第25話 入浴しながら聞くギャルトーク
浴場のドアが開き、ヒタヒタと音を立てながら女子たちがやってくる。
「この時間って珍しくな~い?」
「だねー。でも直ったみたいでよかったー。汗かいちゃってたのに、入れなかったらって考えるとゾッとするー」
やっぱりどこか故障していて、それを修理するために時間がズレていたらしい。
前もって芽那ちゃんに聞いておいけばよかったけど、わざわざお風呂の時間を聞くなんて不自然だと思ってやめたんだ。
女子が入ってきていることに対してはもちろん、すぐ後ろにいるであろう
肌は触れていないものの、少しでも動くと当たりそうなほどの熱を感じた。
周囲には聞こえない声で、彼女は話しかけてくる。
「……やっぱり入ってきたな。大丈夫か、
「うん。このまま凌ぐしかなさそうだね……」
「だな。でも、女子っていつもどれぐらい入ってるんだ? 30分ぐらいか?」
「だいたいそれぐらいだと思う。時間が決まってるのは助かるけど……このまま30分か」
お湯の中は結構熱く、とてもそんなに長く入っていられない。
普段はシャワーだけで済ませているため、余計に熱さに対しての耐性がないんだ。
どうしようかと思っていると、聞き慣れた声が耳に入る。
「おっ風呂~! おっ風呂~!」
「芽那……子どもじゃないんだから走るなっての」
芽那ちゃんと福里さんだ。
僕の背中の向こうには、全裸の彼女らがいる……。
ダメだ、想像しちゃダメだ!
目をギュッと瞑っていると、そのせいで聴覚が研ぎ澄まされてしまう。
シャワーの流れる音にかき消されるはずの声が、僕の耳にやってきた。
「愛凪ちゃんはさぁ、せいちんがどんなパンツ履いてるか知ってる~?」
「……ハァ? いきなり何の話してんの。知るわけないじゃん」
「知りたい~? 教えてあげよっか~?」
「べ、別に知りたくなんか……」
なんの話をしてるんだ!?
女子同士って、もっと女子って感じの話をするのかと思いきや、男同士でするような話の性別を逆転させただけじゃないか。
でも、この島の特性を考えるとこれが正しいのか……。
すると翠玲が興味深そうに呟く。
「……どんなの履いてるんだ? さっき見ればよかったな~!」
「ちょっと……! 黙ってて!」
羞恥を煽ってくるのを遮った。
というか、喋るたびに背中に吐息が当たってムズムズしてきてしまう。
「正解は~黒のボクサーでしたー!」
「ボクサー? どんなだっけ……ピッチリしてるヤツ?」
「そうそう! ウチもよくわかんないけど、調べたらそれっぽいよ! このあいだね、洗濯機に入ってたから……つい嗅いじゃったっ! せいちんの匂いがたくさんしてぇ……ペロペロしちゃったっ! んほほほっ」
「なにやってんのアンタ……」
芽那ちゃん、それ普通にアウトだよ!
一緒に洗ってる僕も僕だけど、まさか下着を漁られているとは知らなかった。
怒るべきところなんだろうけど、正直興奮してしまう。
「愛凪ちゃんも使ってみなよ~! 貸したげるよ~?」
「使う、って……。まぁ……どんなのか気になるし、見るだけ見てみようかな」
福里さんまでなに言ってんの!?
勝手に僕のパンツをシェアしないで。
「なぁ青霄……俺にもパンツくれないか?」
「あげるわけないでしょっ……!」
普通に聞いてきた翠玲に、僕は顔を真っ赤にして返す。
頭のおかしい会話を聞いていたら、こっちまでおかしくなりそうだ。
しかし、まだガールズトークは続く。
「そうだ! 愛凪ちゃん、せいちんにお尻ペンペンされてたじゃ~ん? あれってどんな感じなの~?」
「どんな感じ、って言われても……口で説明すんのは難しいっていうか」
福里さんは口ごもる。
「気持ちいいか、気持ちよくないかでいったらどっち~?」
「えぇっ!? まぁ、気持ちいい……んじゃない?」
「へぇー、気持ちいいんだ! ゾワゾワーってするの~?」
「……んー、そうかも。な、なんか……支配されてる? って感じ? ボコボコに負けたし、お尻も叩かれてるしで……完全にアタシ、羽黒の言いなりなんだな……みたいな」
「それが嬉しいのー?」
「う、嬉しいっていうか……そうなのかな。よくわかんない」
福里さん、それは俗にいうマゾというものでは?
何度も何度も負けるうちに、彼女の性癖を歪めてしまったのかもしれない。
じゃあ次にタイマンするときの要求は、それっぽいものにしたほうがいいのかな……。
そう思ってると、また聞き覚えのある声がした。
「ふぃー! わーし、参上~!」
なんと寮にいるはずのない先生がやって来ていたのだ。
「あ、先生だ~! やっほー!」
「
「先生が寮に来るなんて珍しいですね~?」
「うん! わーしの家のへなちょこガス、なんか壊れちゃってー。ほーんと困る! だからここに借りにきたのー!」
どこもかしこも壊れまくってる。
一体どうなってるんだ。
「それにしても……みんなでっかいよねぇ。背もでっかいしー、おっぱいもお尻もでっかい! いいなぁ~、わーし小さいままだよー」
先生のボヤキに、福里さんが反応する。
「いいんじゃないですか、別に。むしろ目立てる個性ですよ」
「いいこと言うねぇ! でも~、羽黒ちゃんもでっかいほうが好きでしょ、たぶん」
先生は僕に見られることを意識しているらしい。
なんだか、そう言われると嬉しくなった。
「どうですかね。羽黒はおっぱいならなんでもいいんじゃないですか。ちっさいのも好きですよ」
「そうかな!? ニュヒヒ! それならあんしーん!」
僕の好みを一方的に決められているけど……まったくもってそのとおりだ。
でっかいのもちっさいのも大好き。
どんなおっぱいにもドキドキしてしまう。
おっぱいに良いも悪いもない、全部好きだ。
そう考えていると、余計に頭の中がピンク色になってきた。
すると、翠玲が耳元で囁く。
「……やっぱり好きなのか、おっぱい」
「な、なに言ってんの……」
「あるんだぞ、俺にも……。今、背中にくっつきそうなところによ。試合が終わったとき、俺のおっぱいの中で気持ちよさそうにしてたよな?」
「そ、それは……」
あのときのことを思い出すと、呼吸が浅くなる。
「ほら……これも勝者へのご褒美だ」
そう呟いた翠玲は、なんと胸を僕の背中に密着させてきた。
「あっ!? くぁっ!?」
言葉にならないほどの、恐ろしいレベルの柔らかさと少しの硬さ。
熱い風呂の中にいてもわかるほど、翠玲の肌は温かい。
きめ細やかな肌は、背中に吸い付いてくる。
「す、翠玲っ……」
「これが欲しかったんだろ? なぁ……」
彼女は手を僕の腹に回してきて、ぐっと抱き寄せてきた。
さらに大きな胸が背中にむにゅっと擦れる。
「動くと気づかれちまうぞ? 大人しくしとけよ……あははっ」
「そんなこと言われても……!」
「直接見られないのが残念だな? そうだ! こういうのも『やりたことリスト』に載せておくか!」
僕が提案したことを、まんまと利用されてしまった。
自分から言いだした手前、断ることなんかできない。
女子に胸を押し付けられていること、女子風呂にいること、裸のみんながいること。
その全部が僕の鼓動を速めていく。
「なぁ、青霄。また一緒に風呂に入ろうぜ?」
「えっ……」
「背中を流した仲なんだ。それだけ心を許した、ってことだろ?」
「それは……そうだけど」
「ならいいだろ? 俺は……あんたと色々してみたい。やりたいことが無限に浮かび上がってくるぜ。それも立派な憧れだよな? あははっ」
またもや自分の言ったことを返される形で、翠玲のペースに乗せられる。
僕は彼女の柔らかいおっぱいを背中で感じながら、妄想に妄想を重ねた。
そして女子たちが上がる頃、ずっと翠玲とくっついていたせいで僕はフラフラになってしまうのであった。
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