第50話 お互いに運が良かった

「んじゃ、二日後の八時までには北門の前にいてくれ。いなかったら、それも減点対象だからな」


自己紹介と作戦会議を終え、今日は解散。

そうなるのが普通かもしれないが、六人とも色んな意味でユウゴに興味を持っている。


「なぁ、ユウゴ君。この後一緒にお昼食べないか」


「いいな、それ。皆で食べよう」


アルとヒルデからそう提案され、同じルーキーと仲良くなるチャンスが来るのは嬉しい。

だが、他の面子はそれを良しとしているのか?


それが気になり、顔を向けると若干一名不満そうな顔をしている者がいるが、他の者たちは全く不満は無かった。


「分かった」


ギルドを出て、少し歩いたところでギルたちが普段から使っている飲食店に入った。


ユウゴはがっつり肉系の料理を頼み、他の者たちも多少の差はあれど、似た様な内容。


「部屋では聞けなかったけど、ユウゴ君はその……どうやってウルさんと知り合ったんだい」


今、アルゴンブルグのギルドではその話で持ちきりだった。

色んな憶測が飛び交っているが……せっかくのチャンスなので、アルとしてはここで訊いておきたい。


それはアル以外のメンバーも同じ気持ちだった。


「……ウルさんが死にかけてたところに、偶然俺が遭遇したんだ。そこでポーションを渡したんだよ」


「っ!!!??? あのウルさんが、死にかけた!? だ、誰か複数人に襲われてたのかい!」


アルはまだEランクだが、ユウゴが少し前に模擬戦を行ったレンと同じくルーキーの中で注目されている一人。


そんなアルから見て……ウルは同じBランクの冒険者であるバルトと同じく、どう逆立ちをしても実力では敵わないと感じてしまう一人。


殆ど年齢が変わらないにもかかわらず、圧倒的な速さで出世街道を突っ走る人が死にかけるなんて、よっぽどの何かに襲われたとしか想像できない。


結果としては複数人の誰かではない。

しかし、よっぽどの何かに襲われたのは正解。


「いや、複数人の誰かに……人、暗殺者とかに襲われた訳じゃない。Aランクのヴァイスタイガーと戦ってたんだ」


「「「「「「ッ!!!???」」」」」」


驚きのあまり、料理を食べていたメンバーは完全に固まってしまった。


そうなってしまうのも無理はない衝撃の話。


「ゆ、ユウゴ君は……ウルさんがヴァイスタイガーと戦っているところ、みたのか」


「いや、別に戦ってるところは観てないぞ。俺が遭遇した時は既に瀕死の状態だった」


「え、でも…………ッ!!?? つまり、そういうことなのかい」


「あぁ、ウルさんはヴァイスタイガーとの戦いには勝った。勝ったけど、重傷過ぎて自分が持ってるポーションも呑めない状態だったんだろうな」



ウルも自分でポーションを飲めていたなら、自力で飲んでいた。

ユウゴが渡したエリクサーの様に一瞬で全快することはないが、ひとまず一命を取り留めることは出来た。


だが、ヴァイスタイガーにギリギリ勝利することは出来たが、ぶっ倒れて手どころか指も動かせない状況だった。


「俺が飲ませたポーションでギリギリ回復して、一応助かったんだよ」


エリクサーを使って助けたということは、勿論伏せる。


ロングソードを使い、魔法も使える魔法剣士。そしてアイテムボックスのスキルを持っている。

そんなかなりのハイスペックに加えて、エリクサーまで持っているとなれば、色々と面倒な事になるのは目に見えている。


「そ、そうなんだね」


「そんな流れだったんだよ。それで、ウルさんがお礼に何か出来ることはないかって言われたから、自分とパーティーを組んでくれないかって頼んだんだ」


「へぇ~~~、そりゃなんとも……お互いに幸運だったんだな」


「そうだな。ウルさんとパーティーを組めてるから、基本的に冒険してるときは安心出来るよ」


ウルは三途の川を渡らずに済み、ユウゴも口が堅く実力が高い美人とパーティーを組むことができた。


「ふん、そりゃ運が良かったな」


ここでユウゴの「冒険してるときは安心出来る」という言葉に先程喧嘩腰で絡んできたギルが反応した。


「あぁ、運が良かったよ。色々とアドバイスは貰えるし、模擬戦の相手にもなってもらえるからな」


だが、ここでユウゴは今回ギルの嫌味に何か言い返すのではなく、本当に運が良かったと感じている感想を返した。


「……ちっ」


「ギル、いい加減ユウゴさんにそういった態度を取るのは止めろ。ダサいぞ」


「うっ! お、お前はもうちょいパーティーメンバーに優しくできねぇのか!」


「ダサい奴にダサいと言って何が悪い」


まさにその通りであり、またギルは言い返せず黙るしかなかった。


(同じパーティーの面子に責められてる……こいつ、本当に面白過ぎるだろ)


ユウゴとしては面白いギャグを見せられている様な感覚なので、目の前でもっとやってくれても構わないと思った。


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