第12話 卑怯とは言わせない

「どけっ!!!」


「グギャッ!?」


フォウたちを探す道中、偶々ゴブリンと遭遇し……ゴブリンはユウゴを殺す気満々だったが、ユウゴはゴブリンをただただ邪魔だと感じ……思いっきり蹴飛ばした。


既に辺りのゴブリンよりレベルは上なので、そんなユウゴの全力キックを食らえば、ゴブリンは一撃でノックアウト。


急いでいるので止めは刺さなかったが、それが逆にゴブリンを長い鈍痛で苦しめ……

殺す結果となった。


(森に入ってから何分経った? 五分か……それとも十分か? 早いとこ見つけないと!!!)


ユウゴとダリスが森の中に入ってから、まだ大して時間は経っていない。

だが、焦っているユウゴからすれば、もう何分も経っている様に思えてしまう。


現在のユウゴであれば、ランクが低いモンスターであればあっさりと倒せてしまうが、まだ十歳にも満たない子供たちでは……ランクが低いモンスターでもあっさりと殺されてしまう可能性が高い。


何度も最悪な光景が頭に浮かぶが、頭を横に振って掻き消す。


そして森の中に入ってから十五分後……モンスター声と子供の声が同時に耳に入った。


「あっちか!!!」


ユウゴは声が聞こえた方向に向かって超全力ダッシュ。

もう山の中を走り回ることには慣れ、うっかり転んで木に顔面から激突することはなく、地面とキスすることもない。


「お前かっ!!!!!」


目の前で仲間を守るために懸命に立ち向かうフォウがオークに吹き飛ばされる光景を見て、ユウゴの頭は一気に沸騰。


声を殺して奇襲を仕掛け、その一撃で殺す……なんて考えはなく、大きな声を張り上げて走り……全力でドロップキックをオークの腹にかました。


「ブモッ!!!???」


突然現れたユウゴのドロップキックの対処は間に合わず、オークは後方に吹っ飛んだ。


「大丈夫か!!!」


後ろを振り返ると、フォウを含めて何人かの子供たちが傷を負っていた。


「ユウゴさん……」


「フォウ、よく頑張ったな。ちゃんと見てたぞ」


後ろ姿ではあったが、フォウが同年代の子供たちを守るために前に出て、オークに立ち向かう姿がユウゴの目にはしっかりと映っていた。


「フォウ、苦いかもしれないがこれを飲むんだ。怪我をしてる後ろの子供たちにも飲ませてやってくれ」


「う、うん。分かった」


ユウゴはアイテムボックスの中からポーションを五つ取り出し、フォウに渡した。


そして思いっきりドロップキックを食らったオークが怒りを露わにしながら戻ってきた。


(レベルは……十二、か。ランクはD……いや、あれを使えば問題無いか)


ここ最近、森の中でかなりモンスター狩りまくったので、ユウゴのレベルもそれなりに上昇しており、現在は目の前のオークと同じくレベル十二。


だが、元の身体能力を考えると、いくらレベルが同じであっても……身体能力での勝負ではややオークの方が勝っている。


子供たちには遊んで嬲るつもりだったので大したダメージを与えていないが、本気になれば相手がユウゴであってもそれなりのダメージを与え……当たり所が悪ければ、撲殺することも可能。


(棍技のスキルを持ってるってことは、何かしらの技が使えるのか……まぁ、本気を出す前に潰すけどな)


オークが前に進むのに合わせ、ユウゴも徐々に前に出る。

どんどん距離が縮まっていき……遂にお互いが持つ武器の射程距離に入った。


「…………」


「…………」


オークも先程の蹴りでユウゴがただの人間ではないということは分っているので、侮ってはいない。


そしてそれはユウゴも同じだった。

目の前のオークは自分よりも身長が高く、横幅もある。

どう考えても自分より腕力は上。


ただ……絶対に勝つために、オークが動き出すタイミングを見極めようとしていた。


「ッ!!!」


痺れを切らしたオークの方が先に動き、棍棒を振り回そうとした瞬間に……ユウゴのサイキックが炸裂。


「ブ、モァ!?」


「幼いフォウたちを虐めようとしたんだ……まさか卑怯だなんて言わないよな」


そう言うとサイキックで完全に動きを止めたオークの首を狙い……ユウゴの剣は確かに標的の首を斬り裂いた。


「ふぅーーーーー……やっぱりチートだな、このスキルは」


他者からは……モンスターからも卑怯だと思われるスキルだが、それでもユウゴはこのスキルに大きな可能性を感じていた。


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