第8話

「お前さ、どういう頭してるわけ? ちょっと話しただけで友達って、んじゃお前はいったい何人友達がいんだよ」



俺が更にイライラしながらそう聞くと、急に顔を曇らせて、蚊の鳴くような小さな声で言った。



「誰も……いない……。今は誰もいないの……」


「お、おい、何で急に暗くなんだよ……」




先ほどまでとの調子の違いに、オロオロしながら俺はどうしていいか分からなくなる。




「だから今はあなたが私の友達! ね、お願い、名前教えてぇ!」




かと思えば、また急に元の強引な調子に戻って



「何なのお前? いったい何なんだよお前!?」




じりじりと俺に向かって迫って来る。2、3mはあったはずの距離は、あっと言う間に50cmにまで詰め寄られる。


危機感を覚えた俺は、人間が与える恐怖から少しでも逃れようと後ろへ下がろうとするも、背中には既に壁が在り、もうこれ以上後ろへ下がる事は出来そうにない。



「ねぇ~、教えてよ名前」



だが、人間の方は、まだまだ止まる気配は無さそうで、恐怖のあまりまるで金縛りにでもあっているかのように体が固まって動く事のできない俺に、奴はじわりじわりゆっくりと、でも確実に近づいてくる。



「や、やめろ、やめてくれ! それ以上俺に、近づくなぁ~!!」



万事休す!

俺は大絶叫をあげて、天に祈った。



(神様ぁぁ~……って俺じゃん! じゃあ、仏様……もう誰でも良いから、誰か助けてくれ~!!?)




そして、恐怖に堪えられなくなった俺は、きつく目を瞑った。



――と、その時、どこからともなく天のお声が聞こえて来た。



「神耶ですよ」



……って師匠っ?! 名前教えたら意味ないじゃん!

奴の与える恐怖に耐えながら口を閉ざしてきた今までの俺の苦労は?


とも思ったが、何とか人間に喰われずにすんだわけで



「神耶君かぁ! 教えくれてありがと! 私の名前は葵葉あおば。最近、この町に引っ越して来たの」



それで今は友達がいないってわけか?



「歳は15歳。血液型はB型で、星座は蟹座。身長は154cmの体重35Kg。好きな食べ物は~」


「おいおい待て待て!!お前、誰もそんな話は聞いてない!」


「えぇ~? 初めましてなんだから自己紹介しなきゃ! でしょ? 神耶君とは歳も近そうだし、仲良くなれそうな気がするんだ、私」



はぁ? 歳が近い? そんわけないだろ! 俺はゆうに400は超えてるんだ。たかだか15のクソガキと、仲良くするわけがない! 本当に、何なんだこの台風娘は……

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