第11話 見つからない子供たち
ユウゴが道場に通う、モンスターを狩ってレベルアップするといった日々を続けてから既に十日ほどが経っていた。
「……もう、俺が教えることはないかもしれないな」
「ありがとうございます」
本日は道場に通い、剣技や槍技をダリスから教えてもらっていたが……ダリスとの模擬戦で、ユウゴは十日前まで素人とは思えないほどの動きでダリスと渡り合った。
ファストラーニングにお陰で剣技と槍技のスキルも習得済み。
レベルによる身体能力を考慮すれば、まだダリスの方が実戦的な力は上だが、それでもここ何日かでスキルの習得。
そして動きがどんどん最適化されていく様子を見て、ダリスは改めてユウゴの才能に驚かされた。
(魔法を動きながら使えるのを考えると、真剣勝負では負ける可能性が……十分にあり得そうだな)
元Cランクの冒険者にここまで言わせるユウゴは……ダリスから褒められ、素直に嬉しいと思っていた。
勿論、ここまで早く剣技と槍技を習得したのはファストラーニングにお陰。
それは充分に理解している。
だが……それでも訓練の成果が圧倒的な速度で現れている。
それを感じることが出来ているという現実に、喜ばずにはいられなかった。
(はぁ~~~~~~。ファストラーニング様々だな。元の世界じゃ、ここまで短期間で成果が現れることなんてまずないからな)
ユウゴは元々才能やセンスがある方ではないので、運動部に入っていた時はいたって平凡な成長速度で進み……身体能力もせいぜい中の上だったこともあり、結局スタメンに選ばれることはなかった。
「お疲れ様、ユウゴ」
「うっす」
「いや~~~、本当に強くなったな。まだちょっと荒削りなところはあるけど、そこがまた良いところでもあるしな……ユウゴなら、Hランクをすっ飛ばしてEか……もしくはDランクからスタート出来るかもしれないな」
「飛び級制度ってやつですか……でも、そんな簡単に一番下の階級を飛ばしてEやDから始められるんですか?」
ダリスから冒険者の制度などについて軽く話は聞いているが、Eランクは新人でその位置に立っているのであれば、中々優秀。
いきなりDランクからスタートすれば、完全にスーパールーキー扱い。
ギルドや周りの冒険者からは超有望株と認識される。
「そりゃ普通は簡単じゃないさ。でも、ユウゴは本当に物覚えが早い。それに、覚えた技術を実戦で直ぐに使おうとする度胸もある。攻撃魔法も使えるし、その辺りを考慮すれば……俺はDランクからスタートしてもおかしくないと思うぞ」
「そうですか……まぁ、上のランクからスタートできるのに越したことはないですね」
「その通りだが、EやDからスタートとすると、同じルーキーや少し上の先輩から恨まれるというか妬まれるというか……ちょっと面倒なことになるかもな」
「新人いびり、というやつですか?」
優秀な新人が入れば、同じ新人や新人ではないけど優秀な新人よりも劣るベテランなどは、人は人で自分は自分といった感じで冷静になれない。
そしてユウゴが考えている通り、いびりや……それを越えて虐めに発展する可能性がある。
「そんなとこだな。色々と出来るユウゴなら大丈夫だと思うが……なるべく早めに、信頼出来る仲間を見つけた方が良いな」
「信頼出来る仲間……それは確かに欲しいですね」
「そうだろ。ユウゴの力を考えれば、高ランクの冒険者でも仲間にしたいって人はいると思うぞ」
冒険者ギルドがある街に到着してから、どう行動しようかとワクワクしていると……一人の男性が焦った表情で二人の元へやって来た。
(あの人は確か……)
見覚えがある男性だなと思っていると、男性の口から零れた言葉にユウゴは危機感を感じた。
「だ、ダリスさん。今日、フォウと他の子供たちが朝から見かけないんですけど、道場の方には来ていませんか!!」
「いえ、今日はフォウ君たちは来ていませんが……ユウゴ君、力を借りても良いか」
「えぇ、勿論です」
この村に来てから、もう何年も経っているので、道場に通ってくれている子供たちの顔は全員覚えている。
「俺たちが絶対に無事に連れて帰ってきますので、無茶な行動などは起こさずに待っていてください」
「わ、分かりました」
フォウの父親は決してひょろくはないが、それでも実戦を行えるほどの力はなく、自分の力で息子たちを探しにいけない自身の無力さに怒りを感じていた。
(……時間との勝負だな。速攻で見つけ出さないと)
ユウゴはダリスから真剣を借り、二手に分かれてフォウたちの捜索を開始。
ダリスは冒険者を引退しているが、偶にユウゴと同じく森の中に入って実戦の勘が鈍らないように鍛えているので、一人で行動しても問題無い。
ユウゴもここ最近で何度も森の中を行き来しているので、ある程度森の中を把握している。
(フォウたちぐらいの子供が歩けそうな道を意識して探すか)
フォウたちに何かあったとしても、ユウゴにはエリクサーという超高級回復薬があるので、死んでいなければ怪我はなんとかなる。
だが、逆を言えば死んでしまってはさすがのエリクサーでも、蘇生することは出来ない。
万が一の状況が頭に浮かんだユウゴは歯を食いしばり、走る速度を上げた。
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