいた。


「聖女?」


「ああ、マークウェル、こちらは、リエンファ・ロイルだ。本家筋の姫だが、訳あってここに住んでるんだ」


「んな、馬鹿な!! ファファだろ!! なんで、こんな所にいるんだ?」


リエンファは、ゆっくりマークウェルに近づいて思い切り足を踏んづけた。


「あでーーーー!!」


マークウェルは悲鳴を上げる。


「カインの馬鹿ぁ!! 他の女の手を借りてを脱出するなんて!! だから私も、アドリアンに頼んでここに脱出してきたのよ」


「聖女なんて厄介な代物にさせられそうになってたからね」


優男のアドリアンが、リエンファの脱出に手を貸したようだ。


「聖女?」


マークウェルは、リエンファを見て言った。 


「光魔法よ。本家の姫にしか生まれない魔法が、私にあるらしいの。……で、もう一人の人は誰!? アドリアン。危険な香りがするわ。今すぐに銀の森へ連れて行った方が良いわよ」


 リエンファは、マークウェルの隣から、ジェルンを見て言った。

 

「キムだ。キム・ジェロン、どうやら魔族にやられたらしくて、20年ほど寿命を持っていかれている。出来れば君の力で戻してやって欲しいのだが……」


「アドリアンの願いは、容易い事だわ。でもその人の所為で、カインは陥れられたのよ!! 助ける義理はないわ!! 見たところ、それより危険な男だから、早く銀の森へ連れて行った方が良いわよ」


「分かった、引き受けよう。その前に頼む。今回きりだ。彼の精気を戻してやってくれ。」


「分かったわ」


 リエンファは、ジェルンの所まで行った。

 北の地方で夜這いに失敗したことを思い出して、気まずく突っ立っているジェルン。


 リエンファは、ジェルンに手をかざすと、銀色の光を放った。


 ジェルンは、身体に力と若さが戻って来るのだ分かった。

 白髪が混じっていた髪は、たちまち黒髪に戻り、身体も精悍さが戻って来た。

 ジェルンは、嬉しくなって、この聖女の存在を早く詩夏シーシに教えたくなった。



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