第13話  ディン族の弱点

 ドレーヌの拠点でも、被害が出ていた。

 人によく似た外見をしており、昼の只中に平然と人を襲っていた。


 作戦会議は、何度かたてられたが、ディン族の巣が何処にあるのかさえ分からなかったので、たてようがないのだ。


 毎日のように、干乾びた死体が何処かに転がった。


 珂英カインもこれ以上は、我慢ならなかった。

 自分と同じ兵士が犠牲になっていくのが……

 珂英カインの役目は、主に夜の見張りだった。

 何故自分は、魔族に出くわさないのか?


 それが珂英カインの最初の気づいたことでもあった。


(夜……篝火には寄ってこない……アルゲイ族は、水に弱かった……もしかして、ディン族は火に弱いのかも?)


 珂英は、思い付いたことを小隊長の傑倫ジェロンに伝えた。


「なるほどな……それで夜は身を潜めてる訳か……人は火を使うからな」


「一匹で良い、魔族を生け捕りしろ。そいつを夕方に放すんだ。後を付ければ巣が分かる……どうだ?」


 傑倫ジェルンは、ジロリと目つきの悪い人相で珂英カインを睨んできた。


「おれに命令をするな!! おれはお前の上官だぞ!」


「そりゃ、知ってるけど?」


「魔族の生け捕りはお前がやれ!! 一匹で良いんだろ? この軍にお前の名刀に敵うものは一人もいないのだからな」


「はいはい、それじゃあ明日にでもな」


「命知らずのウォジアンを連れて行け」


「助太刀なんていらねぇえぜ?」


「助太刀じゃなくて、お前の後ろに恨めしそうな顔で立ってるんだ!!」


 珂英カインは、ギョっとして後ろを振り向くと、二人の男がニタニタ笑って立っていた。

 傑倫ジェルンは、不機嫌そうに行ってしまった。


 ♦


 翌朝珂英カインは、眠い目をこすって猛者もさウォジアンを伴って、ディン族の良く出る西側の城門の辺りを張っていた。

 そして明らかに、人間とは違った、でも人間によく似ている魔族を見つけることが出来た。見た目の美しい魔族だった。


「いいか、俺が囮になる。2人は頭陀袋にあいつを入れろ!!」


「ズルいぜ、珂英カイン


 ジアンが言った。


「へっ!?」


「俺だって、早く将軍様のようになりたいんだ。囮役はオレに任せろ」


 ジアンは、走って銀髪の魔族の所へ行った。

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