第42話 スケベピクチャーを撮ろう!
福里さんの転校を阻止するため、まず作戦を考える必要がある。
見ず知らずの僕が話に行っても、そもそも会わせてもらえるかすらわからないからだ。
お土産のまんじゅうを取り、福里さんに渡す。
「これ、美味しいから食べてみて!」
「あぁ……ありがと。んぐんぐっ、うまい」
「ははっ、よかった」
まんじゅうを頬張る福里さん。
すると微かに笑みがうかがえた。
やっぱり女の子は笑ってるのが一番だ。
この笑みを守るためにも、上手く話をつけないと。
情報収集を兼ね、彼女に質問していく。
「それで、お姉さんはその
「……いや、姉貴はもう卒業してる。今は大学2年」
「大学生なんだ……その大学ってジングウ島にあるの?」
「うん。アタシも姉貴も、島外に出たことないし」
「なるほど……」
高校に在学中ならそこへ向かおうかとも思ったけど、卒業生のようだ。
なら大学に出向くしかないかも。
となると、アウェーな環境が予想される。
説得するには不利だ。
そう考えていると、芽那ちゃんが提案してくる。
「この島から出たことないんならさ、そのお姉ちゃんも男の子って見たことないわけでしょ?」
「そうじゃない? 前に姉貴と話したとき、男が筋肉質ってことも知らなかったし」
「じゃあさじゃあさ! せいちんを餌にしたら食いつくんじゃない!?」
「め、芽那ちゃん……餌って……」
苦笑いを浮かべてしまったものの、作戦としては悪くないかも。
ホームであるこの学園に招くことができれば、周囲からの加勢も期待できる。
その空気感から、考えを改めるきっかけができるかもしれない。
でも問題は、そのお姉さんが男性に興味を示すかどうかだ。
「福里さんはお姉さんに僕の話とかしてるの?」
「えっ!? あー……してる、かな。つっても、男とは言ってないけど。めんどくなりそうだし……」
「だろうね、ははっ」
じゃあこの島に男性が来ていることを知らないわけだ。
つまりインパクトは大きくなると考えていいだろう。
それが興味じゃなくて憤りや恨みでも、引き付ける効果を見込めそうだ。
福里さんが最初、僕を見てタイマンを真っ先に挑んできたように、同じ血を持つお姉さんも同じ行動に出る可能性が考えられる。
「男が必要なのかー? じゃあ俺も一緒に餌になってやろっか!」
「いや、アンタはいいって……」
「えっ、なんで? 餌は多けりゃ多いほどいいんじゃないのか?」
「まぁ……男が2人いるって知らせるのはできるけどさー、実際のアンタを見れば……ねぇ?」
「なっ!? なんだよ、それー!」
翠玲は正直、女の子ってバレバレだ。
おびき寄せるための餌として使うにしても、間違いなく姿を見れば看破される。
男が2人いるって伝えるのと1人いるって伝えるのとでは、どっちのほうが食いつきやすいんだろうか。
相手が1人ってことを考えると、数的不利は避けたいはず。
腕に自信があっても、男は1人だと伝えるほうが無難な気がする。
「先生、この学園って生徒とか先生じゃない人を招いても大丈夫なんですか?」
「そりゃダメだけどー、前もって許可を取ればいけるよー!」
「それでもし……タイマンを伴うことになったらどうなるんです? 相手
「できるよー。わーし、難しいことはわかんないけど、タイマンのデータは島の全体で管理してるって聞いてる~!」
「なるほど、ありがとうございます」
言葉だけで説得できれば、それに越したことはない。
でもおそらくはタイマンで勝ち負けを決めることになるだろう。
あとはどうやって僕の存在を知らせるか、だ。
「福里さん、僕がお姉さんに電話でもして招待したほうがいいかな?」
「どうだろ……それじゃ、ちょっと姉貴の興味を引くのに弱い気もする。もっとこう……挑発的な感じでしたほうがよさげ」
「挑発的な感じかぁ……そうすると話し合いがしにくくなりそうだけど。そもそも、お姉さんってどんな感じの人なの?」
「んー、雰囲気はー……ヤンキー? って感じ。荒っぽいし、話が通じる相手じゃないっていうか……」
「そっか……そういうタイプなんだ」
どのみち、説得するのは難しい気がする。
話し合いでどうこうする以前に、まずはここへ来てもらうことを最優先で考えたほうがいいかもしれない。
たとえ、第一印象は最悪になったとしても。
「じゃあどうやって招待しようかな? 挑発っていうと、文句を書くとか?」
「せいちんの写真使うのはどう~?」
「僕の写真? どんな感じの?」
「たとえば~、愛凪ちゃんはいただいた! みたいなー?」
「そ、そんなこと書いたらタダじゃ済まない気がするけど!?」
挑発としては最上級のものかもしれないけど、会ったらすぐに殴られそうだ。
福里さんも当然反対するだろうと思って彼女のほうを見る。
すると、まんざらでもない顔をしていた。
「……いいんじゃない?」
「えっ!? 本気? 福里さん……」
「それぐらいしないとダメっしょ……てか、アタシがアンタのもんになったって知らされて、姉貴がキレるとも思えないけどさ。羽黒、見た目も真面目そうだし」
「ははっ……」
当たり障りなく真面目って言ってくれてるけど、率直に言うと地味だ。
眼鏡だし、黒髪だし、ちっさいしで。
頑張ってチャラいようにポーズを決めても、内から湧き出る地味さは誤魔化せない気がする。
