第60話 余った物はギルドに任せる

昇格試験に参加したメンバー全員が集合し、早速大きなテーブルの上に全部置いていく……が、多過ぎて全部乗り切らない。


「な、なんか色々あるんだな」


「そうなんだよな。なんで椅子とテーブルとか家具系が多いんだって思ってたけど、バカだから見境なしに襲ってたんだと思うぞ」


「な、なるほど。そういうものか」


という訳で、バルトのユウゴたちに対する軽い評価を伝えながら振り分けていく。


しかし、今回の試験で誰が一番活躍したのか……それに関しては、バルトが口に出さずとも全員解っていた。


「それじゃあ……やっぱりお金がメインで欲しいかな。あと宝石」


最初に欲しいものを選んだのはユウゴ。

武器はウルから買ってもらったロングソード、疾風があるので特に欲しい物はなかった。


マジックアイテムに関してはそこまで目ぼしい物はなく、結局たくさんあっても困らない現金と、売れば大金になる宝石を選んだ。


そして、バルト全員に軽い評価を伝えたが……要約すれば、皆同じぐらい頑張ったよねという内容。

なので、全員が色々と話し合い、誰が何を貰うのか決めた。


「まっ、こういうのは当然余るよな」


余った物……誰も持ち家を持ってないので、家具系は当然余ったので、そこら辺の処理はギルドに丸投げ。


こうして盗賊たちが溜め込んでいたお宝の配分は終了し……昨日の今日で昇格試験の結果が発表される。


バルトは昨日、ユウゴたちと呑んで食って騒いでぶっ倒れてた体に鞭を打ち、朝早くにギルドへ到着し……黙々と七人の評価を書き、ギルドのお偉いさん達と話し合いを行った。


とはいえ、結論を出すまで……話し合いが長々と続きはしなかった。


出発し始めてから約二名ほど不安なルーキーがいたのは否めないが、その二人が試験中に暴走することはなかった。

加えて、自分の仕事に関してはキッチリと果たしていたこともあり、バルトもお偉いさん達も迷うことなく合格を与えた。


「んじゃ……ババっと結果を伝えるぜ。全員合格だ!!!!」


焦らすことなく、バルトは文字通りババっと伝えた。


Eランクからの昇格に成功し、Dランクに上がった……その事を試験監督から伝えられ、ヒルデたちのテンションは爆上がりだった。


そんな中、ユウゴはヒルデたちほどテンション爆上がりではなかった。

口にはしないが、あれだけ働いたのだろうから合格は間違いないだろうと……と、ちょっと傲慢的な考えを持っていた。


ただ、やはり合格してDランクに上がったこと自体は嬉しく、小さくガッツポーズをしていた。


「んで、全員無事にDランクに上がった訳だが、これからは普通にギルドから今回の昇格試験と同じ、盗賊団の討伐を頼まれたり商人の護衛をする機会が多くなる」


Eランクまでは基本的に街中……もしくは街の近くの森などでモンスターを狩ったり薬草を採集したりするのが主な仕事だった。


だが、Dランクへと上がれば仕事を行う範囲が激的に広がる。


Dランクに上がったことを機に、育った街から別の街に旅立つ者も多い。


「浮かれるのも良いが、気合入れて前見てけよ」


「「「「「「はい!!」」」」」」


ユウゴ以外が気合を入れて返事を返し、今日はもう解散となるはずだった。

しかし試験中は我慢していたが、ここで爆発……したわけではないが、確認したいことがある男が、ユウゴに声を掛けた。


「おい、この後暇か」


「……まぁ、特に用事はないけど」


「そうか。なら、一戦だけ付き合え」


「模擬戦ってことか。分かった」


それを行えば、もうギルから睨まれることはないかもしれない。

そう思えば、模擬戦の一回や二回ぐらい行っても全然構わない。


「ルールは武器だけを使った勝負だ」


「……なるほどね」


ギルから伝えられた縛りに対し、特に文句はない。

オートエイムやサイキックに魔法陣の展開速度が超速い攻撃魔法。


それらの力が本当にチートだということは使っている本人が一番理解している。


なので、そういった力を使わず身体能力や武器だけの勝負がしたい。

そして自分がユウゴより上なのか下なのかはハッキリさせたい……そんなパーティーメンバーのエゴを、今回はヒルデとテオドールも止めなかった。


同じ昇格試験を受けたメンバーとして、アルたちも少し気になるので一緒に訓練場へ向かった。


そして二人は軽く準備運動をしてからユウゴは木剣、ギルは短めの木剣と木盾を持って開始線に立った。


「……ユウゴあっちの少年に付き合った、という形か」


少し離れた場所から同業者との模擬戦を終えたウルは、そんな言葉をポツリ呟いた。


「はぁ、はぁ、はぁ……あぁ~、そんな感じがするっすね」


模擬戦相手だった男は息絶え絶えになりながらも、ギルと対峙するユウゴが少し普通ではないと直ぐに察した。


「あまり熱くなり過ぎるなよ。すぅーーー……始め!!!」


審判はヒルデが務め、開始の合図と共に二人は同時に飛び出した。


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