第8話

 若緑色の木々に囲まれ、空を見ると海のように青い快晴で木々には小鳥達が愛らしく戯れている。そんな森の中、藍斗と彩夜は2人でゆっくり休憩していた。彩夜に気配についての説明も終え、彩夜本人の体力が回復した所で藍斗が座っていた岩から立ち上がり彩夜の方を向き直り彩夜に話しかける。


「彩夜、君は体力は十分ある。それに素早さと考え方が柔軟だ。そんな君はどんな武器を選ぶんだ?」


「そ、その…私武器がどんな種類があるか分からないので見せて欲しいです!」


「あ、そうだったな。……はい、これが彩夜の利点を生かせるだろう武器の種類だ。まぁ、しっくりこなかったら違う武器に変えてみたり色々試行錯誤してみたらいいからそう難しく考えなくていいぞ」


「は、はい!」


 彩夜はそう言いながら藍斗が空間魔法で出した武器達を見て手に取り振りながら品定めをしていた。寸鉄すんてつ鉄扇てっせんを手に取っていた。寸鉄は隠し武器に使われており、相手の急所を的確に打撃をするための武器だ。鉄扇は文字通り、鉄で出来た扇子の事だ。それを使い相手を翻弄しながら、相手の隙を付き攻撃することが出来る。

 (…まさか、君これらを使うとは…ほんと、彼女は君に似ているよ。……亜希)

 藍斗は楽しそうに鉄扇と寸鉄を素振りをする彩夜を暖かく見守りながら刹那の感傷に浸る。しかしそんなことお構い無しにある者は彩夜の後ろに現れた。それは、彩夜の首に噛みつかんとばかりの様子だった。彩夜の後ろにいるのは、狼の魔物群れだった。群れは約10は下らない。藍斗と彩夜の距離は遠く、魔物達の方が彩夜から近かった。傍から見たら彩夜を助けるのは絶望的…誰もがそう思うだろう。だが、藍斗は他の人とは少しばかり……違うのだ。藍斗は凄まじい速さで背中に背負っている刀2振りを抜いた。それと同時に藍斗は足元に大きなクレーターができる位に踏み込みをし、彩夜の後ろの魔物の群れ達との距離を詰め魔物達を皆殺しにした。その時間、それは5秒にも満たない時間だった。彩夜はその事に気づかず、気づいたら魔物の死体と先程まで遠くにいた藍斗が息切れした状態で自分の後ろを守るように立っていると言う謎の状態になっていた。


「あ、藍斗様……?」


「……怪我は?」


「な、ない…です!」


「そう…か」


 藍斗は彩夜の答えを聞きながら、魔物の血がべっとりと着いた2振りの刀を軽く払い血を落としながら背中にある鞘に戻す。だが、藍斗は彩夜の顔を一切向こうとせずにずっと彩夜に背中を向けた状態だ。彩夜は心配になり、藍斗に声をかけようと藍斗に近づく。すると藍斗は絶対零度の目で魔物を観察し分析していた。

 (……こいつら、不意打ちをする程の頭の良い個体では無いはず。だからこいつらはランクEと言われているのだが。やはりこいつらはランクAの『亜種』だったのか)

 魔物の強さのランクはF〜SSまでに別れておりランクがFの魔物は最弱でランクSSは最強クラスと呼ばれている。魔物の強さは頭脳、凶暴性、群れを持つか否かで区別されている。ランクBとランクCの強さはそれ程差はないが、ランクAとランクBとでは天と地程の差がある。何故なら、『亜種あしゅ』という魔物の存在だ。『亜種』という名は、端的に言うと魔物が特異変異した物の総称である。『亜種』は普通の魔物より頭が良く理性的で狡猾。そして、魔力や体が強い存在だ。普通の魔物と『亜種』の見た目の違いは、色や所々の変化があるのだ。『亜種』と呼ばれる魔物はランクA〜ランクSまでに分けられている。ランクSSと言われる魔物はこう言った『亜種』が強化されることで魔物の上位互換のような状態になるのである。

 (……やっぱり、『亜種』のいるこの場所で彩夜の修練は危険か…。俺の修練も出来て、彩夜の修練も出来るしで一石二鳥だと思ってたんだが…)

 藍斗は彩夜も安全に修練が出来る場所を模索しているのだった。

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