第4話  景平(カゲヒラ)の話 (1)

 さて、話を景平カゲヒラの出奔当時まで戻そう。

 景平は、未開の地だと言われていた北を目指して旅を続けた。

 途中に魔族に遭遇することもあったが、先祖伝来の長剣が景平を守ってくれた。

 そうして一年だ経った頃、変わった一族の住む村に出た。

 この大陸に住む者達は、景平の先祖が住んでいた陶国とおなじ、黒髪黒い瞳ののっぺり顔だと聞いていたのに、銀色の髪、白い髪、赤い髪、金色の髪の者がいた。

 そこは、その一族の村だという。美しい若者ばかりの村だった。


 だが、景平がその村に入り込んだことで、村に争いが始めるようになってしまったのだ。


『この村の存在を外に漏らされる前に、あの男を殺すべきだ』

『いや、食事が自ら飛び込んできたのだ。しばらく生かしておくべきだ』


 愛刀を取り上げられそうになった時に、景平は激しく抵抗して、そいつの腕を切ってしまった。

 そして驚いた。

 血が緑色であったのだ――――


「魔族!!?」


 さすがの景平かげひらも観念した。

 自ら、魔族の巣へ入り込んでしまうとは――なんという失態。

 景平は、自分を激しく責めた。


かしらの所へ連れて行け」


 腕を斬られた灰色の髪の男が、白髪の男に言った。ここでも上下関係はあるようだ。



 *




「名前は何とういう?」


 焦げ茶色の髪、体格は景平よりも華奢で、年も景平よりも若そうな男が聞いて来た。


成田景平ナリタ・カゲヒラだ。お前たちは魔族か?」


「我々の方がここには長くいる。我は、宇航ィユハンここの長老だ」


「ち……って幾つだよ、年寄りと子供はどうしたんだ?食ったのかよ!」


「我らはディン族の古き血を持つ者達だ。節操のない今時いまどきの輩といっしょにされるのも困る景平よ。取引をしよう……我らの仲間となれ」


「断る!俺には誇り高き陶国の血が流れているんだ!」


「そんな国は知らんが……その刀で脅しても無駄な事。我らは不死身だ。

 弱点を突かれぬ限りな。さぁ、我の血を飲むのだ」


 宇航は、短刀で手の平を切ると景平に向けた。

 景平は、白い髪の男に身体を押し付けられて、宇航ィユハンの血を何滴か飲む羽目になってしまった。








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