第17話 要望にドキドキ

エリクサー……それは基本的に人の手では造ることが出来ない、トップクラスの回復薬。

マジックアイテムを造る錬金術師の中には、敬意を込めて霊薬と呼ぶ者もいる。


そのランクはマジックアイテムの中でも当然トップクラスであり、ランクは八。


殆どダンジョンの宝箱からしか手に入らない……誰であっても立場関係無く、文字通り喉から手が出るほど欲する物。


(そ、そうか……え、エリクサーを使ってくれたのか)


勿論、自身を死の淵から助けてくれたユウゴに関しては感謝しかない。


だが……超高級回復薬であるエリクサーを何で返せば良いか……ウルはパッと思い付かなかった。


一番はお金を払って返すという方法があるが……金遣いが荒い方ではないウルでさえ、エリクサー代をサクッと払える程の貯金がない。


傷だけではなく、普通のポーションにはない効果……病気まで治してしまうので、大貴族が大金を払ってでも手に入れたい。

大貴族だけではなく、王族ですら同じ思いを持つ。


(ぶ、武器を売ればな、なんとかるか? いや、しかしそれは……となると。か、体で……は、払うしかないのか!!??)


綺麗な銀髪のストレートヘアを持ち、スタイルは超一級品。

容姿もユウゴが今まで見てきた中で一番と言える程、レベルがかなり高い。


今までウルの容姿やスタイルに惹かれてナンパ、もしくは強引に手を出そうとした者は多いが……全員、綺麗に返り討ちにされている。


勿論、今まで彼氏などおらず……綺麗な処女。

ウル本人は基本的にそういった形で恩を返したくないが、エリクサーの代金というとんでもない大金が……おそらく支払えない。


そして、自分を助けてくれた男は自分と同じ年頃の男。

となれば……そういった恩の返し方もありと思ってしまう。


「あの……大丈夫ですか? 血が足らない感じですか?」


「え、いや!? そ、そんなことはない。ユウゴが使ってくれた回復薬のお陰で、本当に回復した」


エリクサーは傷だけではなく、失った血まで元に戻る。

まさに万能薬。


「そ、そうですか?」


「あ、あぁ、本当にもう大丈夫だ。そ、それでだな……エリクサーの代金についてなのだが……」


ウルはごくりと唾を飲み込みながら、ゆっくりと口を開いた。


「その、何か欲しい物とか、あるか」


最後に考え付いた方法を口に出さず、ひとまずユウゴがエリクサー代として、何を欲するのかを尋ねた。


「私が出来ることであれば、なんでも、しよう」


自分の首を絞める言葉だと解っているが、命の恩人を相手にケチな真似は出来ない。


「えっと……そうですねぇ」


エリクサーが貴重な回復薬だということは、この世界に来てまだ歴が浅いユウゴでも解る。


実際はベスが気を利かせてアイテムボックス中に入れてくれた貰い物だが、一つ売ればたちまち大金持ちになれるマジックアイテム。


貰い物なので、タダで渡すのはあまりよろしくない。

そう思ったユウゴは必死に何が欲しいかを考える。


(金は……多分、チートスキルとアイテムボックスのお陰で直ぐに稼げそうだからな。武器とかは……自分の金で買ったりするから楽しいからな……何にしよ)


ユウゴが要望を口にするまで、ウルはヴァイスタイガーと戦っている時以上に心臓をバクバクさせながら待っている。


直ぐに答えが出ない中、ユウゴは目の前に座る超絶美少女に目を向けた。


(……この人、俺が考えてた要素にピッタリだよな)


ユウゴの視線が自分に向けられ、ビクッと肩が揺れる。

あまり考えたくなかったことが現実になるのか……拒否したが、命の恩人の要望を断る訳にはいかない。


なんてことを考えるウルに対して、ユウゴは少し違った要望を口にした。


「良ければ、俺とパーティーを組んでくれませんか?」


「……え?」


「その、実は俺まだ冒険者として登録してないんですけど、これから冒険者になろうと思ってます。それで……ちょっと色々事情があって、信用出来る強い人とパーティーを組みたいなと思ってるんです」


「な、なるほど……わ、分かった!」


恩人が口に出した要望は最悪な内容ではなく、寧ろ少し面白そうなものだった。


「私は基本的にソロで活動しているので、特に問題ありません」


「そ、そうなんですね。良かった~~~」


「これからよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


というわけで、ユウゴは念願かなって超美女とパーティーを組めることになった。

しかも実力は死にかけたとはいえ、Aランクのモンスターを一人で倒せるほどの実力者。


願ったり叶ったりのパーティーメンバー。


「ユウゴは、どういった戦闘スタイルで戦うんだ?」


「そうですね……えっと、こんな感じのことが出来ます」


ユウゴは自分に狙いを定めて近寄ってきたポイズンスネークをサイキックで止め、魔法陣を展開。


ウィンドアローで正確に頭を貫き、仕留めた。


「……今のは、スキルかな」


「えぇ、そうです。力が強い相手は今みたいに完全に動きを止めるのは無理ですけど、Eランクのモンスターぐらいなら問題無く止められます」


初めてユウゴの戦い方を見て、何故自分がユウゴとパーティーを組むのが面白そうと感じたのか……その理由が理解出来た。


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