第5話 意外とあっさり寝れた

「よし、こんなところか」


Fランクのモンスターであるボアをあっさりと倒し終え、もう慣れた流れで風のナイフを生み出し、解体に取り掛かった。


そして実戦は訓練よりも上達を促し……解体のスキルは既にレベル二に上がっていた。


普通の人であれば、モンスターの素材を持つのに限度があるのだが、ユウゴの場合はスーパー規格外なアイテムボックスという便利収納スキルがあるので、ひとまず肉と魔石と骨は全てぶち込んだ。


「おっ! やっぱりレベル上がってたな」


ユウゴのレベルは八まで上がり、もう完全に元の世界での一般的な身体能力を大幅に超えていた。


「そういえば……人里を見つけるの忘れてた」


安全に夜を過ごす為にも、早めに人里を発見してベッドでぐっすりと眠りたい。


レベルアップでその件を忘れていたが、思い出したユウゴは直ぐにどの方角に街があるのかを探し始める。


まずは道中で習得したスキル、身体強化を使用して身体能力をアップさせて……大ジャンプ。


周囲の木々を跳び抜け、体をグルっと回し……運良くそこまで離れていない人里を発見した。


「ッ!? よっしゃ!! 今から行けばまだ入れてもらえるよな」


地面に着地したユウゴは人里を発見した方向に向かって、身体強化のスキルを使ったまま猛ダッシュ。


レベルアップしたお陰で身体能力だけではなく、スタミナも向上していた。


「ッ!? ッ!!!」


「ッ! 邪魔、だ!!!」


いきなり現れた人に驚きながらも、敵だと判断したホーンラビットは全力ダッシュでユウゴを串刺しにしようとした。


だが、レベルアップした肉体はホーンラビットの突進に反応し、自慢の角を素手でキャッチ。


そして角を掴んだまま超近距離からウィンドアローを放ち、討伐。

今解体するのは面倒なので、そのままアイテムボックスの中に入れた。


「距離的に、多分もう直ぐ、か?」


猛ダッシュで少し息切れしてきた頃……近くで子供の声が聞こえた。

それは元気な声ではなく……悲鳴だった。


「っと……今の俺なら、多分大丈夫だよな」


高校生や女性がガラの悪い連中に絡まれていても、以前の自分なら助けに行かなかった……行けなかった。


ただ、今の自分であれば低ランクのモンスターであれば倒せると思い、子供の悲鳴が聞こえた場所に向かって走る。


(ゴブリンが五体と……体が少しゴブリンより大きい個体が二、か)


魔眼で調べた結果、ゴブリンより少し体が大きいモンスターはホブゴブリン。

ランクはゴブリンと同じくEだが、その身体能力は確かに開いている。


ただ、アベレージでレベルは五。

ユウゴのレベルは八なので……決して負けてはいない。


完全にゴブリン達を視界に入れたユウゴは大きな声を出して襲い掛かる……なんて馬鹿な真似はせず、サイキックを使って七体の動きを止める。


そしてサイキックが破られる前にウィンドアローの魔法陣を展開し、七本の風矢を一斉に放った。


相変わらずオートエイムは良い仕事をし、風矢は見事に頭部を貫いた。


「よし、全部ヒットしてるな……そっちも、大丈夫みたいだな」


ゴブリンとホブゴブリンに囲まれていた子供たちには、幸いにも怪我はなかった。


ただ、ゴブリンに襲われそうになった恐怖は確かに残っており、三人の子供たちは自分たちが助かったのだと解ると……一斉に涙を零した。


いきなり泣き出した子供たちどう接したら良いのか分らず、とりあえず三人が泣き止むまで待った。


「もう、大丈夫か」


「は、はい。大丈夫です……とりあえず、すこしだけ待ってくれ。直ぐに解体するから」


ユウゴは子供たちに見えないようにし、ササっと魔石だけ取り出し、死体は事前に土の魔力で掘っていた穴に埋めた。


「すまん、待たせた。それで……三人は、ここから近くにある街に住んでるのか?」


「は、はい。そうです」


「そうか……俺がそこまで君達を送るから、三人に付いて行っても良いか?」


「も、勿論です!!!!」


ゴブリンとホブゴブリンに襲われそうになっていた三人からすれば、ユウゴはまさに救世主。


そんな救世主であるユウゴからの頼みを三人が断る訳がなく、ユウゴは無事に日が沈む前に人里へ到着することが出来た。


門の前に到着すると、門兵であろう男性がダッシュで子供たちに駆け寄り……拳骨を食らわせた。


そして子供たちから事情を聞き、ユウゴの前に立つと……勢い良く頭を下げた。


「有難う!!!! 兄ちゃんがあいつらの前に現れなかったら、三人とも殺されてた!!」


「い、いえ。あの……本当に偶々通りかかっただけなんで」


「いや、それでもゴブリンに……ホブゴブリンだったか? そいつらを一瞬で倒すなんて、簡単なことじゃねぇ!!」


そう言って、もう一度九十度に腰を折りながら感謝の意をユウゴに伝えた。


「ど、どうも。それで、その……この街には止まるところとか、ありますか?」


「おう!! 一つだけだが、宿はある! 案内するぜ!!!」


門兵のお兄さんは交代の門兵と変わり、三人の子供たちをそれぞれ家に送ってからユウゴを宿に案内……する前に、モンスターの素材などを現金に交換できる場所へと向かった。


本来であれば、冒険者ギルドという場所でモンスターの素材を現金に交換できるのだが、この街には冒険者ギルドがない。


その為、素材を直接使う人たちの元へ素材を売りに行き……異世界に来てから始めての現金をゲット。


まだ身分証はないが、それでも数日分の宿代の確保には成功し、ホッと一安心したユウゴだった。


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