第20話 妥当な提案
「っ、そこのヒョロガリのお前!! 自分がウルさんとパーティーを組むなんて、どれだけおこがましい事か分かってるんのか!!!!」
レンの声は冒険者ギルド内に大きく響いた。
その声にうるさいと思う者はいたが、概ね考えていることはレン同じだった。
実力はまだ十七歳でありながら、ソロでAランクのモンスターをほぼ相打ちとはいえ、倒すほどのもの。
顔もスタイルもそこら辺の女性とは比べ物にならない程の一級品。
そして人格まで優れており、まさにパーフェクト・オブ・パーフェクト。
(……まぁ、普通に考えてこいつが言ってることは間違ってないんだろうな)
ユウゴはレンの言葉を否定しようとは思わない。
だが……ユウゴからすれば、詳しい内容話せないが……それでも自分はウルとパーティーを組めるだけの価値を、ウルに提供したと思っている。
「レン、いい加減にしないか。先ほども言ったが、ユウゴは私の恩人だ」
「だからって……わざわざパーティーを組む必要なんてないでしょ!! それ相応の金とか渡せば良いだけじゃないですか!!!」
「いや、それはだな……」
この言葉も……人それぞれかもしれないが、間違ってはいない。
わざわざ冒険者になりたての若造とパーティーを組まずとも、金を渡して解決すれば良い。
最初はウルもそのつもりだったが、ユウゴが自身を助ける為に使った物が物な為に、そう簡単にサクッと渡せる金額ではないのだ。
「なぁ、あんたは俺がウルさんとパーティーを組むのが気に入らないんだろ」
「あぁ、気に入らねぇな!!! さっさとそこから離れろ!!」
「そう言われてもな……俺はウルさんとパーティーを組むんだし」
ユウゴの中で、まだ出会って一日も経っていないが、ウルは信用出来る人物だと思っている。
その他にも自身のパーティーメンバーにしたい要素がバッチリ当て嵌まっているので、横から色々と言われたぐらいで手放すつもりは全くない。
「だから、俺と模擬戦しようよ」
「はっ!? どういうつもりだ」
「あんたは、俺が自分より弱い人物だと思ってるから、俺がウルさんとパーティーを組むのが嫌なんだろ」
理由はそれだけではないが、概ねユウゴの言葉は合っていた。
「だからさ、今ここで俺があんたより強いってのを証明する。そんで俺が勝てば、もう黙ってくれ。鬱陶しいから」
「ッ…………俺が勝てば、どうするつもりだ」
「そうだな……俺がウルさんを助けたことに変わりはないから、他の形で恩を返してもらおうかな」
受けた恩を返さなければ、それはそれで冒険者として恥。
その恥をウルに背負わすわけにはいかないと思い……レンはユウゴの提案を受け入れた。
「良いぜ。でも……ボロボロに負けて醜態晒しても知らねぇからな」
「はいはい、分かった分った……ということで良いですか、ウルさん」
「……まぁ、仕方ない、な」
ウルとしては、正直恩を返す形はユウゴとパーティーを組むことの方が良い。
もしかしなくても、借金してユウゴにエリクサー代を返す。
それか……他の形で体を使って恩を返すことだってある……かもしれない。
ただ、ウルは実際にユウゴがモンスターと戦う様子を見ており……確かに冒険者としては、まだユウゴは本当になりたてのけつに殻が付いたひよこ。
それに比べてレンはウル程ではないが、ルーキーの中ではかなり期待されている部類にあてはまり……既にランクはD。
ルーキーの中ではかなりの速さでランクを駆けあがっている。
その原動力として、当然憧れの冒険者であるウルに追いつきたいという思いがある。
そんな思いをご本人は知らず、ユウゴがレンに勝つ可能性は充分にあると思い、模擬戦を止めようとはしなかった。
そして可能性は高いと思っているのはウルだけではなく、ユウゴ本人も同じ事を思っていた。
(一瞬だけ視たが……まぁ、多分なんとかなるだろ)
ユウゴはバレないように、話してる最中に一瞬だけレンのステータスを視た。
確かに自分より身長が少し高く、筋肉に至ってはがっつり付いている。
加えてレベルは自分の三つ上。
現時点で自分より勝っている点はいくつかあるが……それでも、覆せないほどの差とは思えない。
(とはいえ、少し緊張してきたな)
模擬戦を行うために訓練場へ移動すると、ギルド内にいた冒険者が……全員、二人の模擬戦を視る為訓練場へとやって来た。
そして……冒険者たちはどちらが勝つか賭けを行っていた。
いや、冒険者だけではなく、暇なギルド職員達も非常に面白い状況だと思い、遊び半分で懐から金を取り出して賭けた。
(こんなに人に囲まれるのは初めてだな……なんか、殆どあのレンって奴への声援と俺へのバッシングばかりだけど……ま、模擬戦には勝てるだろ)
自分への声など気にしなくて良い。
ただ……ウルとパーティーを組む為に、目の前の狼人を倒せば良い。
そう思い、気合を入れなおしたユウゴだが……賭けが行われていると分り、賭けを仕切っている人の元まで行き、とりあえず自分の勝利に銀貨一枚を賭けた。
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