第11話
自分がいるこの森には不釣り合いの空間の入口を目の前にしながら藍斗は彩夜の突然の呼び捨てに驚きながらもそれ以上に気になることがあったため、敢えて何も言わなかった。
「そうなのか?俺は出来たが…」
「そうなの!本当はそんなことしたら魔力が切れて倒れるもんなのよ!?それに2つ同時に魔法を使用するのは魔力はもちろん、体力も集中力もいるの!なのに何で何でもないかのように出来るのよ!」
「何で…と言われましても。俺の体質もあると思うが、1番は魔力操作を意識してることだろうな」
「え、魔力操作?」
そして藍斗の言葉に彩夜は首を傾げていた。彩夜がそうなるのも無理は無い。何故なら、魔力操作は魔法を使ったことのある者全員がする基礎中の基礎であるからだ。藍斗は彩夜に基礎を極めることの大切さを教えた。人が魔法を使う際使う魔力は2種類ある。1つ目は自分達の中にある魔力、2つ目は空気中にある魔力の2種類あるのだ。藍斗に基礎の大切さを教えてもらった彩夜は酷く納得した様子を見せていた。
(……本当に素直だな。彩夜は…素直な性格は長所だがそういう人間程悪い人間に騙され利用され裏切られる。俺はいつの間にか素直で良い人を演じることしか出来なくなっていた。彩夜はそんな風にはなって欲しくない。)
そのため藍斗は彩夜に強くなって欲しいのだ。
「……と。……いと…藍斗!」
「!!す、すまん。ボーッとしてた」
「大丈夫?」
「あぁ、とりあえず空間の中に入るか。俺が先に入って安全を確認するから彩夜は俺が呼ぶまでは周りに警戒しながら待っていてくれ」
彩夜は藍斗の言葉に頷きながら藍斗から背を向ける。今の状態でも彩夜は並の魔物を倒すことが出来るくらい強い。必要なのは魔法への理解と武器を使いこなす技術である。そして藍斗は空間の入口に入り、安全であるこを確認して彩夜に声をかけるために外に出た。すると明らかに『亜種』と呼ばれそうな見た目の魔物が彩夜と何かを話していた。
(……少し様子見るか。危なくなったら何時でも助けられるようにしないとな)
そうして藍斗は、臨戦態勢のまま様子を見ることになったのだった。
「小娘、そこを退いてくれまいか?我はどうしても会いたい人間がこの先におるのだ」
「……会いたい人って今空間の中にいる人の事?」
「あぁ、さよう。その人間のことだ」
「悪いわね、あたしはそう易々と恩人の元には行かせないわよ」
彩夜はそう言い引き攣った笑顔を浮かべながら武器を構える。すると魔物は「面倒な」と言わんばかりの表情で人に姿を変え懐からナイフを抜く。そして2人は相対した。その時、彩夜は確実に勝てないと言う考えが頭に浮かんできた。
(こ、こいつ…強い。勝てない。ならせめて、あたしが藍斗が来るまでの時間稼ぎをしないと!)
彩夜は震える手で武器を構えた。それを見た魔物は「愚かなり」と言いながら彩夜を殺さんとばかりに彩夜に襲いかかる。それを皮切りに、彩夜と魔物の戦いの火蓋が切られた。
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