第9話 諦めるには早過ぎる
「あの……」
「ん? 何か用か。えっと……」
「ふぉ、フォウです」
ユウゴに声を掛けてきた男の子……フォウはまだ八歳の男の子。
ユウゴからすれば、少し歳の離れた弟の様に感じる子供。
そんな子供がいったい自分に何の用なのか。
「フォウ君か……それで、俺に何か用か?」
「え、えっと……その……な、なんでユウゴさんは、あんなに強いんですか」
「……そうだなぁ」
馬鹿正直に神様からチートスキルをたくさん貰ったからだよ、とは言えないので……それらしい内容を考えるのに少し時間が掛かった。
「ありきたりな内容かもしれないけど、俺が得た才能が戦うことだから、かもしれないな」
チートスキルが才能と呼べるものであれば、ユウゴの回答は間違っていない。
だが、その回答はフォウにとって期待していた内容とは少し違った。
「才能、ですか……」
「フォウ君はさ、強くなって……ダリスさんみたいに冒険者になりたいのか?」
「は、はい! そうです!!!」
ユウゴの問いにフォウは元気良く答えた。
少し内気な性格のフォウだが、心の中には冒険者になりたいという強い思いがある。
「で、でも……中々強くなれなくて」
「…………今はそうかもしれないけど、自分は多分強くなれない……そう決めつけるのは、ちょっと早過ぎると思うぞ」
ユウゴの言葉通り、フォウの八歳という年齢を考えれば……このまま道場に通って訓練を続けても強くなれない。
そう決めつけるのは早過ぎる。
「そうだな……自分に剣の、戦う才能がないと決めるのは……俺ぐらいの歳になってからでも遅くはない。いつ才能が開花するなんて、誰にも分らないし……本気で正しい努力を続けてたら、俺はいつか実ると思うけどな」
この時、ユウゴの頭ではスマ〇ラのコンボ練習や、マ〇カーのショートカットを練習していた記憶が蘇っていた。
(あれって、覚えるのも実際に成功させるのも……実戦で使えるようになるのも大変なんだよなぁ。まぁ、出来た時は凄い快感だったけど)
チートスキルをベスから大量に貰ったユウゴが言っても、あまり他者の心には響かないかもしれないが……まだまだ子供であるフォウの心には少しだが火を灯す結果となった。
「ほ、本当に強くなれるかな」
「絶対に強くなれる、って無責任な言葉を言えないけど……フォウが正しい努力を続けていれば、いつか実る日が来ると思うよ。それにさ、強くなるといっても武器は剣だけじゃないだろ」
「そ、そうですね」
「槍や短剣、双剣、ハンマー、斧。武器ってジャンルからは外れるかもしれないけど、魔法だってある。それに攻撃用の武器じゃないけど、盾や大盾。仲間を守る大事な装備品だ」
剣の才能がなかったとしても、他の武器の才能がゼロということにはならない。
どんな武器が合うのか、それは人それぞれであり……千差万別。
「冒険者になるにしても、剣や槍を使った前衛なのか魔法や弓を使って後ろから攻撃する後衛……盾や大盾を使って仲間を敵の攻撃から守るタンク。敵の位置を誰よりも先に把握して危険を察知したり、敵との戦いでは相手の動きを妨害したりする斥候。色んなスタイルがあるんだ」
「……な、なるほど。確かに、いっぱいありますね」
ユウゴの言葉を直ぐに理解出来はしなかったが、ユウゴが自分に伝えたい事はなんとなくではあるが分かった。
「だから、今自分はこの先強くなれない、頑張っても無駄……なんて思うのは早過ぎるぞ。家の手伝いとかで大変なところはあると思うけど、腐らずに頑張れよ」
「は、はい!! ありがとうございます!!!!」
ユウゴの言葉に、明日からまた頑張ろうと思える希望を貰ったフォウは元気いっぱいな表情で返事をし、軽い足取りで家に帰った。
(……はは、伝えた経験が全部ゲームだったとは言えないな)
それらしい話に聞こえる内容だったが、ユウゴが日本で生きている間に培ってきた技術の大半はゲーム。
基本的にはその後の人生に殆ど役に立たないであろうもの。
ただ、ユウゴがゲームで培ってきた技術などは……確かに何度も練習しなければ、しっかりと身に付かない。
実際に、その体験談を……大幅に色々と省いて伝えた結果、フォウの心に希望の火を灯したのは間違いなかった。
「すぅーーーーー……セカンドライフでは、真面目に金を稼げる技術を習得していかないとな」
セカンドライフでは既に社会に出て働いていてもなんらおかしくはないので、また明日から狩りに行こうと決めた。
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