第16話

「……んだよあいつ。自分から約束だとか言ってたくせに、自分でそれを破るのかよ。やっぱり人間なんて、身勝手な生き物だな」



「何を拗ねているんです? 最初はあんなに怖がっていたのに。随分葵葉さんに懐いたみたいですね神耶」




ニヤニヤと意味深な笑みを浮かべながらそんな事を言う師匠。



「な、別に拗ねてなんかねぇ! 懐いてもいない! 人間なんて大っっ嫌いだ!今日はあいつがいいなくて清々してらぁ!」



「本当に貴方は、面白いくらいに素直じゃないですね。顔、真っ赤ですよ」




クックッと声を殺して、笑いを堪えているのだろう師匠。

その姿に、俺は恥ずかしさを抑えられず大声を上げた。



「う……うるせ~! てか、あんたいつまでここにいるつもりだよ。とっとと自分の神社へ帰れよ!」



「あっ、葵葉さんが来たみたいですね」



「っ?!」




師匠の言葉に思わずキョロキョロと辺りを見回す。

そんな俺に、ついに師匠は大声を上げて笑い始めて



「な、何がおかしい?」



「嘘ですよ。う~そ。そんなにも葵葉さんが待ち遠しいんですね」



「こ、この……糞師匠~~~~~っ!!」




俺は怒りを爆発させた。

なのに




「あっ、葵葉さんが来たみたいですよ」




まだ懲りないのか、この人は。




「二度も同じ手にひっかかるかよ」




おれはプイっと師匠から顔を背ける。




「今度は本当ですって。ほら、社の方」




師匠のその言葉に、ついつい師匠が指を指す先を目で追ってしまう。



師匠の指差す先。社がある方向。ここから肉眼では神社など到底見えないが、俺は意識を集中しながらじっと目を凝らす。神力を使って、師匠の指差す先を見つめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る