第59話 どっちがラッキー?
アルゴンブルグまで帰る道中で何度かモンスターに襲われたが、盗賊団との戦いに比べれば楽に感じ……全員の動きが一段階良くなっていた。
と、試験監督のバルトは若者たちの成長を感じていた。
(良いね良いね、若者たちは成長が早い。って、別に俺も歳寄りじゃねぇけどな)
バルトもまだ限界まで成長しきってはいないが、それでもヒルデたちの成長は驚かされる。
ただ、バルトも若い頃から才気溢れており、ベテラン達が同じくその成長速度に驚かされていた。
(ただ……ユウゴに関してはもう驚き過ぎたというか、ちょっと違和感すら感じるな)
強力なスキル、複数の属性魔法を持っており、同じパーティーの超絶美人冒険者から買ってもらった上等な魔剣を持つ。
これだけでも十分驚きが詰まっているのだが、戦い方や考え方が十五歳のそれではない。
嘘を付いている様にも思えず、人を初めて殺して思いっきり吐いたことなどを考えると、特殊なスキルや魔法で老人が若返っているとも思えない。
(素人なら、ウルに偶々拾ってもらったラッキーな奴って思うかもしれねぇが……どうやらラッキーなのはウルの方かもしれないな)
冒険者になって数年経ち、既にランクはバルトと同じB。
バルトの直感だが、遠くない内にAランクに到達するのは間違いない。
ただ、戦闘スタイルは双剣か刀を使った接近戦がほぼメイン。
それに対してユウゴは接近戦もそれなりにいけるが、持っているスキルや魔法陣の展開速度、魔力の操作。
総合的にみると遠距離からの攻撃やサポートに優れている。
長い間ソロで活動していたウルにとっては、ピッタリの相棒が見つかった……というのは褒め過ぎかもしれないが、そうと言えなくもない。
「暗くなる前に着けて良かったな」
ユウゴたちは行に掛かった時間と同じぐらいの時間を掛け、ようやくアルゴンブルグに戻ってきた。
とりあえず腹が減ったので宴会……と、その前にギルドに行って昇格試験が終了したという報告。
それと、ユウゴが回収したお宝の分配を決めなければならない……のだが、これに関しては総意で翌日に行おうと決定。
冒険者ギルドでの報告が終われば、直ぐにバルトも交えて宴会が行われた。
全員今回の試験に対してそれなりに手応えがあり、下を向いている者は一人もいない。
この時ばかりはギルも不機嫌な表情ではなく、呑んで食って笑って過ごした。
「ユウゴ、ユウゴ。大丈夫か、起きられるか?」
「ん……あっ、ウルさんおはようございます。久しぶり、ですね」
「あぁ、おはよう。大丈夫そうだな……しかし、五日間ぐらいしか間がなかったが、確かに久しぶりという感覚だな」
無事に再会できて嬉しい……そんな想いが笑顔に現れ、その笑顔はユウゴにとって太陽よりも眩しいと感じた。
(うっ、一気に目が覚めたな)
美人に優しく起こされるというシチュエーションは決して悪くない。
ドMではないので叩かれて起こされるのは嫌だが、ウルはそういった手荒な真似をすることはまずない。
「よし」
シャキっと目が覚めたユウゴはパパっと着替え、集合時間に間に合う様に直ぐ一階の食堂へ向かった。
「ユウゴ、初めての殺し合いはどうだった」
ユウゴは昨日、一緒に昇格試験を受けていた面子と呑んで食べて騒いでいたので、残念ながらウルと話す機会がなかった。
「……思いっきり吐きました」
「はっはっは! まぁ、そうなるだろうな」
食事中に少しお下品だが、隠しようがない事実。
ウルもユウゴのストレートな言葉を全く気にしていない。
「でも、無事に生きて帰ってきたということは、上手く殺れたんだろう」
「そうですね……一応周りのサポートをしたりしてたので、なんやかんやで頭がパンク寸前でした」
「ほほぅ、乱戦だと判断する数が多く、速く判断しなければならない……それを考えると、そこまでレベルが高くない盗賊とはいえ、ユウゴがそうなるのも無理はないか」
ウルからすれば、昇格試験の相手に選ばれる盗賊団は当然、勝って当たり前の相手。
ただ、今回昇格試験の標的に選ばれた盗賊団は仮にユウゴじゃない誰かが選ばれていれば、バルトが参戦しなければならなかった可能性は十分にあった。
「でも、盗賊団のボスは戦いやすかったです。レベルは俺よりも上で、腕力は特に強かったと思いますけど、怒って動きが単調でした」
「そうか。ユウゴ相手にそれだと、良い戦いをすることも難しいな」
ブランで、余裕が生まれたユウゴはサイキックを封印して戦っていた。
身体能力で上をいかれても、数が多い手札を上手く使って戦い、自身の成長に繋げた。
最後は結局オートエイム、更にトラッキングを使用して終わらせたが、やろうと思えばそのまま疾風で……もしくは攻撃魔法で終わらせることも出来た。
「それじゃ、行きましょうか」
冒険者ギルドに用があるのはユウゴだけだが、特に用事がないウルは汗を流しにギルドの訓練場に行こうと決めた。
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