第10話 それらを使えば余裕だが

「……やっぱり、もうゴブリン程度なら焦らず倒せるな」


フォウという少年と少しお話をした翌日、ユウゴは道場での訓練はお休みし……村を出て森の中に入り、手頃のモンスターを狩っていた。


ちなみに以前とは違い、ダリスから使っていないロングソードを狩り、実戦でお試し。


本来であれば剣を握った二日の者が、実際にモンスターを相手に真剣を使うのはあり得ないのだが、ダリスはユウゴの実力を信じているので少しだけ迷ったが、あっさりとロングソードを貸した。


そしてユウゴは初めて真剣を使ってゴブリンと戦い、あっさりと勝利を収めた。


(なんか、前に戦った時よりも動きが遅く感じるな……俺のレベルが上がったからか?)


動きが遅くなっていると感じるからこそ、ユウゴは余裕を持ってゴブリンの動きに対処し、その首をスパッと斬り落とせた。


ゴブリンの動きが遅くなっているというよりも、ユウゴが依然と比べて速く動けるようになっているので、遅くなっていると感じる。


「調子に乗ってる訳じゃないけど……もう少し強いモンスターと戦いたいな」


相手が低レベルのゴブリンなどでは、実際にファストラーニングにお陰で剣技が上達してるのか怪しいので、ユウゴは速足で他に手頃なモンスターはいないかと探す。


「ん? あれは……へぇ~~。コボルトってやつか……本当に人型だけど、頭はがっつり狼なんだな」


「……ッ!! ガルルゥアアア!!!!」


「うぉ!?」


少し離れた場所でEランクのモンスターであるコボルトを発見したユウゴは、どのタイミングで襲い掛かろうと考えていた。


ただ、コボルトは優れた嗅覚でユウゴといったコボルト以外の匂いを察知し、敵と判断。


どこかで拾った槍を構え、ダッシュで襲い掛かかる。

自分が仕掛けるよりも先に仕掛けられ、慌てるも……スピードではややユウゴの方が上。


槍を使った相手は……一応ダリスが敵が槍を使ったら……という想定で模擬戦を行ってくれたことがあるので、対処法は知っている。


知っているが……やはり実戦では感じる恐怖が段違い。


(こ、これはかならい怖いな!!! この点でくる感じが、本気で恐怖というか!! 刺されたら、絶対にやられる、よな!!)


今のところなんとかコボルトの連続突きを躱せてはいるが、中々反撃に出れない。


コボルトの突きに関して、もしユウゴが自身の魔力を体に纏うことが出来ればかなりダメージを軽減できるが、まだその技術は身に着けていない。


ダリスから冒険者になるなら、出来ておいて損はない技術だと教えられたが、さすがにファストラーニングがあっても速攻で習得することは出来なかった。


一応アイテムボックスの中には傷を治すポーションが入っているが、攻防のやりとりを考えれば……中々一気飲みしたり傷口にぶっかける余裕がない。


(リズムも、読まないと、な!!!)


ユウゴよりも慣れた手つきで槍を扱うコボルトだが、先程から繰り出す技は突きばかり。

しかもリズムが一定なので、実力者からすればカウンターを入れやすい。


ユウゴはまだまだ実力者と呼べる力も経験もないが……リズムゲームの感覚を思い出し、なんとかコボルトの突きを躱したタイミングでロングソードを振り上げ、槍を上に大きく弾いた。


手から離すことは出来なかったが、その隙があれば十分。


「はっ!!!!」


「ッ!!!???」


手首を返して左斜め上からロングソードを豪快に……しかし回す部分は回して斬り、コボルトの体には大きな切り傷ができた。


さすがに心臓には刃が届かな方が……このまま何も手当をしなければ、出血多量で死ぬぐらいのダメージは与えた。


「おらっ!!!!」


「ゲボッ!?」


コボルトがロングソードによる一撃で怯んだのを見逃さず、ユウゴはヤクザキックをかまし、盛大にコボルトを転ばせた。


「せいっ!!!」


そして脳天に剣先を突き刺し……コボルトはピクリとも動かなくなった。


「はぁ、はぁ、はぁ……勝った、んだよな?」


レベルアップのお陰で以前よりスタミナが増えたとはいえ、全くスピードが衰えないコボルトの突きを正確に躱すのはかなりの重労働。


緊張感と恐怖もスタミナを削る要素となり、ユウゴはゴブリン戦とは比べ物にならない汗を流していた。


「はぁ~~~~~~……さすがに武器を握って実戦は早過ぎたか? でも既に魔法を使って戦ってた訳だし……今さから感あるよな」


今回は純粋に二日間で得た剣技だけで対応したので、サクッと倒せず大きな緊張感と恐怖を感じることになった。


しかし、攻撃魔法やサイキック、状態異常魔法などを使えばもっと簡単に倒せたが……ユウゴは今、とにかく実戦で剣技を試したい、磨きたいといった状態。


というわけで、魔石を爪や牙を回収し……あまりコボルトの肉は美味しくないと分かったので、また直ぐに手頃なモンスターを探し始め……夢中になったユウゴはギリギリ日が暮れる前に村に帰って来られた。


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