第18話  胸が熱く高鳴る

(……既にルーキーたちより断然強い)


まだ時間に余裕があったので、二人は少しモンスターと戦いながらゆっくりと街へ向かった。


そんな中、遭遇するモンスターは全てユウゴが相手をした。


傷が治り、失った血を回復したとしても……万が一の可能性があると思い、ユウゴは自分から前に出て戦い続けた。


他にも、今の自分より圧倒的に実力が上であるウルに、恩を返す以外にも自分とパーティーを組む価値はある。

そう示したいという気持ちがあり、既に十以上のモンスターを倒している。


(解体もまだ少しぎこちないところがあるけど、下手な素人よりはよっぽど上手い……誰かに指導を受けていた……はず)


まだお互いについて、そこまで話し合っていないので解らないことだらけ。

ただ、出会ってからパーティーを組むと決めた数時間の間で、まだ冒険者になっていないにも関わらず……ルーキーを越える力、技術を持っていることだけは確実だった。


(特に相手の動きを止めるスキル……そこまで魔力を消費していないように思える。それに、魔法の展開速度がかなり速い。加えて、ロングソードの扱いも悪くない)


パーティーを組むのは、ユウゴがそれなりの冒険者になるまでの期間……そう思っていたが、案外ずっとパーティーを組むのも悪くないと思えた。


「ユウゴは……本当に強いな。まだ冒険者になっていないというのが嘘のようだ」


「まぁ……色々とありまして。剣に関しては、元冒険者の人に扱いを教えてもらいました」


「なるほど。であれば、冒険者になる前にある程度の腕を持っているのも納得だ」


うんうんと頷くウルだが、ユウゴが習い始めて二十日程度で今の技量まで成長したと知れば、驚き転ぶ……かもしれない。


そして日が暮れる前に二人はアリステラへと到着。


ユウゴは自身の身分を証明する証明証を持っていないが、目的が冒険者になるという理由であっさりと中へ通された。


元々村出身の若者が冒険者を目指し、そこそこ大きな街にやって来るというのは良くある流れ。


傍にいる人物が未来をその実力はAランクに勝るとも劣らないと言われている、Bランク冒険者のウルなので、門兵も特にユウゴを取り調べたりすることはなかった。


(……ザ・異世界の街並みって感じだな)


初めて街らしい街の中に入り、村を訪れた時とは別の衝撃を受けた。


「こういった街に来るのは初めてか?」


「はい、初めてです。俺にとっては、十分……都会ですね」


死ぬ前に生活していた日本と比べれば雲泥の差だが、この世界で生きている者として答えるのであれば……ユウゴにとってアリステラという街はまさに都会。


事実、アリステラは周辺の街と比べればトップレベルで栄えている。


なので、ウルの様な高ランクの冒険者がフラっと訪れることは珍しくない。


「ふふ。確かにそれなりに栄えている街ではある……でも、この街よりももっと賑やかで、栄えている街もあるよ」


「それは楽しみですね」


ユウゴはアリステラでセカンドライフを終えるつもりはない。

これから他の街をたくさん見て回りたい。


そういった意味でも、ウルの様な大先輩と一緒に行動出来ることは有難かった。


「さて、とりあえず今日の内に登録だけでもしておこうか」


「そうですね」


冒険者や依頼人が訪れる場所……冒険者ギルド。


(ヤバい、凄くドキドキするな)


目の前に……本当にそれらしい雰囲気を放つ建物を見て、ユウゴの胸は熱く高鳴っていた。


「良い笑みだ」


「っ。わ、笑ってましたか?」


「あぁ、とても楽しそうな笑みを浮かべていたよ」


ユウゴは無意識の内に口角を上げていた。

それは誰の目から見ても明らかだった、当の本人は全く気付いていなかった。


「さぁ、中に入ろう」


「はい」


ウルの後を追う様にギルドの中へ入ると……中もそれらしい雰囲気が漂っており、更にユウゴの胸を熱くさせる。


(本当にこんな場所にこれたんだな……凄い嬉しいのは嬉しいんだけど……なんか、凄い見られてる気が……いや、どう考えても気のせいじゃないよな)


ユウゴの服は……これまたベスが気を利かせて、この世界の服に変えていた。

という訳で、ユウゴが着ている服の珍しさ視線が詰まっているのではなく……隣に立っているウルのせいでユウゴにまで無数の視線が集まっていた。


(こうまで視線を集まるとは……もうあれだな、アイドルって感じだな)


ウルは冒険者としての実力もさることながら、その容姿とスタイルは貴族の令嬢達にも負けない。

そんなウルに憧れる冒険者は男性、女性とはず多い。


だが、基本的にソロで活動しているはずのウルの隣に、同年代らしき男が立っている……そうなれば、ウルに憧れる冒険者たち……特に憧れるより、惚れているに近い男達が黙っていない。


(……パーティーを組むんだし、この感覚にはさっさと慣れないとな)


そうこうしているうちに、ようやくユウゴの番がやって来た。


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