第43話 ヴァーレンへ……
冒険者Aランクになったマークウェルは、次の仕事までしばらくアルテア王国の隣国のヴァーレン皇国にアドリアンとやって来ていた。
「でさ、僕はこの髪の色で、親に捨てられそうになったんだよ~
君は、黒髪だったらしいね。祖神の加護で神剣の間にいたんだって?
綺麗な金髪だな。僕の方が少し淡いかな?」
「確かに黒髪では生きにくい世界だな」
ロイルの祖神、イリアスに導かれて光の神殿に辿り着き、そのままご神体を祀る部屋にひと月閉じこめられていた。
その間にマークウェルは、黒髪が金髪になったのだ。
日を追うごとに目に見えて髪の色は変わっていった。
それが、神の力だと光の神殿の神官達は口を揃えて言っていた。
思いがけず、銀の森で契約した精霊の風の大将。
ロザリンデに増幅の力とやらを身体に仕込まれて、大将の力を引き出しやすくもなった。
それで、高位の風の精霊と契約しているアドリアンに精霊との付き合い方を伝授してもらっている。
その一方で、マークウェルの知らない世界を見せるという名目もあった。
ヴァーレン皇国は、建国が遡れる国としては最古だが、まだまだ国は活気に満ちている。
角の無い丸みの石造りの古い町並みが、歴史の長さを感じさせた。
「治安は、良くないぞ。数年前にクーデターが起きてるからな」
「こっちじゃ、魔族より人間の方が怖いじゃないか。神殿は無いのかよ?」
マークウェルの言葉に、アドリアンは髪をポリポリ掻いて言った。
「正直な話、ドーリアや、アルテアよりは受け入れられてないのさ。西域には、西域の歴史もあってね」
「ふ~ん」と言いながら、マークウェルは古い建物の前に立ち止まった。
「なぁ、アド。この建てもんは何だ~?」
古い石造りの大きな建物である。
大輪の花が木の看板に描いてあるのが滲んで見えた。
「そのくずし方……良いけどね、ゼナの花だな。闇の神、ディハルド神を祀る神殿跡なんだろう。さっき言った西域にロイルの信仰が入りづらかった原因の1つだよ」
「なんだ~?闇って、魔族の味方じゃないのかよ!!」
「静寂なる闇の神といって、夜に旅をする人間を守護する神だとされているよ。ドーリア辺りは、まだ信仰されてるようだけど、ここらは廃れちゃったみたいだね」
「その神に子孫は、いね~のぉ?」
マ-クウェルは冗談半分で言った。
「一つ目の怪物だとされる神と契りたい女はいるかな?」
マークウェルは、想像しただけで寒気がしてしまった。
光の神と外見が違い過ぎる。
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