第20話  イリアスと二人の異人

「我が、祖神。その者達は何者ですか?」


 ザイラス・ラルクが銀色に光り輝いている、イリアスに問いかけた。


『我には名がある。それを呼称せよと何度も告げておるだろう』


「それは、恐れ多く……カーティス様、ここはあなたが……」


 ザイラスは、さっきまでの勢いは何処へやらで、本家のカーティスにイリアスとの対話を丸投げした。

 カーティスも、こういう時ばっかりと面白くない。


「も~っ!! こんな時ばっかり、エル・ロイル家に頼らないでください!!

 で、イーリャ、(イリアスの愛称)その子達は、誰です?」


『大山脈の北の国より逃れし者たちだ。保護を求める声がしたので、われが招き入れた。』


「大山脈の向こう側!?人が住んでたんだ」


 カーティスは、二人を不躾ぶしつけに見た。


「こら、カーティス様。失礼ですぞ!」


 ザイラスがたしなめた。


『この見た目では、こちらの世界では生き難かろう。ひと月ほど此処ここで過ごして後の面倒はそなたたちに頼むとする』


「でも、彼らの素性は、分かりませんよ!」


『我のもとに声が届くなど、悪人ではあり得ない」


 イリアスは、そう言うとスーッと姿を消して、元の神剣の姿になった。


 カーティスが、黒髪の二人に近付いて言った。


「ねえ、君たち名前は?」


 二人は顔を見直している。言葉が通じていないようだ。


「僕はカーティス・エル・ロイルです。君たちは?」


 アーティボルトは、自分を指して言った。


「●▲*&$#**@@」


 男の方が、何か言ったが見事に分からない。


「そうだ!」


 カーティスは、思い立って執務室に携帯用の黒板を取りに行った。


「これで古代レトア語で書いてみて? 古代レトア語は、異種族間でも通じる言葉ですから、同じ大陸だし、古の時代には南北の交易はあったという伝承もあるから、通じるかもしれません」


「なるほど」


 アーティボルトが同意した。


 カーティスは、小さな黒板に、


『君たちの名前は? 僕たちは、カーティスだよ』


 さらさらと書いて、黒髪の男女に渡した。


 二人は、ジッと黒板を見ていた。













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