第29話  精霊という存在

 リエンファは、ニッコリと微笑んだ。 久々の休みで、マークウェルは、リエンファに会いに来ていた。

 思わず、北の国の言葉で話しかけようとしたマークウェルだったが、リエンファからは、流暢な共通語が出てきたのである。


 首を引っ込めるマークウェルだった。

 リエンファのいる光の神殿は、銀の森の最奥にある。

 マークウェルもいたが、外に出させてもらえない時期だった。


 イリアスの言ったひと月が過ぎると、マークウェルは適性をかわれて騎士団の入団準備のためにカーティスの屋敷に招かれていたし、リエンファは、その能力を高く評価されて光の神殿に留まった。


「ここの人は、みんな優しいよ。私の力のことも分析してくれたのよ」


「分析って何だよ?」


「この世界には、四大精霊がいるのですって。風と火と水と大地。

 私は、生まれながらに四大精霊が祝福されてるんですって」


 幼い頃から、のせいで奇異の目に晒されていたので、リエンファにとっては、こちらの世界の方が住みすいのだろう。


「こちらでは、精霊使いとか、魔法使いって言うらしいわ」


「へ~ なんか、俺も目が変になってきたかな~?」


「精霊が視えてるんじゃないの!?」


「そこかしこに、透き通った奴がウジャウジャいるぜ」


 リエンファの言葉にマークウェルは、頷いて言った。


「気が合った精霊と契約してみれば? マークだって出来るかもよ?」


「そんなこと言ってもなぁ」


 マークウェルは、鼻の下を搔きながら、木々の下に行った。

 銀色の葉っぱは、目がチカチカする。

 その中で、女性の精霊の多い木々の中で、一匹だけふんぞり返った態度の男の精霊がいた。


「おい、そこの態度のデカいの!! 降りてこい!!」


「マーク!!この場合は、古代レトア語よ」


「失われた古語だろ?お前、こっちの人間に毒されてんじゃねぇよ!」


「早く毒されて、楽になりなさい。マーク、私たちは、もう北に戻ることは無いのよ」


 キッとリエンファを睨むと、古代レトア語で言った。


『おい、俺はマークウェル・カインだ。契約って何だ』


 ふんぞり返っていた精霊が、突然吹き出したように突風が吹いた。

 それと共に笑い声も聞こえた。


 <愉快な男だな。魔法使いにも見えぬが。オレの名は、セネガルドだ>


『お、おう……』


「マーク、契約が成立よ。その精霊は、風の属性みたいね」


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