#003 ダクソ2は言うほどクソゲーじゃない。
始まりの街で伝説の剣を抜いた勇者は、仲間の魔法使いと賢者と武闘家とパーティーを組んで魔王討伐の旅に出かけたのであった。
「つ……強い……!」
しかし最初のチュートリアル的なボス、ネズミ王チュー助に苦戦して足止めを喰らっていた。
「こんなの……どうやって戦えばいいんだ!」
「落ち着いて勇者!」
狼狽える勇者を美少女魔法使いが宥める。
「攻撃は確実に通ってる! 焦らず地道にダメージを与えていけば、いつかきっと倒せるから!」
「それまで俺が足止めする!」
筋骨隆々の武闘家がネズミ王の巨体に飛びかかり、下半身を掴んで足止めしていた。
「今のうちに対策を考えましょう!」
地味っ子メガネ賢者が打開の策を提案する。
「今こそ伝説の剣を使う時です、勇者!」
「そうだよ勇者! あの剣ならこんなモンスター秒で倒せるよ!」
「勇者パーティーが秒で倒せるとか悪役みたいなことあまり言うなよ!」
そう言いつつ、懐から伝説の剣を取り出す勇者。
「本当に……僕なんかに、この伝説の剣が使えるのだろうか……」
「大丈夫だよ! 勇者は伝説の剣に選ばれたんだから、あの岩から引き抜くことができたんでしょ!」
「そうだな……よし、僕はやるぞ!」
そう言って勇者が取り出したのは、刃の部分が半分くらいへし折れた伝説の剣の残骸であった。
「ちょっと剣引き抜く時ミスって、半分くらいバキッと折れちゃったけど! なんとかなるはずだ!」
「勇者全然剣に選ばれてないじゃねぇかぁぁぁ!!!」
モニターで一部始終を監視していたさっきゅんがツッコミを入れる。
「抜けないからって刃へし折って無理矢理持ってきただけじゃねぇですか!」
「どうやら正規の手段で剣を手に入れなかったせいで、俺が用意していた各種バフが正確に反映されていないようだな」
状況を冷静に分析する魔王。
「そりゃいきなりボスに挑めば、苦戦も必至というものか……」
「いや呑気に言ってる場合じゃねぇですよ……」
頭を抱えながら訴えるさっきゅん。
「このままだと私の次期魔王の座が手に入らないじゃないですか!」
「ついに本音言いやがったなコノヤロー!」
二人が口喧嘩している隙に、視点は勇者一行の元へ戻る。
「これはもう剣として使い物にはならない……だが、溢れ出るエネルギーを直接敵にブチ込むことができれば!」
それを聞いて、魔王は良い判断だと心の中で勇者を褒めた。
元々剣は魔王の莫大な魔力を注いで作り出した代物である。
そこに長い年月をかけて自然から取り込んだエネルギーが蓄積されていた。
「あの剣には今や、核弾頭以上のエネルギーが内包されている……」
つまり、どんなモンスターでも一振りで確実に仕留めることができる。
「くらえネズミ王ォォォ!!!」
ズブッ!
刃が肉体の内部に抉り込んだ音!
「お゛ほ゛ぉ゛っ゛っ゛っ゛〜〜〜!!!???」
同時に武闘家のクソきったねぇオホ声が鳴り響いた。
「いや伝説の剣、武闘家のケツにブッ刺さったぁぁぁ!!!」
さっきゅんのツッコミがシャウトする。
「標的違うぅぅぅ!!! すぐ抜け! 剣抜け! そして最初のボスくらいさっさと倒せよ! もう三話だぞ! もう折り返し過ぎてんだぞ!」
「すまない武闘家! 今、剣を抜く……ッ!」
慌てて剣を引き抜く勇者。
パキンッ
そしたら刃が再に半分に折れた。
「おいぃぃぃ!!! 伝説の剣脆すぎだろぉぉぉ!!!」
「……いいや、違う」
冷静に分析を続ける魔王。
「凄まじいケツの締まりだ……一眼見ただけでよく鍛えられた筋肉だとは思ったが、よもやここまでとは……」
「そんなこと一々分析してんじゃねぇぇぇ!!! 馬鹿かアンタは!」
さっきゅんのツッコミの横で、何故か凄まじい輝きを放つ武闘家の体。
「う゛お゛っ゛!? お゛お゛お゛お゛お゛お゛〜〜〜!!!???」
「武闘家ぁぁぁ!!!」
叫ぶ勇者を抱えて、光り輝く勇者から遠ざかる魔法つかい。
やがて数秒と立たないうちに、
ドガァァァンッッッ!!!
凄まじい爆音と共に武闘家の体が弾け飛んだ。
「ッッッチュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」
爆発に巻き込まれて消滅するチュー助。
煙が収まった後、その場に残ったのは地面が大きく抉れてできたクレーターだけであった。
「どうやら武闘家に剣がブッ刺さった瞬間に、剣の魔力が武闘家に流し込まれ……耐えず自壊した武闘家の魔力の奔流に巻き込まれ、チュー助もろとも消滅してしまったようだな」
どんな状況でも魔王の冷静な分析は続く。
「いや魔王様、冷静に分析するのは良いんですか……」
苦笑いしながらさっきゅんが続ける。
「いきなり勇者の仲間一人減っちゃいましたけど、大丈夫なんですかこれ?」
「ここまで完璧に消滅してしまっては、リスポーンシステムも機能しないだろうからな……」
しかし魔王はフッと笑いながら、応える。
「だがRPGと言えば新しい仲間の追加イベントの一つや二つ、あって然るべきものじゃないか?」
というわけで次回はそんな感じの話になります、多分。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます