第34話 そこまで悔しさはない
「つ、疲れた~~~~~~~~」
ウルとの模擬戦を十数回以上こなした後、ユウゴは疲労感を口にしながら腰を下ろした。
十回以上の模擬戦を行った結果……勿論、結果はユウゴの全敗。
チートスキルたちを使っていれば結果は少し変わっていたかもしれないが……それでも負けは負け。
そもそも、今回の訓練は武器や体技の技術を上げるためのもの。
模擬戦でチートスキルを使ってはい意味がない。
そして……まだまだ圧倒的なレベル差があるため、上手く虚を突いてチートスキルを炸裂させても、身体能力の高さ利用してあっさり打ち破られる可能性が高い。
(いやぁ~~~、もう……本当にこう……完膚なきまでに子ども扱いって感じだったな)
ウルはユウゴの為になる様にと、攻めと守りのタイミングや動きの速さ……力加減などを上手く調整していた。
そこら辺が上手くいき……戦いの中で、ユウゴがこれは会心の一撃だ!!! と思える攻撃を放つことが出来た。
出来たが……当然、それはあっさりと防がれる。
もしくは躱され、次の瞬間には心臓か喉元……額に刃先が突き付けられていた。
(まぁ、まだダリスを越えてはいないんだし、当然の結果だよな)
ここでユウゴは思いっきり顔に悔しさを出したりはしなかった。
勿論、少しぐらいは結局何も出来ずに負けたという結果に対し、悔しさを感じた。
ただ……自分の強味はそこではないと理解しているので、あまり悔しい思いが爆発することはない。
「おらおら、どうした!! そんなんで上に行けると思ってるのか!!!!」
「うぉぉおおおおおおッ!!!!」
少し離れた場所ではレンが先輩冒険者に胸を借り、必死な表情で食らいついていた。
その表情には当然……相手が先輩とはいえ、決定打を与えられない現状に対しての悔しさが現れていた。
(鬼教官……ではないのか? レンは本気で強くなりたいっぽいし……望むところか)
ウルは全く鬼教官といった雰囲気はなく、模擬戦の最中でも丁寧に教えていたが……それは単に、ユウゴが優秀ゆえに……教えられた箇所を直ぐに修正してしまうから。
必要とあらば、ウルもレンに胸を貸している冒険者と同じく、鬼教官になる。
だが、ファストラーニングが良い仕事をしているお陰で、ユウゴは留まることなく良いペースで一歩ずつ前に歩けている。
「ユウゴ、やっぱり君は凄い。凄いが……教える立場からすると、少し優秀過ぎて寂しいかもしれないな」
「は、ははは。それは生徒からすれば、嬉しい言葉ですね」
言葉にお世辞は含まれておらず、ユウゴの成長スピードには本当に驚かされている。
(一を聞いて十を知るではないが、一を聞けば完全に一を修正できている。訓練と実戦の差に戸惑うタイプとも思えないし……もう少しレベルが上がれば、Cランクのモンスターを相手にさせるか?)
冒険者になって一か月も経っていないルーキーが相手をするには荷が重過ぎるモンスターだが……ユウゴの成長スピードを考えれば、討伐は不可能ではない。
(まだ夕方前か……夕食まで時間はあるな)
訓練はここで終了。
木剣と木槍を木箱に入れ、ユウゴはレンや他のルーキーから向けられる視線に解放されたと喜びながら退出。
このまま宿に戻るのかと思っていたが……ウルからとある店に行くぞと言われた。
「ウルさん、俺は今のままで十分だと思うんですけど」
「その剣も悪くはないが、ユウゴの成長スピードを考えれば、直ぐに一流の腕に届く筈だ」
そう……ウルが向かおうとしている場所は、武器屋。
ユウゴのこれからを考えれば、現在使っている武器よりも上等なロングソードを買った方が良いと思った。
本人としては、いつか新しいロングソードが欲しいとは思っていた。
思ってはいるが、それでも高性能な武器を持つほど……自分の技量は高くない。
(褒めてくれるのは嬉しいけど……というか、そもそも大金を持ってる訳じゃないからな)
超高性能なアイテムボックスを持っているお陰で、レンの懐は一気に温かくなった。
とはいえ、現在の愛剣を越える性能を持つ武器を買えるかといえば……買えなくもないが、一気に懐が寒くなる。
ヴァイスタイガーの素材を売って手に入れたお金はパーティーの共有財産となったが、さすがにそこから新しい武器を買う金を引き抜くのは気が引ける。
確かにユウゴがエリクサーを使ったからこそ、ウルは三途の川を渡らずに済んだが、死力を尽くして格上の相手を倒したのは、紛れもなくウルの力。
「……やっぱり、俺にはまだ早いと思います」
「気にするな、金は私が出す」
「ッ!?」
余計に気にしてしまう。
恐れ多いと遠慮しようと思ったが……ウルの顔を見て、何を言っても無駄だと悟り……とりあえず口を閉じた。
そして十数分後、目的の武器屋へと到着。
「……すげぇ」
戦いとは無縁の生活を送っていたユウゴにとって、大量の武器や防具が並んでいる光景はまさに絶景。
子供の様な感嘆が零れ……一先ず入り口で棒立ちはよろしくないで、一通り商品を見ることにした。
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