第40話 駄目になってしまう
Cランクのモンスターを倒したお祝いということで、いつもの宿の夕食とは違い……少し高級な店で夕食を食べ……ユウゴはとても幸せだった。
勿論、夕食代はウルの奢り。
(はぁ~~~~、つい一杯食べてしまったな)
ウルが奢ってくれるというのは分かっていたので、遠慮せずにがっつり食べた。
本当は少しぐらい出そうと思っていたが、そこはウルがきっぱりと拒否。
今日のメインはCランクモンスターをソロで倒したユウゴなのだと断言され、有無を言わせない圧に負けた。
「ユウゴ、明日は野菜を買いたいんだが良いか?」
「分かりました」
翌日、直ぐに……という訳ではないが、数日後には新しい街に出発する予定。
ユウゴはこの世界の事情に全く詳しくないので、行き先はウルに全て任せるつもり。
ただ、中に入れた物の時間を止められるチート性能を持つアイテムボックスがあるので、野菜などを入れていけば、鮮度を保った状態でいつでも料理に使える。
日本ほど栄養バランスなどに詳しくない世界だが、それでも食事はバランス良く食べておいた方が健康に良いという知識はある。
(俺も何か買っておいた方が良いかな……いや、特に必要ないか?)
アリステラに来てから少々使ったが、まだポーションやマジックポーションには余裕がある。
ミドルやハイに関しては一つも使っていないので、大怪我をした時の治療の準備も問題無い。
(……腕力増強や、脚力増強のポーションは買っておいて損はない、かもな)
お値段はかなりのものだが、それでも通常の強化系スキルよりも大きな効果を得られる。
物によっては翌日筋肉痛に……もしくは、使用して効果が終わった後にすぐ反動が現れるポーションもある。
ある意味ユウゴのチートスキルなどと同じく、奥の手になる道具。
ランクが低い物でもそれなりのお値段がするので、ルーキーにはまず買えない代物。
だが、ユウゴはアイテムボックスのお陰で大量の素材をギルドに売却でき、本日売却したグレートウルフの素材のお陰で懐が非常に潤った。
なので、身体強化系の増強ポーションを買ったところで、そこまで財布に大きなダメージにはならない。
そして翌日……二人は予定通り朝食を食べ終えてから街に繰り出し、野営中に必要な物を買い始めた。
「……これとこれと、これを」
「まいど!!」
野菜の目利きには慣れており、少しの間ジッと観察し……見事に良質な野菜を購入。
(ん~~~~~……どれが良いのか、全く分からないな)
それなりに自炊はする方だったが、野菜を買う時には腐ってるか腐ってないかしか確認していなかったので、どの野菜が他のと比べて良質なのか……なんてことは一ミリも分からない。
「ウルさん、ポーションとかが売っている店に行っても良いですか」
「あぁ、構わないぞ」
お目当ての野菜は買い終え、軽く調味料も買ったのでウルの用事は終了。
今度はユウゴの用事を済ませる為に……ウルがお勧めの店へと案内。
(雰囲気がある店だな)
店内に入ると、それらしい物がたくさん売っており……初めて武器屋に入店した時と同じく、少しの間目的を忘れて置かれている商品たちに見入ってしまった。
「ユウゴ、どういった商品を買うつもりなんだ?」
「あっ、はい。えっと、増強系のポーションを買おうかと思って」
「増強系のポーションか……まぁ、持っておいて損はない、か」
「一応奥の手になるかと思って」
サイキックやオートエイム、状態異常魔法などなど……様々な奥の手を持っているが、単純に肉体を強化する術……そういった類の奥の手を持っていれば、状況によってはベストな切り札となる。
(今は肉体面で言えばウルさんがいるからあれだけど、もしかしたら必要になる時が来るかもしれない)
ゲームでもそういった強化系の道具を持っていたことで、ピンチを切り抜けたことがある。
「私もいくつか持ってるぞ。全てダンジョンで手に入れた物だが」
「だ、ダンジョンって……あのダンジョンですか!?」
「? 多分、そのダンジョンで合っていると思うぞ」
誰が創り出したのか分からない……突然、どこかに生まれ……核と思われるコアを潰してしまうと、消えてしまう人を誘う魔境。
「宝箱の中から手に入るからな……いくつかいるか?」
「えっ……いや、その、遠慮しておきます」
ウルとしては、昔他の冒険者とダンジョンを潜っていた時にそこそこ手に入り、ギルドで売ることもあったが……いくつか持っていても良いだろうと思い、アイテムバッグの中に
入っている。
特別欲しいと思っていた物でもなく、そこまで特別扱いしてもいないので……本当にいくつかユウゴに譲っても良かった。
だが、そこはユウゴのプライドが断り、自分の金で身体強化と脚力強化の増強ポーションを一つずつ購入した。
(ウルさんは……もしかして、人を甘やかすのが好きなのか?)
ウルにそんなつもりがなくとも、ユウゴは思わずそう思ってしまうほど……ウルの行動から優しさを感じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます