第28話 積極的に前に
「ユウゴ、どうする?」
「……俺がやります」
ウルの力におんぶだっこという訳にはいかないので、一先ず自分が戦おうと決めた。
ダッシュボアは既に戦る気満々の状態。
ユウゴが前に出ると勢い良く駆け出し、突進のスキルを発動。
発動時に脚力と、衝撃時の威力を増加。
単純にして少し厄介なスキル。
ただ……ユウゴとしては非常にやりやすいモンスター。
「よっ」
「ブッ!?」
「ウィンドアロー」
「ッ!!!??? …………」
レンと戦った時と同じく、脚だけにサイキックを使用。
一瞬だけ足の自由が奪われたダッシュボアは顔面から地面に激突。
その隙を狙って複数のウィンドアローを放ち、頭部を貫き……脳を破壊。
多少の攻撃であれば見た目よりも堅い皮膚で耐えられるが、さすがに脳を破壊されてしまってはもう動けない。
「……やはり、先日の模擬戦でレンがいきなり転んだのは偶然ではなかったか」
「相手の動きを止めるというか、力を加えるというか……そんな感じのスキルですね。魔力の消費が少ないんで、使いやすいスキルです」
「いやはや、それは羨ましいな」
相手の動きを妨害するにはもってこいのスキル。
スキルの存在をしなければ、敵対した相手に対して、十分初見殺しとして使える。
(素晴らしいスキルだが……やはり、魔法陣の展開スピードがかなり早いな)
分かってはいたが、改めて見ると驚かされる。
熟練の魔法使いであれば当たり前の技量かもしれないが、魔法を覚えたての者が行う速度ではない。
「解体は俺がやるんで、見張りをお願いしても良いですか」
「勿論だ」
まだまだ解体の腕はプロと呼べないので、ユウゴは積極的に解体に参加。
とはいえ、その腕前はやはりルーキーの中では頭一つ抜けている。
「終わりました」
「よし、行こうか」
解体が終了し、ダッシュボアの肉は食用として申し分なく、毛皮や骨は装備の素材としてギルドが買い取ってくれるので、全て回収。
「せいっ!」
そして二時間後、ようやく二体目のダッシュボアを発見し、ウルが頭部を一刀両断。
勝負はあっさりと終了。
(ん~~~~~……上手く捉えることが出来ても、あんなに綺麗に斬れるか? 多分無理だろうな)
ウルの太刀筋に見惚れるユウゴだが、道中ではダッシュボア以外のモンスターと遭遇した場合、積極的に前に出て倒している。
サイキックに頼ってばかりでは駄目だと思い、素手やロングソードを使って倒す。
自分はまだまだと思っているユウゴだが、ウルから見れば十分に余裕がある戦い方をしていた。
「ユウゴは戦いだけではなく、料理も得意なのだな」
「得意って訳じゃないですけど……まぁ、人並程度にはって感じです」
一応一人暮らしでは節約の為に軽く自炊をしていたので、切る焼く煮るぐらいは問題無く行える。
ウルも今でこそ人並程度に出来るが、最初はまだまだ苦手意識があり……お世辞にも上手くはなかった。
(うん、やっぱりボア系の肉は美味いな)
味付けは塩だけだが、それでも十分に満足出来る味。
「そういえば、ユウゴは何属性の魔法が使えるんだ? ちなみに私は風、雷、火の三属性だ」
「俺は火、水、風、土、雷の五属性ですね」
「……五つとも扱えるのか」
「はい、こんな感じで」
ユウゴは近くの木に向かって五属性の魔法陣を展開し、それぞれの矢を放った。
「今、サラッと凄いことをしたな」
「そうなんですか?」
「五属性の魔法が使えることも凄いが、それを同時に発動する技術は相当難しいと聞いたが……魔法に関しては良い師に恵まれたのか? いや、良い師に巡り合えただけで習得出来る技術ではないと思うが」
「まぁ、両方ともそれなりだったなのかもしれません」
良き師ではないが、良き神には巡り合えた。
そして生前のユウゴは割と器用だったこともあり、そこら辺も関係している。
「俺としては、魔法がここまで扱えるのは恵まれた方だと思いますけど、武器に関してはウルさんが持ってる刀にちょっと憧れますね」
「ふふ、そうか。その気持ちは解らなくもないぞ。私も父が扱う姿に憧れ、頼み込んで教えてもらったんだ」
一撃必殺、一刀両断。
そんなイメージがある刀……勿論、扱いが難しいということはユウゴも解っているので、そう簡単に手が出せない。
(いつか実戦で使ってみたくはあるけど……まずは買えるだけのお金を貯めないとな)
そういった部分をウルに世話になる訳にはいかない。
男としてのプライドではないが、さすがに自分が欲しいと思った武器ぐらいは自分で買いたかった。
(……ユウゴは呑み込みが早い。その吸収力の高さを考えれば、割と早い段階で振れるようになるかもしれないな)
ユウゴがモンスターとロングソードや体術で戦う際に、ウルは先輩らしく軽く助言を送る。
アドバイスされたユウゴはそれを鬱陶しがることなく、頭の中で何度も復唱しながら実戦で試す。
一度で成功することはないが、ウルから見てその辺りの吸収力は並ではなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます