第38話 ロザリンデの力
よっぽど疲れていたのか、食事をして目を覚ますと、太陽が天辺まで来ていた。
しかも、暑い……マークウェルの経験の無い暑さだった。
寝苦しくて、寝返りを打っていたら、結構な薄着姿のロザリンデが飲み物を持って来てくれた。
「おいおい、早速客をを取る気か?」
「なにを言ってるの? 暑いんだからこれくらいで丁度いいわ」
ロザリンデは、果実を搾った飲み物をマークウェルの渡しながら言った。
「お礼をしなきゃね」
「いらねぇよ!」
「あら、私は、そっちの方が目的だったのよ」
「はぁ!?」
「強くて、私の力を受け取ってくれそうな人を捜してたの。勇者になりたいのでしょう? マークウェル」
「勇者ッてか、英雄なんだけど」
「似たようなものよ。まず、増幅の力ね。あ、座ってて良いわ」
飲み物を飲み干したマークウェルが、立ち上だろうとしたのをロザリンデが止めた。
「増幅の力は、あなたととっても相性が良かったから、いっぱしのはぐれ魔法使いくらいにはなれるわよ」
「なんだ? なんだ?」
マークウェルには、訳の分からないことばかり起こっている。
ロザリンデが、マークウェルの前に手をかざすと、銀色の光が出て来て、マークウェルを包んだ。
「それから、これが学び舎って言うか、銀の森が私を放さない理由よ」
マークウェルが見ると、ロザリンデは、小さなキラキラ光る珠を持っていた。
大きさは、マークウェルの手の平サイズだ。
「これは、なんだ!?」
「召喚魔法の使える玉よ。私、この世界に珍しい召喚士なのですって。それで、七歳の時から母さんと離れて、学び舎にいたの。でもずっと嫌で嫌で帰りたかったの。そんな時に、銀の森を出て行きたがってるあなたの企みをテティスが教えてくれたのよ。」
「使い魔とか反則だろ~ 風の噂は、大将が抑えてくれてたし、バレるはずが無かったんだ~」
「かわりに、全速力で森を出たし、あなたは召喚玉を手に入れたわ。
異世界の魔物を呼び出してしまう事もあるそうだから、使い方には気を付けてね」
「ば~ろ~!! なんで、俺がそんな荷物を背負うんだよ」
「う~ん、きっと必要になる日が来るから! かな?」
マークウェルは荷物を背負わされた気になっていた。
「で、身軽になったロザリンデさんは、何時からお仕事を?」
「今からでも良いけど、年齢的に少し早いの。だから、次にマークウェルがここに来た時に相手をするわ。私はマークウェルだけの女になる」
「おいおい……」
悪い気のしないマークウェルだった。
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