第27話 プールでイチャつくな!

 美女4人を引き連れ、僕はプールサイドへと向かった。


 すると他のお客さんからの視線が突き刺さる。

 島の外だと女子のほうに目が行きそうだけど、ここはジングウじま

 彼女らの目は僕に注がれるのだ。


「落ち着かないな……」


 そうボヤくと、芽那ちゃんが腕を組んできた。

 薄い布切れ一枚越しに、大きな胸がむにゅりとめり込む。


「うわっ、ちょっ……!」

「みーんな、せいちんのこと狙ってるねぇ~? ウチが守ってあげるけど、ナンパには気を付けようねっ」

「な、ナンパって……」


 普通なら男性から女性に声をかけることをナンパと呼ぶ。

 でもここはそれも逆なんだ。

 逆ナンとすら呼ばれない。


 周囲のお姉さま方は、頬を赤くしつつ僕の身体を舐め回すように見てくる。

 いつもそんな感じとはいえ、半裸の状態で向こうも水着となれば話が変わってくるのだ。


 周りの目を気にしないようにと心の中で唱えつつ、プールに入る準備をする。

 その一環として、僕は先生が持ってきた浮き輪を膨らましていた。


「フーフー! ふぅ、できましたよ先生」

「おぉー! ありがとー! これで泳げるぞー、ニュヒヒ!」

「あっ、ひょっとして……」

「なにー? 言いたいことでもあるのー!? わーしが泳げない、よわよわ先生って言いたいわけー?」

「いやいや、言ってませんよ」


 ぷくーっとハリセンボンみたいに頬を膨らます。


 たぶん泳げないんだろう。

 プールの深さは先生からすればそこそこあるし、誰か一人は気を付けて見ておかないといけない。


 そう思っていると、後ろから声がかかる。


「せいちーん、ウォータースライダーやろー!」

「あれか、いいね! 行こう」


 プールには行ったことがあったけど、ウォータースライダーがあるようなところへは初めてだ。

 急な傾斜のあるものだと尻込みしそうだけど、ここのものはそこまでじゃない。

 僕は芽那ちゃんと一緒に上まで登った。


「おぉ……」


 高くはないと思っていたのに、いざ上まで行ってみると見える景色が違う。

 ゲームの世界では高いところへ行っても平気だけど、ここは現実。

 結構高く感じてしまい、不覚にも脚が震えそうになった。


 すると、そんな僕を見て察したのか芽那ちゃんはギュッと手を握ってくれる。


「め、芽那ちゃん……」

「一緒に滑ろうねっ」


 優しい笑顔でそう言われ、抱きつきたくなるほど嬉しい。

 恐怖心が一気に払拭され、瞬く間に好奇心へと移り変わった。


 僕が前、芽那ちゃんが後ろ、という形でゴムボートに乗ることになる。

 彼女は包み込むようにして、しっかりと密着してきた。

 僕もそれに応えるように、身体を預ける。


「いくよー? 準備はいいー?」

「お、おっけー!」

「それじゃ~、ゴー!!」


 ぐらりとボートが傾き、滑り出していく。


「わわわわわあああ」

「きゃー! はははっー!!」


 わなわなと震える僕に対し、芽那ちゃんの喜びの声がこだまする。

 これが男子と女子の差、なのか。


 滑れば滑るほどボートのスピードが上がり、ガチガチと震えて歯を鳴らしてしまう。

 でも芽那ちゃんの温かさに励まされ、目を瞑ることはなかった。


 そして着水すると、大きな飛沫が上がった。

 側面から水がやってきて、僕らはびしょ濡れになる。


「きゃははっ! 楽しいねぇ、せいちーんっ」


 芽那ちゃんはそう言って、濡れた身体で抱きついてくる。


 どうもいつもみたいに建前上の否定もできない。

 彼女が楽しそうにしてくれて、僕まで嬉しいからだろう。


 ウォータースライダーをした経験はないけど、昔に芽那ちゃんと一緒に遊んだことを思い出す。

 あのときもこんな感じで彼女の明るい笑い声に癒やされていたんだ。


「ねねっ、もう一回やろうよ~!」

「うん、行こっか」


 そのあとも何回かウォータースライダーを楽しんだ。

 楽しいけど、なかなか疲れてくる。


 休憩がてら他の子の様子を見に行くと、福里さんが先生に泳ぎ方を教えていた。


「ブハッ! 無理ー! 浮けないよー!」

「力が入りすぎなんですよー。もっと肩の力を抜かないと」


 福里さんは結構面倒見がいいのかもしれない。

 彼女に近づき声をかける。


「福里さん」

「羽黒……フフッ、めっちゃビチャビチャじゃん。髪の毛ぺっちゃんこだし」

「せいちんもウチもビチャビチャだよ~! ねぇねぇ、もっとしようよ~?」

「め、芽那ちゃん変な言い方しないで……」


 芽那ちゃんはあざとい顔をしながら後ろから抱きつき、僕の頭に頬ずりしてくる。


 しかしなにかを思いついたのか、彼女はパッと離れた。


「そうだ! 愛凪ちゃんもせいちんと遊びなよー! 先生はウチが見ておいてあげるっ」

「わーしに保護者はいらないぞー! むー!」


 芽那ちゃんはウィンクし、ここは任せてと伝えてきた。

 福里さんのほうを見れば、髪を触って照れ隠しをしている。


 そんな彼女に近づき、声をかけた。


「じゃあ……どうしよう。泳ごっか!」

「いいけど……」


 先生らから少し離れた場所のプールにゆっくりと入り、見つめ合う。

 泳ごうと誘ってみたはいいものの、二人で泳ぐってどうするんだ……。

 別にレースがしたいわけでもないし。


 と、僕が困っているのに感づいたのか福里さんが声をかけてくる。


「もうちょっとこっち来て……」

「う、うん」


 立ち泳ぎをしながら彼女のほうへ近づく。


 すると、顔面に水がかかった。


「うわっ!?」

「フフッ、ばーか」


 彼女は濡れた僕を見て笑う。

 どうやら両手で水を包み、それを鉄砲のようにして射出してきたらしい。


「やったなー!」


 僕も負けじと同じ方法で水をぶっかける。


「ちょっ、ちょっと羽黒ぉっ!」

「おりゃおりゃ!」


 顔にかけるのはちょっと抵抗があったため、身体へ重点的にかけていく。

 すると胸にも大量にかかってしまい、思わず息を呑む。


 その目線に、彼女も気づいた。


「……また見てるし。このスケベ!」


 そう言って、バシャバシャと勢いよく水をかけてきた。


「うぐわぁあっ!! こ、このぉお!!」


 こうなっては形振りかまってられないと、僕もがむしゃらに水をかける。


 するとそのとき――。


「待ってっ! 羽黒っ……ねぇってば……」


 福里さんの弱々しい声が聞こえ、ハッとした僕は水をかけるのをやめてそちらを見る。

 なんといつの間にか、彼女の上の水着の紐が解けてしまっていたのだ。


 水着の補正力を失い、少し広がるおっぱい。

 凝視してしまう己の頬を叩き、慌てて後ろを見る。


「やっばっ、ごめんっ!」

「しょうがないって……アタシがやりすぎただけ」


 しばらくゴソゴソと後ろから音がすると、肩をトントンと叩かれる。

 振り向くと、すっかりビチャビチャになった福里さんが頬を染めながら苦笑いをしていた。


「ごめん、変なもん見せちゃって」

「い、いいや! 変なものなんかじゃ……ないよ」


 むしろ僕にとっては眼福だったけど。


 すると、福里さんは小声になる。


「その……お詫びとしてさ。た、叩いていいよ……」

「えっ!? 叩くって……どういうこと!?」

「おっぱい……叩いていいってこと。あんま言わせないでって……」


 むちゃくちゃな提案に、僕は目を丸くする。

 これまでの経験から、福里さんにそういうがあるのは知っていた。

 でも、ここまで直球で言ってくるとは思わなかったのだ。


 勇気を出してしてくれた女子の誘いを断ることなんてできない。

 揺れる双丘を前に、僕は手を伸ばした。


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31話以降のお話になります

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