第46話 ホッと一安心

アルゴンブルグに着いた日は野営の疲れを取るために、訓練もすることなく休息に使った。


そして翌日……朝から二人で冒険者ギルドに向かう。


(あれだよな……多分、アリステラと同じことが起こるよな)


ある程度覚悟をしながら冒険者ギルドの中に入り……案の定、ギルドの中にいる冒険者たちの視線が直ぐに集まった。


「おい、あれって」


「そうだな……Bランクのウルだよな」


「あれ? パーティーを組んでたかしら?」


「ソロで活動してるって聞いてたけど……隣の男は誰だ」


時間的にまだまだギルド内に冒険者がいる時間帯ということもあり、多くの視線が二人に……というより、ユウゴに突き刺さる。


(……元いた世界では、絶対に体験しない状況だな)


多くの人の視線が自分に集まることなんて、学生時代は一度も体験したことがなかった。

元々体験したいとすら思っていなかったが……体験してみると、息苦しいという事実だけが解った。


「? ユウゴ、背中が曲がっているぞ。もっと胸を張れ」


「は、はい」


笑顔でユウゴを励ますウルだが、その親しい様子が……余計に同業者たちの視線を集める。


(もう少し面が良ければな~~~~……ベス様にそこら辺を頼めば良かったか)


ユウゴの顔は死ぬ前と比べて……年齢が若くなっているので、若干幼くなっている。

ただ……決して可愛い系の顔ではない。


勿論、イケメン系ではなく……超不細工ではないが、地味寄りな顔面。

そんなことに悩んでいるとユウゴたちの番となり、ウルが要件を伝える。


「私のパーティーメンバーであるユウゴがDランクの昇格試験を受けられると思うのだが、どうだ」


「しょ、少々お待ちください」


私のパーティーメンバー。

その言葉はしっかりと同業者たちの耳に入り、ウルのことをある程度知っている者たちは驚きを隠せないといった表情になる。


そして、ユウゴという男はいったい何者なのか……ギルド内にいる殆どの者がその事について話し合いを始めた。


(はぁ~~~~~……これから仕事だろ。そんなどうでもいい事について話し合わずに、さっさと仕事に行けば良いのに)


ユウゴの考えはまさにその通り。

その通りだが、冒険者でなくとも……そういった噂話は大好物。


「お、お待たせしました!!!」


受付嬢がユウゴの情報を確認し、上司に話を伝えた結果……参加出来るのか否かを尋ねた人物がBランク冒険者のウルであるという理由もあり、あっさりと参加出来ることが決定した。


「えっと、そちらのユウゴさんですがDランクの昇格試験を受ける資格が十分にあると判断されました」


「ッ……良かった」


ウルから絶対に大丈夫だと言われていたが、いざ本当に昇格試験を受けられるのかと不安になった。


結果は問題無しで受ける資格はあると判断され、それを知ったユウゴは小さくガッツポーズをした。


そして、パーティーメンバーであるユウゴがDランクの昇格試験を受ける資格があると解り、更に多くの考えが飛び交う。


「昇格試験を受けられるのか……年齢も若そうだし、結構いけるルーキーってところか?」


「かもな~~。でも、あんな美女とパーティーを組めるなんて、超羨ましいぜ」


「あんたねぇ~~~~、全く。まっ、女の私から見ても超綺麗なのは間違いないけどさ。けど、なんでまたあんな雰囲気がない男と……もしかして貴族の令息?」


親がウルに大金を積み、息子が一流の冒険者になるまでパーティーを組んで育ててやってほしい。


そんな流れでユウゴはウルとパーティーを組むことになったのではないか……という考えが、今のところ有力な候補として上がった。


(貴族の令息って、俺にそんな高貴さがある訳ないじゃん)


耳は悪くないので、話の節々は耳に入ってくる。


もしかしたらユウゴは貴族の令息なのではないか……そんな内容に対し、本人は若干呆れていた。


「ですが、Dランクの昇格試験は最短で五日後に開始されますが、大丈夫ですか?」


「あ、はい。大丈夫です」


準備期間としては確かに短い。

短いが、野営経験もあるのでユウゴ的には明日直ぐに、などでなければ問題無し。


「かしこまりました。それでは三日後の十時までにギルドへ来てください」


受付嬢がユウゴの昇格試験参加を確認し、これでユウゴは五日後に昇格試験を受けることが決定した。


「ユウゴ、今日はどうする。依頼を受けるか」


「……今日は適当にブラブラするで良いんじゃないですか」


「そうか、ならそうしよう」


適当に森の中に入ってモンスターを狩る。

今日の予定が決定した二人はあっさり冒険者ギルドから出ていくが……意外にも上下関係がなさそうな雰囲気に、二人はいったいどういった関係なのか……二人が去ってからも色んな憶測が飛び交った。


ただ……アリステラの時と同じく、まだEランクのルーキーにも拘わらずウルの様な強く美しい冒険者とパーティーを組んでいる事実に嫉妬する同じルーキーがいた。


「……本当に強いのか? あいつ」


二人が去った後に、五日後の昇格試験を一緒に受けるギルがポロっとそんな言葉を呟いた。


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