僕がやりすぎって思ったぐらいが、お姉さんを誘い出すのに案外ちょうどよかったりするのかもしれない。
「とりあえず……福里さんと写真撮ってみよっか」
「ウチが撮ったげるー! えっちく見えるようにするから任せてー!」
「芽那、そういうのじゃないって!」
「いいからいいからー! 2人並んでよ~」
スマホのカメラを構える芽那ちゃん。
僕と福里さんは互いに顔を赤くしながら、ジワジワと近づいていく。
「エロいのを撮るのか? じゃあ俺は出て行ったほうがいいよな?」
「ひょっとして、わーしも教師としてこの場にいるとマズい!?」
2人は妙な空気を感じて後ずさりし始める。
それを芽那ちゃんは引き止めた。
「ダメー! 2人ともここにいて? そのほうが愛凪ちゃんも恥ずかしいって思えるだろうしー、きゃははっ」
「あ、アタシが恥ずかしがる必要ある?」
「あるよー! そのほうがアブナイ感じが出るじゃーん!」
「そういうもん? はぁ……」
先生と翠玲に見られながら、僕と福里さんはさらに近づく。
芽那ちゃんは撮影係として立候補してくれたけど、なんか監督みたいになっているのは気のせいだろうか。
「もっとくっついてー! せいちんは愛凪ちゃんの肩に手、回してー!」
「こ、こう?」
「んひゃっ!?」
「ご、ごめん」
「いや、いいけど……」
福里さんに密着し、言われたとおりにポーズする。
彼女も緊張しているようで、プルプルと震えていた。
「あとそうだなー、せいちんが男の子っていうのを証明できるなにかが欲しいよねー!」
「む、難しいな……」
僕の見た目は普通に男子だけど、翠玲のように男装していると疑われる線もある。
それを考慮すると芽那ちゃんの言うようにすべき。
しかし、どう証明していいのやらわからない。
男性と女性で違うところはいくつかあるけど、どこを見せるのかが悩ましいんだ。
「やっぱ~、パンツ脱がせるのが一番だけど~」
「そ、それはやめて!」
「わかってるってー! だから上半身だけ裸になっちゃお? 男の子が筋肉質っていうのをお姉さんは知ったんだよね? だったらそれで証明になるはずっ!」
「まぁ、それなら……」
僕がシャツに手をかけようとすると、芽那ちゃんがストップをかける。
「ちょっと待って!」
「え? どうしたの?」
「愛凪ちゃんが脱がしてあげて?」
「な、なんでアタシが!?」
「そのほうがえっちだからに決まってるでしょー? 撮影料、ってことで! きゃははっ」
「くっ……芽那、覚えてなよ」
福里さんは赤面しながら、僕のシャツをゆっくりと脱がせていく。
嫌々な感じをアピールしていたけど、その目は僕の身体に釘付け。
服を脱がしながらも肌をこっそりと触ってきたのだった。
「いいねぇー! それじゃあ最後に! せいちん、愛凪ちゃんのおっぱい揉んじゃおっ!」
「えぇっ!? それはいくらなんでも……」
鼻息を荒くする芽那ちゃん。
完全にエンジンがかかってしまっている。
隣を見ると、福里さんは頬を染めながら目を伏せていた。
「は、羽黒は脱いでるんだし……別にそれぐらい大丈夫、だけど」
「福里さん!? ほ、本当にいいの……?」
「早くして……ハズいから!」
芽那ちゃんの無茶な要求に福里さんは断るのかと思いきや、まさかの肯定。
ここで僕が日和っては恥をかかせてしまうと思い、肩を組んでいないほうの手で福里さんの褐色おっぱいを優しくシャツの上から揉んだ。
「あぁ……」
甘い吐息を漏らした福里さん。
手にはずっしりと重く柔らかい感触が広がる。
ヤバい! ヤバい! ヤバい!!
翠玲と先生も目を見開き、顔を赤くしていた。
「んほー! ウチも興奮してきたぁあっ! じゃあそのままこっち向いてー! えっちな一枚、撮るよー!」
「いいから、さっさと撮れっての!!」
「いっくよー!」
カシャッとスマホのライトが光り、シャッターが切られる。
こんな格好を撮影されてしまったんだと思うと、妙なドキドキがやってきた。
それは福里さんも同じなのか、目からは羞恥の色がうかがえる。
僕らは撮影が終わると同時に、磁石が反発するかのように離れた。
「じゃあ愛凪ちゃんに送るねー!」
「おっけ……って、うわぁっ! こ、こんな感じか……」
「僕にも見せて……」
福里さんにスマホを見せてもらう。
そこには上半身裸で彼女の肩を抱きながら、おっぱいを鷲掴んで鼻の下を伸ばす変態が写っていた。
「うわぁあっ! は、恥ずかしいっ……!」
「しゃあないって……あとはこれを姉貴に送るだけか……気が重いな。てか、文面はどうしよ」
そう彼女が呟くと、翠玲と先生が手を挙げる。
「『妹は俺のもんだ! 返してほしけりゃ倒してみろ!』ってのはどうだ?」
「わーしは『おっぱい最高! お前のも揉ませろー!』がいいと思う!」
「アンタらねぇ、真面目に考える気ないっしょ……ハァ。文章はなしでいいや。そのほうが意味深で気になると思うし……あぁ、もう! どうとでもなれ!!」
福里さんはヤケクソ気味に送信ボタンを押す。
「はぁ……送っちゃった。あー、やっば」
「あとは……上手く僕で釣れるのを待つだけだね」
「だね……」
とんでもない写真を送ってしまった。
僕と福里さんの恥が詰め込まれた一枚。
ここまでのことをしたんだ。
それに見合うだけの結果が伴うことを願うばかりだ。
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