第2話

「マルクの恩恵ギフトは、【雑魚】です」


そう神父様に告げられ、固まっていると



「はーはっは。君にお似合いで良かったじゃないか、マルク」


大笑いしながら近づいてくる、オールド公爵家のゲニル。同年代で、交流はそれなりにはあるが、ゲニルは何故か僕を敵視している節がある。多分、あの時の事を根に持っているのかね。今も、僕を蔑む為、大声を出し周りの貴族や平民達に言う


「しかし、【雑魚】がマルクの恩恵ギフトだとはね。失敗作のマルクにはお似合いじゃないか。この僕の恩恵ギフト【剣聖】の力を、少しでも分けてあげたいくらいだよ」


ゲニルはこれでもかと、僕を貶める発言を繰り返す。それに乗っかり、他の貴族達も僕の事を貶める発言をしだす



「ゲニル様の言う通りでございますな」

「ねぇ、父上。あれよりは、恩恵ギフト無しの私の方が良いですよね」

「うむ、そうであるな。恩恵ギフトが【雑魚】よりはましであるな」

「マルク様は、やはり噂通りの御方だったと言う事か」

「フェム様やオーマイ様は、あんなにも素晴らしい御方なのに」

「さぞや、甘やかされて育てられているのだろう」

「そうですな。聞いた話だと、使用人からも失敗作と言われているらしいですぞ」



おーおー言いたい放題だな。まあ、【雑魚】だからしゃーないか。でも、恩恵ギフトを貰えていない奴よりは、ましだと思うが


それよりも、父上だ。周りの貴族達から好き放題言われている事に、ご立腹の様だ。だがこれは、僕に対しての事だと分かる


だって、父上ったらず~っと、僕を射殺す感じで睨んでいるんだもん


そんな中、婚約者であるエリスが近づいてきて


「マルク、気にしちゃダメよ。マルクが【雑魚】だからって、私は気にしないから」


おぅふ、僕を励ましてくれているんだろうとは分かるが、その言い方はちょっと



「エリス嬢。ご歓談の所、申し訳ないが、私とマルクは所用があるので失礼する」


この後、特に予定は無いのだが、周りの目を気にしているのだろう、父上が僕の腕を引っ張り帰ろうとする


「まあ、そうでしたの。それは、申し訳ありません。では、マルク様。また日を改めてお伺いいたしますわ」


エリスは素直に引き下がるが、何かを考えている


「はい、それではまた」


僕と父上は一礼をして、その場を後にする。はぁ~、帰ったらどうなる事やら





帝都にある屋敷に戻るなり、父上から


「マルク。お前をレーベン家から除名する。手切金は渡すので、直ぐに出ていく準備をせよ」


「えっ、宜しいのですか?」


あっ、ヤベっ。嬉しさのあまりつい本音が。これは、マズイ。少し演技をしないと


「ちっ、父上。僕は要らない子なのですか」ウツムキ


「要る要らないの問題では無い。お前は我がレーベン家の恥さらしだからだ。フェムやオーマイは、流石我が子と誇れるが、お前にはそれが全くと言っていいほど無い」


そりゃあ、あのバカ兄二人は僕に全てを擦り付けてくるからね。一方、僕はそんなバカ兄二人と違って、決して妹弟に失敗を擦り付けていないし


更に、妹弟の二人はバカ兄二人と違って、優秀過ぎて僕でも見習う事があるし


「お前は、いつも失敗や物を壊したりする始末。その事もあり、使用人達からも嫌われている。なんで、こんな子が生まれてしまったのか」


えっ!僕って、そこまで嫌われていたの?ってか、失敗までは、まあ許そう。だが、物を壊すって、、、あの、バカ兄どもが💢そんな事まで僕のせいにしていたとは



「そして、極めつけが恩恵ギフト【雑魚】だと!!お前は、どれだけ我がレーベン家を辱めるのだ」


「しかし、父上。恩恵ギフトを授からないよりはマシかと思うのですが?」


「言い訳は聞かん。私も、言いたくはなかったが、こうして、実の息子のお前と話しているのも苦痛なのだ」


そして、父上はテーブルの上に鞄を置く



「この魔法鞄マジックバックを、餞別にくれてやる。中には手切金として、白金貨10枚入っている。今日中に、屋敷から出ていけ。エリス嬢との婚約も破棄しておくのでな」


「はぁ、、分かりました。お世話になりました」ペコリ


父上との話を終え、廊下に出る



いよっしゃーーーー!!これで、自由だーーーー!!ちゃんと、悲壮感漂う演技出来ていたよね


いやー、これであのバカ兄二人の、尻拭いをしなくても良いって思うと、気分は最高だね♪それに、貴族の生活も嫌気が差してたし


