第35話 思いが追加プラス加速
ユウゴが子供のように置かれている武器や防具に見惚れている間、ウルは真剣にユウゴに合いそうなロングソードを探していた。
(魔法を五属性、全て扱えるというのを考えると……中々決まらないな)
実戦では風魔法を使用することが多いが、今のところどの属性が一番得意なのか……本人すら解っていない。
ただ、ウルもユウゴが実戦でよく風魔法を使用することは覚えていた。
(……これなんて良さそうだな)
ウルが手に取ったロングソードの名は疾風。
風属性が付与された魔剣であり、ランクは四。
一流の職人が造った力作であり……正直なところ、ユウゴが扱うにはまだ早い。
脚力強化と修復の効果が付与されており、魔力を込めれば風の魔法スキルがなくとも風刃と風突が使えるようになる。
かなりの高性能を持つ一品。
ユウゴの身体能力を考えると……割とスピード重視なため、相性もマッチしている。
「ユウゴ、ちょっと良いか」
「はい! なんです、か……ウルさん、そのロングソードはなんですか」
まだまだパッと見で目利きが出来るほどの目は持っていないが、それでも普通の剣とは違う。
それだけでは経験が浅いユウゴでも分かった。
「君に合うロングソードだと思ってな」
「そ、そうなんですね………………ウルさん、このロングソードは俺の手に余りますよ」
魔眼の鑑定を使い、ウルが持つロングソードの詳細を視たユウゴは、若干汗をダラダラ流しながら答えた。
風の魔剣であり……脚力の強化と破損しても魔力を注げば修復する効果。
加えて、少し魔力を消費するだけで風刃と風突が放てる優れもの。
そんな業物……自分にはまだ早い。
早過ぎると断言出来るユウゴ。
ウルとしても、ユウゴが今すぐ疾風の性能を十全に活かせるとは思っていない。
「ユウゴ、なにも今すぐ完璧に扱える必要はない。だが、このまま成長し続ければ遠くない内に扱えるようになるのは間違いない」
「っ……そ、そう言って貰えるのは嬉しいですけど」
ファストラーニングがあるので、強くは否定しない。
「因みに、それ……おいくらなんですか」
「……金貨六十枚だな」
「っ!!!!????」
ユウゴはこの世界の貨幣価値は既に勉強済み。
日本円に直すと、金貨一枚で一万円。
つまり、疾風のお値段は日本円で六十万円となる。
(た、高過ぎ……ではないんだよな)
疾風の性能を考えれば、決して高過ぎる値段ではない。
だが、日本で生活していた時……ユウゴはまだ大学生。
家が超金持ちという訳でもなかったので、そんな大きな買い物は一度もしたことがない。
「ウルさん、俺……金貨六十枚も持っていませんよ」
「安心しろ。少し前に言ったが、今日は私の奢り……プレゼントだ」
酒を奢る的なノリのウルだが……パーティーメンバーとはいえ、やはりタダで高価な物を頂くのは気が引ける。
とはいえ、ウルもエリクサーの代金がユウゴのパーティーメンバーになることで解決したとは思っていない。
「…………分かりました。大切に使わせてもらいます」
「うむ。実戦で存分に使ってくれ」
疾風は重さ、長さに関しては丁度ユウゴにとって扱いやすいサイズだったこともあり、購入を即決定。
こうしてユウゴはチートスキルの他に、中々高性能な武器を手に入れた。
(……いや、本当に早く強くならないとな)
元々ウルの足を引っ張らないようにするため、早く強くならなければという思いはあった。
だが、ここで疾風を扱うに相応しい技量を身に付けなければという思いも追加された
ウルは少しでも自分を助けてくれたユウゴに恩を返せて満足しており、ユウゴもウルからのプレゼントが重荷だとは思っていない。
思っていないが……早く強くならなければというプレッシャーは追加された。
ウルとしては防具も少し買ってあげたいところだったが、さすがにそこまでしてもらう訳にはいかないと、丁重にお断りした。
(ウルさんの方が先輩だから、色々と良くしてもらうのは普通なのかもしれないけど……このままだとヒモになりそうだ)
昔は少し憧れる……羨ましいと思う部分はあったが、さすがにこの世界に来て……自分には十分強者になれる力があるにも拘わらず、ヒモになるのは決して大きくはないが……一応あるプライドが傷付く。
そんな訳で、ユウゴは翌日から早く強くならなければという思いが加速し、今まで以上に前に出て遭遇するモンスターと武器を使って戦うようになった。
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