第47話 ユウゴにとっては大差ない強敵
(アリステラの周辺にいるモンスターと、そんなに大差ないな)
ロングソードを丁寧に……速く振り、コボルトを瞬殺。
二体を同時に相手したが、特に苦戦することなく圧勝した。
ユウゴのレベルは十六まで上がり、対峙したコボルトはレベル十にも達していない。
今のユウゴであれば、数の不利など関係無しにコボルト程度であれば余裕で勝てる。
「複数を相手にするのも慣れてきたか?」
そしてユウゴが二体のコボルトを相手にしているうちに、ウルは三体のコボルトと一体の上位種を倒し終えていた。
「そうですね……多少は慣れたと思います。とはいえ、慣れたと言っても相手がそこまで強くなかったので……まだ完全に慣れたって感じではないですね」
この世界でモンスターと戦う様になってから気配感知のスキルを手に入れ、それを使いながら視界から消えた敵の位置を把握し、後方などから攻撃を受けないように気を付け……なんとか戦えている。
肉体的なスペックを利用すれば、今戦ったようなコボルトぐらいであれば勝てる。
しかし、レベルが近い相手だと、そう簡単に上手くはいかない。
(サイキックとか使えば上手く戦えそうだけど……まっ、もっと慣れないと話にならないよな)
Dランクの昇格試験はウルが話していた通り、アルゴンブルグから少し離れた場所に拠点を構える盗賊団の討伐。
盗賊団なので、当然かなりの人数がいる。
戦いが始まれば、乱戦になるのは間違いなく……一対多数の戦いとなる。
「しかし……聞いていた話ほど、コボルトはいないな」
もう直ぐで夕方になろうという時間だが、コボルトの群れに遭遇したのはこの戦いのみ。
「そうですね……もしかしたら、力を蓄えているのかもしれませんね」
「それは、アルゴンブルグを襲おうとしているということか?」
「か、確証はないですけど、今回は俺たちが見つけて逃がさないように追い詰めた? って形でしたから……その可能性は少しぐらいあるかと」
二人に発見されたコボルトたちはユウゴの真価に気付かなかったが、ウルの恐ろしさには気付いていた。
速攻で気付き、戦うのは不味いと判断して逃走。
しかし、ウルの足から逃れられる訳がなく……呆気なく挟まれる。
戦うしかないと覚悟を決めたが、絶望的な戦力を覆せることなく戦闘は終了した。
「……可能性としては、ゼロじゃないな」
そもそもコボルトはモンスターなので、人間とは敵対関係の存在。
人との戦いで生き延びたコボルトが人間に対して深い恨みを持ち、力を蓄えて人間に逆襲しよう……なんて考えても不思議ではない。
「その可能性があるとすれば、率いているのはジェネラルか……それともキングか」
「じぇ、ジェネラルにキングって、とんでもなく強い部類の奴らですよね」
「そうだな……間違ってはいない。だが、ヴァイスタイガーよりは弱い」
それは確かにそうだ。
基本的にはBランクのモンスターがAランクのモンスターにタイマンで敵うことはない。
だが、その言葉はユウゴにとって全く気休めにすらならない。
「そ、それはそうかもしれないですけど……普通に考えて恐ろしい敵なんですが」
「統率力といった点を考えれば、確かにヴァイスタイガーよりも恐ろしいな」
リーダー、ジェネラル、キングなどの上位種は同種族の統率力が優れており、仲間を強化する術も持っている。
(ジェネラルかキングがいるかもしれない群れを潰すんだよな…………えぇ~~~~~。さすがに今の俺では、まだ荷が重すぎるのでは?)
自分がキングやジェネラルを相手にするとは思っていない。
実際に戦うことになれば、それらの相手はウルが行う。
しかし、周りに残っているコボルトやその上位種は……ユウゴが相手を行うことになる。
(運良く……いや、運悪く遭遇してしまったら、速攻でオートエイムと攻撃魔法を使って数を減らすしかないな)
冷静に考えれば、チートスキルを使えばそれなりにやりようはある。
ただ……初めて武器を持ったコボルトと対峙した時や、グレートウルフを対面した時とは違う恐怖を感じるのは間違いない。
(それまでに、もっと強くならないとな)
コボルトの死体を解体しながら気合を入れ……うっかり毛皮を下手に切り裂いてしまった。
(……気合の入れ過ぎも良くないな)
心は熱く、頭はクールにと頭の中で繰り返し……今日もまた前に積極的に出て、少しでもウルとの差を縮めようと頑張った。
そしてそれから三日後……いよいよ昇格試験開始、ではなく……同じDランクの昇格試験に参加するメンバーとの顔合わせに向かった。
「ユウゴ、もし同じルーキーから喧嘩を売られたら、遠慮なく買って叩きのめせば良い。その方が、後々面倒が起こらなくなることもある」
そんなアドバイスをウルから貰ったが、ユウゴとしては同じルーキーたちと険悪な仲にはなりたくない。
なので、できればバチバチ喧嘩するのは避けたいところ。
心臓をバクバクさせながらギルドに入り、指定された時間より十分前に顔合わせをする部屋へと入った。
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