第15話 妥協も必要?
フォウたちをオークの襲撃から助け……十日ほど月日が経った。
「もう、俺が教えることは本当にないな。まぁ……あれだ、免許皆伝ってやつだな」
「ありがとうございます」
ダリスは特に特別な流派の剣技や槍技を身に着けている訳ではなく、生徒たちに教えているのはごく基礎的な内容。
勿論力が身に付いてきた者には実戦で使える技術なども教えるが、特別な技などは教えていない。
なので、生徒たちに免許皆伝を与える権利などもないが……どう考えても将来的には自分を超えるだろうと思い、免許皆伝という言葉を送った。
「にしても、本当に吸収力が凄いな。超器用だし……短剣や斧、ハンマー……鞭とかもさくっと使えそうだな」
「どうでしょうか……今のところはロングソードと槍を中心に使い続けようと思ってるんで、他の武器は……機会があればって感じですね」
「そうか……確かに、焦って色んな技術を身に付けようとするのは、色々と混乱するかもしれないな」
ユウゴのファストラーニングを持ってすれば、意外と習得出来てしまうかもしれないが……ユウゴ的にはまだ他の武器は必要ない。
「明日には出発するんだったか」
「はい、そうですね。有難いことにロングソードと槍を造ってもらえたので」
村で数少ない鍛冶職人の男性が、子供たちをオークから守ってくれた礼として、タダでユウゴに鉄製のロングソードと槍をプレゼントした。
決して高性能な武器ではないが、それでもユウゴにとっては非常に嬉しいプレゼントだった。
「ようやく冒険者デビューか……つっても、ユウゴの場合はあれだな。当面の目標は信頼出来る仲間探しだな」
「やっぱりそうなりますね~~~。冒険者を続けるなら、絶対に日帰りで依頼を達成できるとは限りませんからね」
簡単に見つからないということぐらいは解っているが、それでも最優先で見つけたい存在。
(男か女か……まぁ、女性の方が私情的には良いんだけど……妥協しないといけない部分はあるよな)
場合によっては、男としての本能を抑えて……自分よりイケメンの男性を仲間にしなければならない。
将来的にハーレムをつくりたい、などとバカげた夢を持ってはいないが……それでも
パーティー内に癒しは欲しいと思っている。
「やっぱりあれか。ボインな姉ちゃんが好みか」
「ま、まぁ……そうですね」
尻よりも胸派のユウゴにとっては、ボインなスタイルを持つお姉さんは非常に魅力的な存在。
「はっはっは! 解りやすいな。確かに冒険者の中にも目を惹く美人だったり、可愛い感じの女性冒険者はいるが……どっちかっていうと、筋肉質な奴らが多いかもな」
「そ、そうなんですね」
筋肉質な女性を頭に浮かべるが……ユウゴはそんなに拒否反応は出なかった。
想像以上なゴリマッチョお姉さんは遠慮したいが、少し筋肉質なお姉さんであれば寧ろ大歓迎だった。
そんな男らしい会話をしながら、二人で食べる夕食を楽しみ……翌日、ユウゴは冒険者ギルドがある街へと向かう。
見送りにはダリスを筆頭に、道場に通っている生徒たちや、子供をユウゴに助けられた親たちが集まった。
以外にも見送りに人が集まってくれたことに驚いたが……内心ではかなり嬉しかった。
「ユウゴさん、僕も絶対に冒険者になって、追いついてみせます!!!!」
「ふふ、そうか。楽しみに待ってるぞ、フォウ」
初めて会った時と比べて、随分と男らしい表情をするようになったフォウと握手し、ユウゴは村から一番近い街……アリステラへと向かった。
「一日ぐらいはしょうがないとしても、二日目の夕方ぐらいには街に着きたいな」
属性魔法のスキルレベルも少し成長したが、それでも自身が寝る時に生み出す壁がモンスターに壊されないか……その不安はまだ消えない。
Dランクのオークを倒した後も森の中に入ってモンスターを倒し続け……現在、ユウゴのレベルは十三。
オークとの戦闘はレベルが一上がったが、そこからは少々停滞していた。
(レベルが上がれば、次にレベルアップするまでに必要な経験値が多くなるのは、定番な設定だよな)
ダリスから人によってレベルの上限はないと聞いているので、もしかしたら長期間頑張ってもレベルアップしないのでは? といった不安はない。
「……殺気漏れ漏れなんだが」
先程から視線を感じる方向に顔を向けると、視線の先には肌の色が赤いゴブリンが三体見えた。
(森の外まで獲物を探しに来るとか……元気一杯かよ)
獲物に視線を向けられ、自分たちの居場所が獲物にバレてると分かったレッドゴブリンたちは奇襲を諦め、真正面から襲い掛かった。
(普通のゴブリンより体が少し大きいな……レッドゴブリン、ランクはD……マジか。でも、オークよりは強くない感じ、か?)
とりあえず殺る気満々なレッドゴブリンに対してサイキックを使用し、空中で動きを止めた。
その隙を逃さずまずは一体の首を斬り落とし、次にもう一体の首もぶった斬る。
「ッ、グギャアアアアッ!!!!」
「むっ、やっぱりそれをやられると破られるか」
三体目の首を刎ねる前に、残った一体が体に魔力を纏い……勿論身体強化のスキルを使った状態でユウゴのサイキックを破った。
「ならもう一度って話だな」
「ッ!?」
「ウィンドアロー」
一度破られたとしても、もう一度動きを止めることは可能。
先程と違って直ぐに破られてしまうが、その一瞬の硬直さえあれば……今のユウゴであれば一手で勝負を決められる。
無理に近づかず、少し距離を取って風矢を撃つ。
その距離が絶妙に良く、サイキックが破られるコンマ数秒前に風矢が頭に突き刺さった。
「……やっぱりチートスキルだな、こいつは」
そんな感想をポロっと零しながらも、とりあえず魔石の回収を始めた。
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