第27話 朝からバクバク

「ユウゴ、起きろ。もう朝だぞ」


「……お、おはようございます!!!」


視界にウルの顔が入り、ユウゴは跳び起きた。


(一緒の部屋で寝るというのは分かっていたけど……こういう起こされ方をすると、心臓に悪いな)


ウルは化粧など一切していないにもかかわらず、その美しさは超一級品。

朝一からその顔面を近づけられると、一気に心臓が跳ね上がってしまう。


なるべく自分の力で起きられるようにしなければと思うが、タイマーなどがないとユウゴは起きられないタイプなので、それは難しかった。


「朝食を食べたらギルドに行って依頼を受けようと思ってるが、体調は大丈夫か?」


「そうですね……特に問題ありません。というか、ウルさんこそ大丈夫なんですか。一応、昨日ヴァイスタイガーとの戦いで死にかけてたと思うんですけど」


「それに関してはユウゴが使ってくれたエリクサーのお陰で問題無い。寧ろこれから多数のモンスターと戦っても大丈夫なぐらい元気だ」


ウルの言葉に嘘はなく、普通ならあの状況から奇跡的に生き延びたとしても、諸々のダメージで翌日は基本的に動けない。

動くことが出来ても動けないのが現実。


ただ、エリクサーの効果がそういった疲れなども吹き飛ばしてしまった。


「まぁ、さすがにヴァイスタイガーの様なAランクモンスターとの戦いは避けたいがな」


「は、ははは。それは同感です」


ヴァイスタイガーが生きている状態は見ていないが、死んでいたとしても圧倒的な存在感を放っていたのを覚えている。


(いくら俺が大量のチートスキルを持ってても、さすがにAランクのモンスターはちょっとな……サイキックで動きをほんの少し止められたとしても、止めを刺せる火力がないからな)


だが、今のユウゴであればDランクモンスターであれば複数体相手でも、倒せないことはない。


着替え、朝食を食べ終えた二人は早速ギルドの方へと向かった。


「やっぱり、冒険者って朝ギルドに……仕事場に向かうのは早いんですね」


現在の時刻は八時過ぎ。

日本にいた時は、一限がなければ確実に爆睡してる時間帯……もしくは、オールでゲームして今から寝ようと考え始める時間。


「いや、普通はもっと早い段階で宿を出て、ギルドに向かうものさ。そうしなければ、割の良い依頼は全て取られてしまう」


「あぁ~~~~……なるほど」


ユウゴの頭にはバーゲンセールに群がるおばちゃんたちの光景が浮かんでいた。


「だが、私たちの実力なら特に依頼を選ばずとも金は稼げる。なにより、ユウゴのアイテムボックスのお陰で他の者たちと比べて断然稼げる」


「実力はまだまだですけど、そっちは有能なんで存分に使ってください」


先日ウルが倒したヴァイスタイガーの素材も、現在は劣化を抑える為にユウゴのアイテムボックスの中に入っている。


そして二人がギルドの中に入ると、当たり前だが……多くの冒険者の視線が集まる。


(……慣れてかないとな)


仲間になった人物の容姿レベルが高過ぎるが故、今の様な状況に何度も遭遇することは間違いない。

それは目に見えている為、慣れた方がユウゴのためになるのは確かだった。


だが、既に視線を向けられることに慣れているウルは堂々と進み、クエストボードの前に立ち、手頃なクエストはないかと探し始めた。


「ふむ、どれにするか……ユウゴ、これとこれはどうだ?」


「依頼って二つ一緒に受けられるんですか?」


「あぁ、特に問題はないぞ」


期日までに達成出来なければ当然ペナルティがあるが、二人の強さを考えれば倒すことに関しては問題無い。


「そうなんですね……なら、受けても良いかと」


「そうか、では早速受付に行こう」


ウルが手に取った依頼書はダッシュボア二体の討伐依頼と、オーク一体分の肉が欲しいといった依頼。


討伐依頼に関しては、討伐の証明になる素材があれば依頼達成となるが、肉一体分などと書かれている場合……多少の誤差は許されるが、しっかり一体分の肉がなければ依頼失敗となる。


(オーク一体分の肉って依頼に関しては、アイテムボックスが非常に役に立つな)


ユウゴのアイテムボックスは容量が無限なだけではなく、中の時間が完全に止まっている。

そのため、中に入れた肉の鮮度は保たれたまま……ギルドに引き渡すことが出来る。


「この二つを受ける」


「かしこまりました。ダッシュボア二頭の討伐依頼と、オーク一体分の肉の限定依頼ですね」


ちょろっと注意事項について喋った後は、無事に依頼は受理され……二人は早速街を出てモンスターが生息する森の中へと突入。


冒険者の中には、ギルドの内の販売所に売っているポーションなどを買って準備を整える者もいるが……二人には全く必要がなかった。


「ユウゴ、幸先が良いな」


「そうみたいですね」


標的の探索を始めてから十数分後、二人はいきなり一頭のダッシュボアと遭遇した。


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