第22話  魔法剣、ディマ・ヘッセル

 銀の森で黒髪の客人を保護してから、ひと月ほど経った。

 不思議な事に、神剣の間にいた男女は、黒髪の色が抜けてきてカインは金髪になってきた。リエンファは、銀髪のままだった。

 それは、みるみる内のことで、カーティスが見ていても、日ごと髪の色が落ちて行くが分かったくらいだ。


『もう、こちらの人間といっても、おかしくないですね。』


『そうか!? 狭いが、ここの居心地は悪くね~ からな!!』


 カインの屈託のない笑顔にカーティスは、イリアスの言葉を信じることが出来た。


(悪人でではない……)


『その長刀は、こちらでは見ないものですね?あちらでは、そのような長剣が普及しているのですか!?』


『これか!?』


 嬉しいことに、気が付いてくれたことにカインは、狭い神剣の間で宗平ムネヒラを抜こうとした。


『あっ駄目、駄目です! ここで抜刀なんて! ここは、ご神体を祀る部屋ですよ』


『ふ~ん? ここにも、幾つかの剣が納められてるんだな。まぁ、俺の宗平ムネヒラは、特別なんだけど』


『特別!?』


 カーティスが言った。


『親父が大山脈の麓で拾って来た、この真っ赤な石を火の中に入れて鍛えたんだ。切れ味が抜群だぜ』


 カインは、カーティスに赤い石を渡した。


『炎華石ですね。火の精霊や、火竜の息吹を閉じこめることが出来るのです。あなたのお父様は、すごいですね。炎華石の火に耐えられるなど、大した鍛冶師です』


 父を褒められて、カインは嬉しくなった。

  

『この部屋の剣も特別ですよ。例えば、この《ディマ・ヘッセル》ですが……』


『英雄の友!?』


『そんな銘のある剣です。英雄、マーティン・ラルクの剣です』


『英雄かぁ……どんな奴だ!?』


『それが謎の人物なんです。千年ほど前に急に現れて、ここから北西の方向にあった魔族の巣を一掃して国を建国したんですよ』


『魔族? こっちの世界にも魔物や魔族はいるのか!?』


 カインは、ビックリした。


『いますよ。我らは光の眷属ですが、彼らは闇の眷属です。相容れることは無いでしょう』


『そりゃ、おかしいだろ!? 人間に光も闇も関係無いはずだぜ。俺たちは、理不尽に襲ってくる魔族から、苦労して身を潜めあって生きて来たんだ』


『でも、我らは光の神の子孫です。英雄のマーティン・ラルクだって、親族の姓ですよ。光の神の子孫が、国を作り王朝を開いた……と記録にはあります。その彼の愛剣が、ディマ・ヘッセルであったと伝わっています』


 カインがディマ・ヘッセルを見ると、不気味に光っていた。

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