指切りげんまん

第10話

「か~ぐやく~ん! 遊びましょ~!」



次の日――

午後一番から予告通り奴が現れた。


昨日の一件で、俺は恐怖のあまりろくに眠れず、つい先程やっと眠りに落ちたと言うのに、奴のあの楽しそうな声はなんだ?


耳を塞いで気付かないふりをしながら、俺はこのまま睡眠を続ける事を決め込む。




「おや、こんにちは、お嬢さん。昨日はどうも」


「あ、こんにちは! 約束通り遊びに来ました。神耶君はいますか?」



誰も約束なんかしていない。お前が一方的に言ってるだけじゃないか。俺は遊ばない! 絶対に遊ばない! 人間と友達になんて、絶対友達になんかならない!


外から聞こえる師匠と人間の会話を訊きながら、俺は一人心の中で固く誓うも



「神耶なら社の中でまだ寝てますよ」



おい、馬鹿師匠、何勝手に俺の居場所を教えてんだよ!? 入れないぞ、絶対ここには入れてやるもんか!


師匠の裏切りによって身の危険を感じた俺は、急いで飛び起き、社の扉を開けられないようにと、扉に向かって飛び付いた。

だが一足遅く、俺が扉を抑えようとしたその瞬間、扉は勢いよく開け放たれて――




「あっ、神耶君、おはよう」



「うわぁぁぁぁ~~~~!!!」



突然目の前に、あのおぞましい奴の顔が現れた。

瞬間、昨日の恐怖が蘇って、俺は叫び声を上げながら勢いよく後ろへと飛び退いた。




「来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな~~~~~~!!!」




俺は助けを求めて師匠の姿を探す。と、人間の後ろから、ひょっこりと顔を覗かせる小さな師匠の姿が目に入った。


助けを求めて「師匠」と声を出しかけた時、師匠の肩が小刻みに奮えている事に気付いて声を飲み込む。


まさかあの野郎、笑ってやがるのか?

情けない俺の姿はそんなに滑稽か?

昨日、少しでも師匠を見直した俺が馬鹿だった!


結局、今この恐怖から逃れられる為は、大人しく奴の言いなりになるしかない。

情けなくも、俺はそう悟った。

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