気がかりなのは、婚約者のエリスの事だな、、、、、まっ、あの娘も、僕の事など忘れて、他に良い男性を捕まえるでしょ、、、多分、、きっと


自分の部屋に戻る途中、すれ違う使用人達から蔑んだ目で見られるのが分かる。ああ、本当に嫌われているんだ僕。悲しくなんてないやい



「さてと、餞別で魔法鞄マジックバックを貰ったは良いが、これにどれだけ入るのかね?まっ、必要最低限の服だけでいっか。お金もそれなりに貰ったし、どうにかなるでしょ」


ふんふんふーん♪と、呑気に鼻歌を歌いながら準備をしていると、扉が『バンッ』と、勢いよく開かれる


「お兄様」「兄上」「「家をでるって、本当なの(ですか)」」


部屋に入って来るなり、僕に勢いよく抱き着く二人。異母妹弟で妹のマリーシアと弟のフェールだ。その後に、二人の母である「メアリー」母様が入って来る



「マリーシア、フェール。メアリー母様も」


突然の来客に、驚いたが、ここはシリアスにしないと


「そう、、だね。恩恵ギフトは授かったのだけど、それが問題だったらしくてね。それに、父上は僕を前々から追い出したかったみたいだから」


いよ~し、今の僕は、冷遇されながらも、健気に頑張っていたが認められず、終に追い出されてしまう、そんな悲壮感漂う美少年を演じている


「「そっ、そんな、お父様(父上)が。お母様(母上)、どうにかならないのですか」」


涙ぐみながら、メアリー母様に訴えかけるマリーシアとフェール


「マリーシア、フェール、ごめんなさい。私にはどうする事も出来ないわ。マルクもごめんなさい、私がもっと、、」


「メアリー母様、僕の事は心配しなくても大丈夫ですよ。何れ、こうなるだろうとは思っていましたので。だから、泣かないで下さい。それに、これでも僕は、それなりに戦えますし」ムンッ


僕の事を大切に想っている人達には、笑って送り出してほしいからね。それに、メアリー母様って、ぶっちゃけ僕の好みの女性だから余計泣かせたくない


何て言うか、、、う~ん、、メアリー母様って、商家の出なので、貴族よりも平民よりの感性だからか、近所にいる美人なお姉ちゃんって感じなんだよね。それが、二児の母とは、そこだけは父上を羨ましいと思う


因みに、最初に僕を抱いていたのがこのメアリー母様だ。実の母親、、、ああ、あの毒母はバカ兄二人にべったり。僕と会うのだって、1年に1回あれば良い方だ。だからかな、僕にとっては実の母よりも、育ての母のメアリー母様が大好きだ


そして、その子供であるマリーシアとフェールもね♪



「ふふっ、そうね。でも、マルクの強さは分かっていますが、私は心配で心配で」


「ですが、メアリー母様。もう決まってしまった事ですし」


「そう、、よね」


「それに、僕は外の世界に興味があったので、良かったと思います」


これは、本音だ。折角、転生したのだから、色々な場所を回ってみたいし。まあ、魔物と戦うのは面倒だが、最悪逃げれば何とかなるでしょ


「お兄様、いっちゃヤダ」「兄上、僕も一緒に行きたい」


「我儘言っちゃダメだよ、二人とも」


「「えーーー」」


「う~ん、、、そうだ!それなら、二人が洗礼の儀で強力な恩恵ギフトを授かったら、兄様と一緒に冒険をしよう」


「「本当ですか、お兄様(兄上)」」


「うん、約束だ」


マリーシアとフェールの二人と約束の指切りをする。この時は、まさか本当に二人が強力な恩恵ギフトを授かるとは思っていなかった




「よし、準備も終わったし、明るい内に帝都をでるよ」


僕の見送りをしてくれたのは、マリーシア、フェール、メアリー母様の三人。それ以外の家族や使用人達の見送りは無し。分かっていた事だけど、若干寂しいかな


「今まで、お世話になりました。マリーシア、フェール、メアリー母様。お元気で」



「お兄様、私、絶対に強力な恩恵ギフトを授かって、お兄様をお助けしますから」


「僕だって、兄上を助ける為に、強力な恩恵ギフトを授かってみせます」


「ありがとう、二人とも」


「マルク、もし辛くなったら、私の実家【リンゼム商会】を頼りなさい。お父様には手紙を出しておきますから」


「ははっ、ありがとうございます。メアリー母様」


ああ、血は繋がってないけど、この人達のことが本当に大好きだ



この時、この三人は僕の絶対に守る対象に入る事となる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る