第41話  最初のお仕事

マークウェルの冒険者ギルドの最初の仕事としてナムラ砂漠の砂蠍ギャオの退治を命じられた。

 ギャオは、蠍のなかでも大型で、人を襲うこともある。

 砂漠を旅するものには、恐怖の存在だ。

 最低賃金でギャオの討伐隊に、放り込まれたマークウェルは、一緒に来てくれていたアドリアンに文句ばかり言っていた。


「勝手に俺のことをFランクにしやがって!! 俺はな、一人で魔族を退治くらい出来るんだぜ! ……それをド素人のパーティーなんかに入れやがって!」


 文句たらたらである。

 アドリアンは、笑って受け流していた。



 ナムラ砂漠で砂蠍のギャオを、一人で三桁倒したマークウェルは、パーティー仲間からは嫌われた。

 人が倒しかかっているギャオを横から倒していくのである。

 もちろん、なんの苦労もせずに簡単に。

 風の精霊の大将のおかげで、砂漠で体力の消耗は少なかった。

 砂蠍は、身体こそ他の蠍に比べて大きくて、身体の殻が硬いが、動きはそこまで俊敏ではない。

 マークウェルの初仕事にしては、生ぬるすぎだった。


 四人の仲間の分まで退治して、思いきりシカトされていた。

 同行していたアドリアンは、やれやれとため息をついていた。


 なぜ仲間にシカトされているのか、全く理解の出来ないマークウェルは、これがこちら流の仲間の挨拶なのかと、疑わなかった。


 そして、意気揚々と冒険者ギルドに戻ると、百二十五匹の砂蠍の尾を堂々と受付のお姉さんに提出した。

 リーダーは、契約金をそれぞれのパーティー仲間に払っていた。

 その中で、マークウェルの受け取ったお金は、銅貨1枚だった。





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