第22話 それ、痛いよな~~~
「おいおい、手に持ってる木剣を全然使わねぇじゃねぇか。飾りか?」
「飾りかもしれねぇが……いや、分からねぇな」
「確かに分からないな。ただ、魔弾の的確性は中々のものじゃないか?」
「だな。あれだけきっちり当てられたら、中々前に進めないだろ」
同じルーキーたちはレンの応援に夢中だが、ベテラン陣はユウゴの力量に対し、徐々に気付き始めてきた。
「チッ!!! 得物持ってんなら、それで勝負しろよ!!!!」
「そんな安い挑発には乗らないぞ」
レンにとっては挑発ではないのだが、ユウゴには接近戦を誘っている様に聞こえた。
そしてユウゴは、まだまだレンには得物を使った接近戦で確実に勝てる自信はない。
という訳で、遠距離攻撃を使い続けて着実にダメージを与えていく。
ベスのお陰でレベルの一の状態から魔力量はバカ多く、異世界に来てからレベルアップもしているのでバカスカ魔力の弾を発射しても、魔力切れでぶっ倒れることはない。
(にしても……本当にオートエイムは有難いスキルだな)
ユウゴが発射した魔力の弾は直線に飛ぶだけではなく、予め頭に思い描いたルート通りに動く。
故に、弾潰す武器が二つあるレンでも、完全に捌き切るのは難しい。
殺傷能力が高くないので、当たれば深手を負うということはないが……それでも徐々に徐々にダメージは蓄積……同じ場所に数度当たれば、衝撃で骨に罅も入る。
(クソッ!!!! 鬱陶し過ぎる!!!!!)
最初はたかが魔力の弾丸がなんだと楽観していたレンだが、現状が一分ほど続くと……流石に楽観視出来なくなっていた。
既にレンは身体強化のスキルを使用している。
ただ、それでも中々前に進むことは出来ない。
弾が一直線に飛んでくるのであれば、加速と予測を合わせて一気にユウゴへ接近することも不可能ではないが……曲芸の様な弾の軌道がそれを許さない。
下手に予測して動こうものなら、更に戦況が悪くなる可能性がある。
ユウゴは敢えてレンの頭や股間は狙っていないが、レンが一気に前に出ようものなら……弾の射線上に急所が重なる……かもしれないので、動かないで的になり続けてくれる方が有難い。
(こっちの方が、こいつを潰さずに済みそうだしな)
この勝負……ユウゴは基本的に負けるつもりはない。
だが、負ける可能性が高い接近戦に引き込まれた際……今みたいに余裕を持って戦える自信がない。
うっかりチートスキルを全開で使い、大怪我を負わせてしまうかもしれない。
「…………クソがッ!!!!!」
「ちっ。そうくるか」
レンは何処に被弾しても問題無いように全身に魔力を纏い、被弾覚悟で脚力強化まで使用して突進。
勿論、ある程度弾の動きは予測しながらだが……それでも何発かは被弾する。
しかし幸いにも顔面や股間には当たらず、魔力を纏っている事で被弾してもダメージは少ない。
(……他にも頼れるチートがあったな)
必死な形相で突っ込んでくるレンをどう対処しようか……一瞬だけ悩んだが、直ぐに名案を思い付いたユウゴは、直ぐにそれを実行。
「うぉ!!?? ぐばっ!!!!????」
「隙あり」
「……しょ、勝者はユウゴ!!!!」
被弾覚悟で前進したレイが……いきなり転び、頭から地面に大激突。
その隙を突いてユウゴは頭に剣先を突き付け……誰の目から見ても今回の模擬戦は、ユウゴの勝ちだった。
「な……ま、待て!!! 今のは!!!」
「今のは、なんだよ。今回の勝負は模擬戦なんだから、俺の勝ちだろ。真剣勝負だったらどちらかが行動不能になるまで戦い続けるのが普通かもしれないけど、今回は殺し合いじゃないんだ。だから俺の勝ち」
「ぐっ!!! うぅ……クソッ!!!!!!」
レンが向かって来る途中で、ユウゴは足だけにサイキックを使用し、動きを止めた。
そして、一瞬だけ足を止めたのが要因となり……上半身から足首までだけはそのまま前に進んだ結果……先程の様に、顔から地面に激突するという悲惨な結果になった。
「終わりました、ウルさん」
「あぁ、お疲れ様。と言っても……そんなに手こずる相手ではなかったか?」
「いえ、そんなことありませんよ。完全に接近戦に持ち込まれていたらヤバかったと思うんで」
前半はレンが身体強化のスキルを使わずに戦っていたお陰で、全ての攻撃を躱す……もしくは避けることで対処出来た。
だが、身体強化と脚力強化を使い……更には全身に魔力を纏って強化していれば、接近戦では完全に分が悪かった。
「まぁ……強いて言えば、俺の手札が多かったから勝てたって感じですね」
「謙虚だな、君は」
「いえいえ、ただの事実ですよ」
娯楽の神がこれほどかとチートスキルを貰っていなければ、真剣勝負を初めてまだ一か月も経っていないユウゴがルーキーの中では優秀な部類に入るレンに勝てるわけがなかった。
どう考えてもズルいと思われる勝ち方かもしれないが……チートを使うことに抵抗がないユウゴにとっては、当たり前の勝ち方だった。
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