第31話 それはミスを越えてただのアホ
ユウゴに向かって発動される筈のポイズンランスが……何故かポイズンスパイダーの方に向かって放たれた。
毒槍は見事に頭部を抉り、更には毒を注入。
毒系のモンスターだけあって、毒の耐性は持っているが……ポイズンランスの毒であれば、決してノーダメージとはならない。
(はは!!! こりゃ本当にチートだな!!!!)
ユウゴが咄嗟に使ったスキルはキャプチャー。
ベスから授かったチートスキルの一つであり、相手の魔法……魔法陣を乗っ取ることが可能なスキル。
今まで魔法を使うモンスターと戦ったことがなかったので、ぶっつけ本番となったが……中級のポイズンランスはギリギリ乗っ取りに成功。
ポイズンスパイダーも自身が放とうとしていた魔法が乗っ取られたとは分からず、もろに自身の攻撃を食らってしまった。
「はっ!!!!!」
そして千載一遇のチャンスを逃さず、ウルから貰ったアドバイスを活かし……脱力を意識しながら魔力を纏ったロングソードを上段から一閃。
剣や体に魔力を纏う技術はまだまだ一流には及ばないが、今回は集中力が高まっており、会心の一撃と呼べる攻撃を放つことに成功。
魔力の斬撃はポイズンスパイダーの頭を斬り裂き、そのまま体を一刀両断。
昆虫系のモンスターは体の一部が掛けた程度では問題無く動くが、さすがに体を真っ二つにされては動こうにも動けない。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「見事だ!!! 今の一撃は素晴らしかった!」
後ろで構えていたウルはユウゴが最後に放った一撃に感心し、賛辞を込めて拍手を送った。
「そ、そうですか……ありがとうございます」
「いや、本当に良い一撃だった。あの魔力による斬撃刃は、Cランクのモンスターにも通用する一撃だ」
「そ、そこまで良かったですか?」
「あぁ、勿論だ」
冒険者として大先輩であるウルにそこまで褒められると、少々照れてしまうユウゴ。
だが、手放しで褒めたのも束の間。
ウルは直ぐに戦闘中に気になったことを尋ねた。
「ただ……ユウゴ、もしかしなくても……ポイズンスパイダーが放とうとした魔法陣に何かしたか?」
「は、はは。流石にバレますよね」
「バレるバレないというより……ミスだとしても、あんな馬鹿な真似はしないだろう」
展開した魔法陣をうっかり自分の方に向けてしまう……そんなこと、まずあり得ない。
そんなことしてしまった日には……どうしようもないアホと認定されてしまう。
「まぁ……見た通りです。相手の魔法や、魔法陣を乗っ取ることが出来るスキルです。当然、限度はありますけど……現段階で、中級? の魔法ぐらいならなんとか乗っ取り可能ですね」
「魔法の乗っ取り、か…………そういったことが出来るマジックアイテムは知っているが、それを個人の力で出来てしまうスキルがあるとは……ますますユウゴが持っているスキルは壊れていると思わされるよ」
「ま、まぁそうですね」
チートスキルはぶっ壊れているからこそ、チートと呼ばれる。
だが、ウルは決してユウゴのスキルを否定的に捉えなかった。
「だが、強敵と二人で立ち向かう事になれば、ユウゴのスキルは非常に頼もしいよ」
「強敵というと、Bランクやウルさんが死にかけたヴァイスタイガーみたいなAランクのモンスターですか?」
「その通りだ。ユウゴの実力ではまだ一緒に前で戦うのは難しいが、それでも魔法陣や
魔法を乗っ取るスキルや、相手の動きを止めるスキルなどは充分サポートとして役立つ」
「そう、ですか」
だが、仮に強敵と戦うことになれば、ユウゴは相手の動きに眼が追い付かなければならない。
キャプチャーに関しては発動する魔法陣のランクの高さにもよるが、視界に移れば乗っ取りが可能……かもしれない。
しかし相手の動きを止めたり、一定方向に力を加えるサイキックはしっかりと相手の動きに眼が追い付いていなければ、発動しても不発に終わる可能性が高い。
故に、ユウゴが強敵との戦いに参加出来るのはまだまだ先。
とはいえ、それでもウルがユウゴのスキルを魅力的だと感じてしまうのも無理はなかった。
「よし、それでは解体に移ろうか」
まだ昆虫系のモンスターは一度も解体したことがなく、ウルに教わりながら少しずつ解体していき……終わるころにはあと少しで日が暮れる時間となった。
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