第7話

「あの、えっと……お二人が私をここに運んでくれたんですか?」



「えぇ、あっちの仏頂面の方が」



俺の戸惑いを他所に、師匠はいつもの穏やかな笑顔で人間に答える。

すると人間はその場にゆっくりと体を起こしたかと思うと正座をしてみせて、俺達に向かって頭を下げて言った。




「ありがとうございました。私、あんな所で急に眠くなっちゃって」



「……は? 寝てたのか?」



「はい!」



「ほらみなさい。やっぱり寝ていたんじゃないですか」



師匠は勝ち誇った顔で俺を見る。

いやいや、あんな所で眠くなるって、普通に考えておかしいだろ?




「所でお二人は、どうして真夏の夕暮れ時に、こんな薄暗い森の中で、そんな奇天烈な格好をしてるんですか? 赤髪に白髪。それにその時代劇みたいな服装。平安時代の貴族さんかな? 暑そう……。あぁ、もしかして、これが世に言うコスプレ? コスプレイヤーさんですか? うわ~凄い。私、初めて見ました。何のキャラクターですか?!」



「コ……コスプ?!」




こいつ、俺の自慢の赤髪をコスプレだと?!

人間のくせに、神をバカにしてるのか?!



「あ、そうだ! あの、名前教えてください。お礼とかしたいし、それに」



その上名前を教えろだと?! 人間のくせに、馴れ馴れしいにも程がある!



「嫌だ!!」




イライラしながら俺はきっぱり人間の申し出を断った。




「ど、どうしてですかぁ~?」



「どうしても何も、何で俺が人間なんかに名前を教えなきゃなんねぇんだよ。それに、もう会う事もねぇような奴に、態々名前教えたりしねぇだろ普通」




バカにするように俺が冷たく言い放つと、人間は大きな目にうるうると涙を浮かべながらこっちを見つめてきて、俺はいたたまれなくなって顔を背ける。




「もう会ってくれないんですか? せっかくお友達になれたのに」



「はぁ!?」



だが、聞き慣れない単語に顔を逸らしたばかりだと言うのに俺は思わず人間へと視線を戻してしまった。



「何言っちゃってんのお前。誰が、いつ、誰と友達になったって?」



「私とあなたが、今!」



自信満々の返しに目眩がした。いったいこいてはどんなおめでたい頭をしてるのか。人間の思考回路について行けず、俺は頭を抱えこむ。

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