第11話  神聖辰(シン)帝国

 傑倫ジェルンの父の口利きで、珂英は、皇軍に入る事が出来た。

 金家の当主も、村から無理やり蓮花リエンファを連れ出したので、帝都まで来た珂英カインの要望を出来る限り聞いてやったのだ

 騒ぎ立てても、蓮花リエンファは、もう珂英カインの手の届く存在では無くなっていた。 

 

 珂英カインが、帝都について、半年後、皇帝が謎の死を遂げた。

 暗殺の噂も囁かれたが、治療師から正式に病死の発表があった。


 皇帝には、何人かの愛妾がいたが、家柄の良い妃は存在せずに、子供たちもみんな幼かった。

 この国の事態にライ将軍が、今の皇家を廃して蓮花リエンファ神女しんにょとした、神聖国家を興したのである。

 自らは、摂政として国政を取ることになった。


 神女、蓮花リエンファの神格化は、珂英カインがズッコケそうになるくらいに凄かった。


 将軍は、国の中枢を握る人物たちに、蓮花リエンファの不思議な力を大金で施させ、魔族に襲われても新しい国には、傷を癒し病を治してくれる神女しんにょがいるのだということを広めた。


 蓮花リエンファの力は、まさに奇跡の力として神格化されてしまったのだ。

 将軍は、蓮花のの力を利用したのである。


 神聖辰シン帝国が出来上がった月に、摂政であるらい将軍は、皇軍を魔族から人々を守るための救世軍と名を変え、皇軍にいた珂英カインもそのまま移籍することになった。


 そうして皇軍として二度、救世軍として一度出陣した。


 一年もすると珂英カインも軍に馴れてはきたが、規律の厳しい軍隊の生活に辟易していた。もともと、人と関わることが苦手な珂英カインである。良く単独行動をしてしまい、正座に飯抜きの罰を何度も食らっていた。


 魔族のアルゲイ族は、水に弱いことが分かったので、村々に水郷を造って守らせた。

 堀を作っている間に、魔族が襲ってこないか見張り兼護りだ。


チャン二等兵、東の森に魔族が出たぞ!」


 見張りから伝令が来た。

 珂英カインは、刀を持って出動していった。


 東の森に、数匹の魔族がブンブンと飛んでいた。

 偵察だろうか。

 数匹しかいない。


 珂英カインは、この一年で剣の腕はメキメキ上がっていた。

 才能はあったのであろうか、軍に入ってすぐの出動が経験値になったのか。

 今では刀の腕なら、階級関係なしに珂英カインの右に出る者はいなかった。


 息を殺し、森に潜んでいた。


 アルゲイ族は、有翼種で鋭い爪を持って人の血をすすってくる。

 珂英カインは、魔族を見つけ距離を縮めた。







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