第17話  南の地へ

「それで俺たちは、これからどこで暮らすんだよ」


 珂英カインの言葉に蓮花リエンファは、目の前に聳え立つ大山脈を指差した。


「この大山脈を越えるのよ!」


「?」


 珂英カインには到底信じられないことだった。

 昔から、この大山脈の向こうは魔族が沢山いて、人の住める処ではないと伝承されてきた。

 しかもこの山脈は、人の足では越えられぬ険しいものであったのだ。


「私の力なら、飛べるよ。それに南にも人間はいるよ。分かるんだ。人間が、山の向こうから沢山漏れてくるのが分かるのよ」


 蓮花リエンファは、力強く言った。

 それで珂英カインの決心もついた。


「それで、どうすれば良い?」


「私と手を繋いでいて。向こうと交信してみるわ。誰か、私達を受け入れてくれる人を捜すわ」


 なんとも大雑把に言って、蓮花リエンファは左手で河允カインの手を取り、右手を頭上にやって目を閉じた。




「ーー見つけたわ。移動するよ」


 蓮花リエンファが言った。

 珂英カインの持ち物は父の形見の長刀宗平ムネヒラだけだ。


 二人はスーッと空に飛び上がり、


「「ハッ!!!」」


 蓮花リエンファが叫んで、珂英カインは驚いてバランスを崩してしまった。

 その時に見た、岩だらけの地上の様子が河允カインの北での最後の記憶だった。



 


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