第6話 元プロの先生

「はぁ~~~~、ようやく一息つけるって感じだな」


街に一つだけある宿屋の部屋を取り、久しぶりにベッドに寝転がるユウゴ。


子供たちや門兵に出会った際、ベスが気を利かせて現地の服や靴に服装を変えていたことで、そこまで怪しまれずに街の中へ入ることが出来た。


「にしても……これからどうするか」


一度目の人生でアホ丸出しな死に方をしてしまったが、娯楽の神であるベスのお陰でセカンドライフを送れるようになったのはとても嬉しい。


本当に神に感謝といった状況。


だが、異世界に転移するまで圧倒的に時間がなく、転移した世界がどういった世界なのかもあまり良く解っていない。


(とりあえず、身分証がないから……俺が持ってるスキル的に、冒険者ギルドに登録して冒険者になるのが一番だよな)


その道が王道ではある。

ただ……ユウゴは冒険者として名を上げ、有名になってやろう!!! なんて野望はない。


しかし、チートスキルを隠してひっそり生きられる程強くないというのは自覚しているので、どんな形かまだ分からないが……有名になってしまうのは時間の問題。


(やっぱり、気を許せる仲間ってのが欲しいよな……勿論、美女が美少女)


デュフデュブヒブヒと一般人がドンビ引くような拗らせオタクではないが、それでも前世ではそこまで異性に縁がなかった男。


やはり長い時間を共にする仲間は……一緒にいて楽しい美女や美少女に限る。


(あっ、でも顔面偏差値高い女の人って、よく男を騙すというか……気がある素振りをするだけして貢がせたり…………いや、でもむさくるしい男と一緒ってのもつまらないと思うしな~~~)


大学では陰キャボッチではなかったので、それなりに同級生や先輩の体験談が耳に入り……ユウゴ自身は騙され、引っ掛かったことはないが……知り合いに勇気を出して告白したら、あっさりとフラれてしまった者はいた。


話を聞けば「えっ、それ完全に気がある素振りだよな!!!」と思ってしまうエピソードがあった。


それは知り合いの妄想ではなく、事実としてあったのだが……全て女性側の奢らせる為のあざといテクニック。


他にも童貞キラーに食われるだけ食われ、もう付き合ってるものだと勘違いした恋愛童貞が大爆死した……という話も聞いたことがある。


「いっそパーティーを組まずにソロで……いやいや、モン〇ンじゃないんだし一人だとやれることに限界あるだろうし……やっぱり誰かとパーティー組まないと駄目だよな」


そこまでコミュニケーション能力が高い方ではなく、少し事情を考えているので……そもそも誰かとパーティーを組むことがかなりハードルが高い。


「……まっ、とりあえず次の街に着いてからの問題だな」


今ここで考え過ぎても意味はないと思い、ひとまず一階の食堂に降りて夕食を食べ……その日はそのままベッドにダイブして眠りについた。


翌日、そろそろ風呂に入りたいなと思いながら特に面白みがない街……いや、村を散歩していると先日ゴブリンとホブゴブリンから助けた三人がユウゴに声を掛けてきた。


「お兄さん、もう次の街に行くの?」


「いや、少しの間この村に滞在してから次の街に行こうと思ってる」


「それじゃ、一緒に道場に行こうよ!!!」


「道場? 誰か先生でもいるのか?」


冒険者ギルドがない村だが、元冒険者が剣技や槍技を教える道場がある。


「元Cランク冒険者の、ダリス先生が色々と教えてくれるんだよ!!!!」


「元Cランク……」


まだ冒険者について詳しい情報を知らないユウゴだが、Cランクと聞いてなんとなく強そう、というイメージを持った。


「分かった。その先生がいる道場に連れて行ってくれないか」


「うん!! こっちだよ!!!」


ラスという少年とカイという少年に手を繋がれ、小走りでダリスが生徒たちに剣技などを教える道場へと到着。


(へぇ~~~~。なんか、ちゃんと道場って感じだな)


道場だけ他の家と比べ、ランクが上だな~~と感じていると、ラスたちが勢い良く扉を開けて道場の中へと入る。


そしてダッシュで先生であるダリスの元へ向かい、ユウゴが自分たちを窮地から救ってくれた人物なのだと説明。


「君が噂のユウゴ君か。俺はダリス、この街で子供たちに剣技や槍技を教えてる元冒険者だ。先日は生徒たちをモンスターから守ってくれて有難う」


「偶々子供たちの声が聞こえただけなんで」


「そうかもしれないが、俺としては自分の子供ように可愛がってるやつらだから……生きててくれて本当に嬉しいんだ」


「そ、そうでしたか……ところで、その……俺にも剣技や槍技を教えてもらっても良いですか」


随分と感謝されているので、生徒ではないが元プロの冒険者から指導を受けられるかと期待し……ダリスがその頼みを断る訳がなかった。


「はは!! そんな事で良ければ、いくらでも教えるさ。丁度生徒たちが素振りを始めたところだ。武器を扱った経験はゼロ……で良いのか?」


「はい、全く触ったことがないので、初めからよろしくお願いします」


「うむ、任せてくれ!!!」


ファストラーニングというチートスキルがあるので、学べるところは早い内に学んでおきたい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る