第31話 逃亡
「使い魔~~?」
「一応、大地の魔法使いよ。見習いだけど」
マークウェルは、地上に降りてロザリンデをジッと見た。
「見習いってことは、誰かに師事してるのか!? あの高慢ちきな一族に?」
「それはひどいわ。神の子孫の方々よ。ここには、神の加護を持った子が集められて教育する学び舎があるの。私は七歳からここにいるわ」
「ふ~ん。それで? そのネズミちゃんに何を探らせたわけ? お前も光の神殿の奴らや、騎士団長と繋がってるのか?」
マークウェルは、威嚇するように声を落として言った。
「いいえ、私もあなたと同じ。ここを出て行きたいの。故郷のオアシスに帰りたいのよ。でも、学び舎は私を離さないわ」
「どうしてだ?」
「私の力は、ちょっと変わっているの。ドーリアには多いけど、未来が視えたりするのよ」
「未来が視える!? すげぇ!! 俺は、英雄になってるか!!?」
ロザリンデは、困ったように首を傾げた。
「英雄って言うより、勇者?かな? あなたは、いろいろな未来が視えるの。選択肢が多いのだと思うわ。でも確実に西域に行けば、勇者クラスの冒険者になれる」
ロザリンデの言葉を、マークウェルは黙って聞いていた。
「ドーリア?西域の古王国だな。そこの出身なのか?」
「ええ、小さなオアシスの町、リド・オアシスが私の出身地よ。
西域を目指しているのは知ってるわ。お願い! 一緒に連れて行って!」
「そんなことをして、俺にメリットはねぇじゃないか!!」
「リド・オアシスまで連れて帰ってくれたら、私を好きにして良いわ」
「おい!!お前、自分で何を言ってるのか分かってるのか?」
幼馴染みのリエンファと年が変わらない女の子から、娼婦になる宣言を聞いて驚きである。
「私の家は、オアシスの小さな娼館よ。帰れば、そう言う事よ」
「そこまで、ここが嫌なのか?」
ロザリンデは頷いた。
それから二日後、騎士団から従騎士一人と学び舎から学生が一人の男女の姿が消えていた。
二人の間に接点は無く、全く別々に銀の森を出て行ったと思われた。
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